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第56話
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「すまなかった」
二人っきりになり、目が合うと同時にフランシスク様が言った。
「えーと。フランシスク様は何も悪くありません」
「いいや……」
フランシスク様は、違うと首を横に振る。
「私が、君の両親に手紙を送ったんだ。その時は、相手がウルミーシュ子爵令嬢だと知らなかった。知っていたら、違う方法を取っていた。そのせいで、君の両親が亡くなった」
確かにプロンテヌ侯爵もそう言っていたけど、フランシスク様のせいではないわ。
「あれは、ガストン様のせいよ! きっと、そのうち同じような事が起きていたに違いないわ! だから自分を責めないで下さい」
「ありがとう。でも、あれは善意で行ったわけじゃないんだ」
フランシスク様は、泣きそうな顔つきでそう言った。
善意ではないってどういう意味かしら?
「君は覚えていないんだろうなぁ」
私から目線を外すと、語り出す。
「私は姉から君の事を聞いてね。それで、父にお願いしてプロンテヌ侯爵邸で開催されたパーティーに参加したんだ」
「パーティー?」
「同じ年ごろの令嬢と令息が集まったパーティーだよ」
「あぁ!」
あれね。寂しいだろうと、開催してくれたパーティー。でも経営家科の終了間近だったのよね。楽しかった事は楽しかったけど、全員知らない人達ばかりだった。その中に、フランシスク様がいたの? 初耳だわ。
「えーと。パーティーを開いてくれたのは覚えているけど、そこにフランシスク様が居たのは覚えていないわ。ごめんなさい」
「いや、結局名乗らず、挨拶しただけだからね」
だよね。セセリア様の弟だと聞いていれば、覚えているはずだもの。
「実は、あのパーティー、君のお婿さん探しでもあったんだ」
「えぇ!」
そう言えば、気になった者はいたかと聞かれたっけ。あの時なんと答えたかしら?
楽しかったけど、みんな押しが強かったから……。うーん。思い出せない。
「私は、君の婚約者になれなかったから、約束通りにダマレドゴ嬢と婚約したんだ」
「え? 約束?」
「父に少し待ってもらったんだ。その……会って一目惚れして帰って来たのに、彼女と婚約したんだ」
「え……」
どういう事?
「ごめん。困らせているよね」
「え? いえ。えーと、ちょっと意味がわからなくて」
「パーティーで君に会ってから惚れているって事。現在進行形」
顔を真っ赤にし、目線を斜め下に落としたままフランシスク様が、意味不明の言葉を発した。
えーと。セセリア様から私の事を聞いたフランシスク様は、密かに開催された私の婿探しパーティーに参加し、私を好きになったけど、私に選ばれなかったからユゲット嬢と婚約した?
えー!? 何それ。
う。顔が火照ってる。きっと、私も顔が真っ赤だ。
「プロンテヌ侯爵がチャンスをくれたんだ。君が私を好きになったのなら、婚約を認めると。期限は、私達が卒業するまでの間。それまでに君を惚れさせられなければ、諦めろと言われたんだ」
「………」
何それ。私の意思の確認はなしですかぁ!
でもユゲット嬢が言っていたのは、半分当たっていたのね。フランシスク様が私を好きだと勘が付いていた。
「じゃ、両親が死んだ事故の責任とかではなくて、その、私を好きだからって事なのよね」
真剣な顔つきでフランシスク様が頷く。
「君を困らせたくはない。もし受け付けられないのなら言ってほしい。そうでなければ、チャンスがほしい」
「う……」
そう言われても。両親の事故の事はフランシスク様のせいだとは、微塵も思っていない。それどころか、解決に手を貸してくれた恩人だ。
彼の事は嫌いではないけど、ガストン様と結婚すると思っていたし、両親が死んだ後は彼と婚約破棄する事しか考えてなかったわ。
いきなりそういう目で見れといわれたも……。
「その感謝すれど嫌う事なんてあり得ません。ただそういう目で見た事はないので……」
「では、口説き来ていいですか?」
うん? 口説きに来る? ここに?
いや、そんな、すがる目で見られても困る。
「えーと。噂にならない程度に……」
「はい! では今日は帰ります。もし何か困った事があったら何でも相談してほしい。では、失礼します」
「あ、はい。ありがとう」
フランシスク様は、執務室を出て行った。
騒がしかった執務室は、私だけとなりシーンと静まり返っている。
ルトルン伯爵とガストン様、エルダ夫人が連行される騒ぎがあったなのど嘘みたい。
お父様とお母様が亡くなった事故の真相が究明された。
私は、ソファーに腰を下ろす。
プロンテヌ侯爵が動いてくれなかったら私はどうなっていたのかしらね。
あぁ、二人にお礼を言い忘れたわ。
あれ?
