【完結】お父様の再婚相手は美人様

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
8 / 10

8話

しおりを挟む
 「本当に美人よね。私が男だったら惚れていたでしょうね。でも、あなたとは結婚しないわよ」

 私は、わざとフフンと言う顔つきをして言ってやった。

 「な……私だってあなたとなどお断りよ!」
 「まあ意味をご理解していらっしゃらない? 見掛け倒しだと言ったのよ。高貴なお方は、中身を重視するのよ。恋愛結婚が出来るからと言って、誰も彼も良いってわけではないのよ」
 「そうだな。僕はシャルルの全てに惚れているけどね。でもそれは、僕が見て来た彼女だ。高貴なお方は、見えない部分も探る。だから君が言った様に、彼らはあなたの美貌に惚れたのだろうね」
 「な、何よ。まるで見た目だけ良いっているように聞こえるのですけど! 公爵や殿下に見向きもされないからって、そんな事を言ってるのでしょう。負け惜しみじゃない!」

 顔を真っ赤にしてシャーロット嬢が吠える。

 「あら嫌だわ。負け惜しみを言っているのはあなたではありませんか。告白されるですって? あり得ないわ。だってあなたでは公爵夫人も殿下の妻も務まりませんもの。学園の事すら知らなかったあなたではね!」
 「な……」
 「高貴なお方は学園に行くのは当たり前で、それ以上の教育を身に着けておられるのよ。私達の領土を管轄しなくてはいけないのですからね。それをサポートして支える力がなくては、配偶者は務まりませんわ」
 「やめないか! お前は、苦労せずぬくぬくと育ってきた。だからシャーロットの苦労がわからないのだろう!」

 何ですって!
 それをあなたがいいますか!

 「ゴラン様あなたは何を言って……」

 文句を返そうとするレイモンドを手で制し、私はお父様を睨みつけた。初めて本気でお父様に、憎悪の念を抱いたわ。
 
「お父様。私がこの方々を紹介された事に胸を痛めていないと思っていらっしゃるの? 赤字だから何をしても無駄と思っていたのでしょうけど、お母様を支えようとは思わなかったのですか?」
 「見下していたのはそっちだろう? 仮当主にもしなかったではないか!」
 「それは、お母様が亡くなった後の話じゃない! 私が言っているのは、その前の話よ。この国では、お父様の様に婿入りしている方はごまんといるわ。騙されたって言うけど、お父様のご両親はお父様の為に……」
 「だから! 両親まで騙して――」
 「それを、彼女に言うのはお門違いではありませんか? あなたからの発言からすると、彼女こそ被害者になりませんか?」

 ヒートアップしてきた私達を落ち着かせる為でもあったのでしょう。レイモンドは静かにそうお父様に言った。
 お父様は、本当はお母様やツッピェ侯爵に恨み言を言いたいのでしょう。けど、ツッピェ侯爵には立場上、面と向かっては言えない。

 「失礼ですが、彼女といえグルーン伯爵家と一緒に仕事をするにあたり、色々と調べております。ツッピェ侯爵を通しゴラン様が結婚をしたのを存じております。そして、お二人がその当時お付き合いしていた事も」

 レイモンドがそう言えば、お父様とメーラ夫人が驚いた顔つきになり、お父様が私を見た。

 「私が知ったのは、昨年です……」
 「そうか……」
 「ゴラン様。あなたに縁談をと申し出て来たのはあなたのご両親ですよ」
 「な! そんなはずはない。彼女と交際しているのを知っていた」
 「だからこそです。あなたがぞっこんになっているのを知ったご両親は、ツッピェ侯爵が領土の売買の話を持ち掛けて来た時に、あなたの事も相談したそうです」

 レイモンドの言葉に、お父様が目を見開く。

 「相談って……私は彼女となら平民になっても構わなかった。彼女と結婚したかったのだ」
 「けど、彼女に話すと身を引くと言っていなくなったからあなたは、グルーン伯爵家に婿入りした。ご両親は安堵したご様子だったと伺っています」
 「でたらめを言うな! いや、ツッピェ侯爵が都合のいい様に言っているだけだ! 現に私の子を授かり一人で育てていてくれた。彼女は、私の子を身籠ったせいで、誰とも結婚できずにいたのだぞ!」

