【完結】ケーキの為にと頑張っていたらこうなりました

すみ 小桜(sumitan)

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第78話

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 嘘でしょう! 何がどうなってるのよ!

 「ファビア! 馬車の周りに水の結界を張れるか」
 「え……」

 あ、落下速度が緩やかになっている。馬車を風魔法でゆっくり降ろしてるんだわ。

 「できるわ」

 馬車全体に水魔法で結界を張った。
 馬車は、川にザブンと落ちるも水が入って来る事はない。

 「ふう……」

 川の深さは思ったよりあり、横になった馬車の天井がぎりぎり出るぐらいだった。

 「すまないが、もう少しそのままで。まず俺がドアを開け、上から出て引っ張り上げるから、馬車から出よう」
 「うん。私は大丈夫。これくらいなら30分は持つ」
 「羨ましい事で。よっと」

 ドアを魔法で強引に開けると、そこからレオンス様はよじ登った。

 「まずは、フロール嬢」

 レオンス様が手を伸ばすも、フロール嬢は青ざめ震えている。

 「まさかもう、仕掛けて来たの……」

 小さくそう呟いたのが聞こえた。
 仕掛けて来た? 事故ではないの? いやそれより今は脱出が先よ。

 「フロール嬢! しっかりして! レオンス様に捉まって」
 「あ……うん」

 フロール嬢を何とか馬車の上に上げると、今度は私を引っ張り上げた。

 「はぁはぁ……」

 珍しくレオンス様が、息を切らしている。

 「レオンス様、大丈夫? 顔色悪いけど」
 「いやぁ。魔力切れかな……」
 「え!?」

 数分風魔法を使っただけなのに? 今までだって普通に使っていたよね?」

 「不思議そうな顔をするなよ。当たり前だから。適性がない属性をあんな風に使えば、こうなるんだ。10倍ぐらい魔力を消費するからな」
 「なんと!」

 そうだったんだ。10分は大丈夫みたいな事を言っていたけど、時と場合によるって事ね。

 「おーい。大丈夫かぁ」

 橋の上から誰かが叫んでいる。
 近くに居た人かもしれない。

 「今、警ら隊を呼んだ!」
 「ありがとうございます」

 レオンス様が返す。

 「フロール嬢、大丈夫か」
 「………」

 フロール嬢は、フルフル震えなたらも頷く。
 大丈夫そうには、見えないわね。

 「馬も無事……じゃない? おなかに怪我?」

 レオンス様が、横になった馬を見て驚いた。
 私も見てみると、お腹から血が出ている。

 その後、警ら隊により私達は、川から救助された。
 御者がいないと思ったら、馬車が落ちそうになったあの時、勢いよく反転した為に、橋の上に投げ出されていたのだ。
 怪我をしたけど、別々に川に投げ出されたわけでなくてよかったわ。
 川から落ちたのに、誰も死なずに済んだ。
 それは、私とレオンス様がいたから。どちらかだけだったら死んでいたわね。

 「ねえ、フロール嬢。しばらく、私の家に来ない?」
 「え……」
 「よく考えたら今の家に居づらいでしょう? それにまだ全部話を聞いていないし、守って欲しいって言っていたし」
 「でも……侯爵家に居候なんて」
 「ヒロインが何言ってるのよ」
 「……ありがとう。本当にお人好しなんだから」

 こうして、三人で一緒にココドーネ侯爵家へと行くのだった。

 ◇

 「話を聞いた時には、生きた心地しなかったわ。本当によかった」

 リサおばあ様に、ギュッと抱きしめられた。

 「ご心配をおかけしました」
 「まずは、湯を浴びなさい。あなたもね」

 リサおばあ様は、優しくフロール嬢にも話しかける。

 「ありがとうございます」
 「行きましょう」
 「あなたも休んで行きなさい。顔色が悪いわよ」
 「レオンス様。大丈夫ですか?」

 リサおばあ様とエメリック様が心配そうに言うと、大丈夫と令息スマイルで返事を返すレオンス様。
 本当は、横になりたいぐらい疲労感があると思うのだけど。

 「素敵な方たちね」
 「えぇ。一時期でも家族になれた私は幸せ者よね」
 「ふう」
 「大丈夫?」
 「えぇ。だいぶ落ち着いたわ」

 湯を浴び、ローレットに入れて貰った紅茶を飲みながら一息ついていた。
 レオンス様は大丈夫かしら。湯を浴びたらすぐ来るかと思ったけど、来ないし。先にちょっと聞いておこうかな。

 「ねえ、馬車の中で言っていた話の続きなのだけど……」
 「それは……」

 フロール嬢が壁に立つローレットをチラッと見た。

 「大丈夫よ。私も音を遮断する事が出来る事を知っているでしょう」
 「本当に凄いわね。あなた達は」

 フロール嬢は、紅茶をごくんと一口飲むと意を決した顔つきになる。

 「アマート様との出会いは、命を狙われたところを助けてもらうイベントなの」
 「え!」
 「アマート様は、あなた達みたいに魔法に興味を持ち色々と使える様になっていた。稀なる才能を持った魔法博士と言われていたわ。まあまだ卒業はしていなかったけどね」

 私達の様に扱えることを隠す事はせず、注目を浴びたのね。

 「王女の子だとバレたって事なの?」

 そうだとフロール嬢は頷いた。
 という事は、エイデース帝国の者が犯人? もしかしてマルシアール殿下とか?
 でもそもそも15年前の戦争って何が原因だったのかしら。

 「ねえ、ゲームに出てきているかわからないけど、15年前の戦争のきっかけって何?」
 「ディードアウト王国は、闇魔法が得意な国でその闇魔法で魔物を封じた。そして、管理していた。だけど、魔物を解き放そうとしているという疑惑があがり、エイデース帝国によって制裁が下された」
 「それって本当なの? 魔物はどうなっているの?」
 「ゲーム通りならエイデース帝国の管轄の元、そのまま封印されているはずよ」
 「そうなのね……」

 ゲームシナリオだとしても、フロール嬢に罪はない。それなのに、殺そうとするなんて。
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