頬に涙が伝ている。泣きたいわけじゃないのにな。
溢れてくる涙を拭いながら私は、執務室で一人泣くのだった。
二人っきりになり、目が合うと同時にフランシスク様が言った。
「えーと。フランシスク様は何も悪くありません」
「いいや……」
フランシスク様は、違うと首を横に振る。
「私が、君の両親に手紙を送ったんだ。その時は、相手がウルミーシュ子爵令嬢だと知らなかった。知っていたら、違う方法を取っていた。そのせいで、君の両親が亡くなった」
確かにプロンテヌ侯爵もそう言っていたけど、フランシスク様のせいではないわ。
「あれは、ガストン様のせいよ! きっと、そのうち同じような事が起きていたに違いないわ! だから自分を責めないで下さい」
「ありがとう。でも、あれは善意で行ったわけじゃないんだ」
フランシスク様は、泣きそうな顔つきでそう言った。
善意ではないってどういう意味かしら?
「君は覚えていないんだろうなぁ」
私から目線を外すと、語り出す。
「私は姉から君の事を聞いてね。それで、父にお願いしてプロンテヌ侯爵邸で開催されたパーティーに参加したんだ」
「パーティー?」
「同じ年ごろの令嬢と令息が集まったパーティーだよ」
「あぁ!」
あれね。寂しいだろうと、開催してくれたパーティー。でも経営家科の終了間近だったのよね。楽しかった事は楽しかったけど、全員知らない人達ばかりだった。その中に、フランシスク様がいたの? 初耳だわ。
「えーと。パーティーを開いてくれたのは覚えているけど、そこにフランシスク様が居たのは覚えていないわ。ごめんなさい」
「いや、結局名乗らず、挨拶しただけだからね」
だよね。セセリア様の弟だと聞いていれば、覚えているはずだもの。
「実は、あのパーティー、君のお婿さん探しでもあったんだ」
「えぇ!」
そう言えば、気になった者はいたかと聞かれたっけ。あの時なんと答えたかしら?
楽しかったけど、みんな押しが強かったから……。うーん。思い出せない。
「私は、君の婚約者になれなかったから、約束通りにダマレドゴ嬢と婚約したんだ」
「え? 約束?」
「父に少し待ってもらったんだ。その……会って一目惚れして帰って来たのに、彼女と婚約したんだ」
「え……」
どういう事?
「ごめん。困らせているよね」
「え? いえ。えーと、ちょっと意味がわからなくて」
「パーティーで君に会ってから惚れているって事。現在進行形」
顔を真っ赤にし、目線を斜め下に落としたままフランシスク様が、意味不明の言葉を発した。
えーと。セセリア様から私の事を聞いたフランシスク様は、密かに開催された私の婿探しパーティーに参加し、私を好きになったけど、私に選ばれなかったからユゲット嬢と婚約した?
えー!? 何それ。
う。顔が火照ってる。きっと、私も顔が真っ赤だ。
「プロンテヌ侯爵がチャンスをくれたんだ。君が私を好きになったのなら、婚約を認めると。期限は、私達が卒業するまでの間。それまでに君を惚れさせられなければ、諦めろと言われたんだ」
「………」
何それ。私の意思の確認はなしですかぁ!
でもユゲット嬢が言っていたのは、半分当たっていたのね。フランシスク様が私を好きだと勘が付いていた。
「じゃ、両親が死んだ事故の責任とかではなくて、その、私を好きだからって事なのよね」
真剣な顔つきでフランシスク様が頷く。
「君を困らせたくはない。もし受け付けられないのなら言ってほしい。そうでなければ、チャンスがほしい」
「う……」
そう言われても。両親の事故の事はフランシスク様のせいだとは、微塵も思っていない。それどころか、解決に手を貸してくれた恩人だ。
彼の事は嫌いではないけど、ガストン様と結婚すると思っていたし、両親が死んだ後は彼と婚約破棄する事しか考えてなかったわ。
いきなりそういう目で見れといわれたも……。
「その感謝すれど嫌う事なんてあり得ません。ただそういう目で見た事はないので……」
「では、口説き来ていいですか?」
うん? 口説きに来る? ここに?
いや、そんな、すがる目で見られても困る。
「えーと。噂にならない程度に……」
「はい! では今日は帰ります。もし何か困った事があったら何でも相談してほしい。では、失礼します」
「あ、はい。ありがとう」
フランシスク様は、執務室を出て行った。
騒がしかった執務室は、私だけとなりシーンと静まり返っている。
ルトルン伯爵とガストン様、エルダ夫人が連行される騒ぎがあったなのど嘘みたい。
お父様とお母様が亡くなった事故の真相が究明された。
私は、ソファーに腰を下ろす。
プロンテヌ侯爵が動いてくれなかったら私はどうなっていたのかしらね。
あぁ、二人にお礼を言い忘れたわ。
あれ?
頬に涙が伝ている。泣きたいわけじゃないのにな。
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