 お父様はそう信じているようで、真剣な顔をこちらに向けている。これからお話する内容は、お父様にとって残酷な事かもしれないわね。
 でもこのままではいけない。
 知ってでもなお、彼女達と一緒にいると言うのならそれが真実の愛という事なのでしょう。

 「そうね。お父様の言う通りだわ。彼女に確認してみましょう。メーラ夫人。お父様が言っている通りなのですか?」
 「……私は、ゴランからしか当時の話を聞いておりませんの。ですから、詳しくは知りませんわ」
 「いえ、そこではなく、あなたが身を引いた理由です」
 「え……」
 「本当にお父様の為でしたの?」

 驚いた顔をしてすぐさま俯くメーラ夫人。

 「えぇ。私と結婚すれば平民になってしまう。せっかく伯爵家に婿入りできるチャンスでしたもの。子供を身籠ってしまったと、結婚した彼には言えませんでしたわ」
 「そう。でもね、婚姻前にそういう関係になるのって普通はあり得ないと思いますの。こういう結果を生む事になりますから」
 「それは、自業自得だという事か!」

 私がメーラ夫人に鋭い視線を送りながら言えば、憤怒した様子を見せるお父様。
 けどメーラ夫人は、怒っている様子はない。どちらかというと、焦っている様子ね。

 「えぇ。お父様に関して言えば」
 「なに? どういう意味だ」
 「狙いがそれだったって事よ」
 「意味がわからないのだが……」
 「僕から話すよ。彼女は複数の男性とお付き合いしていた平民だった」
 「な……何をいっている……」

 驚いた様子で言葉を発するお父様だけど、レイモンドの少し憐れんだ表情を見た為か、動揺した様子を見せメーラ夫人に振り向いた。

 「君は、男爵令嬢だった。そうだよな」
 「まあ、なぜ確認をしますの? 当たり前ではありませんか」
 「彼女は、ゴラン様と別れた後お付き合いしていた男爵に、子を身籠ったと言って男爵家と結婚する事ができた」
 「な、何を言っている! 彼女は私と初婚のはずだ」
 「貴族との結婚は、記録が残るのですよ。メーラ夫人」
 「……か、勘違いでしょう」
 「調べたとお伝えしましたよね?」
 「あなたは、本当は身籠ったと言ってお父様と結婚しようと思っていた。けど、お母様との結婚話が出たとお父様から聞いた時に、赤字の話も聞いたのでしょう。だからお父様の前から姿を消したのよね」
 「ゴラン様が結婚した時と同じごろ、あなたも結婚した記録が残っています。正確には、男爵が平民のあなたと結婚した記録ですがね」

 私達の言葉に、メーラ夫人は青ざめている。お父様は、放心して、メーラ夫人を見つめていた。

 「結局、男爵家の両親があなたの事を調べ、その子が自身の子ではないと判断し、離婚させられた」
 「ち、違うよな」
 「再婚の場合、別に周りに知らせる必要もない。役所に行ってその場で署名すればいい」

 レイモンドがそう言えば、お父様が愕然とした顔つきになった。
 この世界の戸籍の管理はざっくりとしている。ずさんともいうかもしれないけど、当主ではない者は再婚したという記録を残す程度の感覚なので、多少間違いがあっても素通りしたのよね。
 彼女は、離婚した男爵のラストネームをつらっと書いていたのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

私が妻です!

ミカン♬
恋愛
幼い頃のトラウマで男性が怖いエルシーは夫のヴァルと結婚して2年、まだ本当の夫婦には成っていない。 王都で一人暮らす夫から連絡が途絶えて2か月、エルシーは弟のような護衛レノを連れて夫の家に向かうと、愛人と赤子と暮らしていた。失意のエルシーを狙う従兄妹のオリバーに王都でも襲われる。その時に助けてくれた侯爵夫人にお世話になってエルシーは生まれ変わろうと決心する。 侯爵家に離婚届けにサインを求めて夫がやってきた。 そこに王宮騎士団の副団長エイダンが追いかけてきて、夫の様子がおかしくなるのだった。 世界観など全てフワっと設定です。サクっと終わります。 5/23 完結に状況の説明を書き足しました。申し訳ありません。 ★★★なろう様では最後に閑話をいれています。 脱字報告、応援して下さった皆様本当に有難うございました。 他のサイトにも投稿しています。

巻き戻った妻、愛する夫と子どもを今度こそ守ります

ミカン♬
恋愛
公爵令嬢フィリスの愛する婚約者、第一王子ジルナードが事故で体が不自由となった。 それで王太子候補は側妃の子、第二王子のサイラスに決まった。 父親の計略でフィリスはサイラスとの婚姻を余儀なくされる。悲しむフィリスとジルナード。 「必ずジルナード様を王にします。貴方の元に戻ってきます」 ジルナードに誓い、王妃から渡された毒薬を胸に、フィリスはサイラスに嫁いだ。 挙式前に魔女に魅了を掛けられて。愛する人はサイラスだと思い込んだまま、幸福な時間を過ごす。 やがて魅了は解けて…… サクッとハッピーエンドまで進みます。

一緒に召喚された私のお母さんは異世界で「女」になりました。

白滝春菊
恋愛
少女が異世界に母親同伴で召喚されて聖女になった。 聖女にされた少女は異世界の騎士に片思いをしたが、彼に母親の守りを頼んで浄化の旅を終えると母親と騎士の仲は進展していて…… 母親視点でその後の話を追加しました。

皇太女の暇つぶし

Ruhuna
恋愛
ウスタリ王国の学園に留学しているルミリア・ターセンは1年間の留学が終わる卒園パーティーの場で見に覚えのない罪でウスタリ王国第2王子のマルク・ウスタリに婚約破棄を言いつけられた。 「貴方とは婚約した覚えはありませんが?」 *よくある婚約破棄ものです *初投稿なので寛容な気持ちで見ていただけると嬉しいです

【完結】遅いのですなにもかも

砂礫レキ
恋愛
昔森の奥でやさしい魔女は一人の王子さまを助けました。 王子さまは魔女に恋をして自分の城につれかえりました。 数年後、王子さまは隣国のお姫さまを好きになってしまいました。

【完結】悪女を押し付けられていた第一王女は、愛する公爵に処刑されて幸せを得る

甘海そら
恋愛
第一王女、メアリ・ブラントは悪女だった。 家族から、あらゆる悪事の責任を押し付けられればそうなった。 国王の政務の怠慢。 母と妹の浪費。 兄の女癖の悪さによる乱行。 王家の汚点の全てを押し付けられてきた。 そんな彼女はついに望むのだった。 「どうか死なせて」 応える者は確かにあった。 「メアリ・ブラント。貴様の罪、もはや死をもって以外あがなうことは出来んぞ」 幼年からの想い人であるキシオン・シュラネス。 公爵にして法務卿である彼に死を請われればメアリは笑みを浮かべる。 そして、3日後。 彼女は処刑された。

ただ誰かにとって必要な存在になりたかった

風見ゆうみ
恋愛
19歳になった伯爵令嬢の私、ラノア・ナンルーは同じく伯爵家の当主ビューホ・トライトと結婚した。 その日の夜、ビューホ様はこう言った。 「俺には小さい頃から思い合っている平民のフィナという人がいる。俺とフィナの間に君が入る隙はない。彼女の事は母上も気に入っているんだ。だから君はお飾りの妻だ。特に何もしなくていい。それから、フィナを君の侍女にするから」 家族に疎まれて育った私には、酷い仕打ちを受けるのは当たり前になりすぎていて、どう反応する事が正しいのかわからなかった。 結婚した初日から私は自分が望んでいた様な妻ではなく、お飾りの妻になった。 お飾りの妻でいい。 私を必要としてくれるなら…。 一度はそう思った私だったけれど、とあるきっかけで、公爵令息と知り合う事になり、状況は一変! こんな人に必要とされても意味がないと感じた私は離縁を決意する。 ※「ただ誰かに必要とされたかった」から、タイトルを変更致しました。 ※クズが多いです。 ※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。 ※独特の世界観です。 ※中世〜近世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

「股ゆる令嬢」の幸せな白い結婚

ウサギテイマーTK
恋愛
公爵令嬢のフェミニム・インテラは、保持する特異能力のために、第一王子のアージノスと婚約していた。だが王子はフェミニムの行動を誤解し、別の少女と付き合うようになり、最終的にフェミニムとの婚約を破棄する。そしてフェミニムを、子どもを作ることが出来ない男性の元へと嫁がせるのである。それが王子とその周囲の者たちの、破滅への序章となることも知らずに。 ※タイトルは下品ですが、R15範囲だと思います。完結保証。

処理中です...