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第三十六話

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 はぁ……とうとう期限の日になってしまいました。
 放課後に学園で、マイステリー様のお父様に披露する事になってますが、何も出来ないままなのです。しかもあれから一度・・もロッドに魔力が移っていません。せめて魔力がロッドに移せないと、話しにならないと言われるのが目に見えている。

 あぁどうしましょう!
 問題なのは、売り言葉に買い言葉で、そのまま破談になりそうな事よ。
 マイステリー様の事は気に入っているようなのですが、彼のお父様の態度がちょっといやかなり納得いかないようなのです。

 神頼みならぬ猫頼みで、ロッドに魔力を入れるお手伝いをミャにしてもらおうと連れて来たのですが、授業中は教室には連れて行けない。ミャを発見した場所に置いて授業を受けていたのですが、ミャが見当たらない。

 「ミャどこ?」

 どうしましょう! 最後の授業前に見に来た時はいたのですが……。

 「ミャ。どこ。ミャ」

 だめだわ。心配でお披露目どころではないわ。これなら一度家に帰って迎えに行く方法をとればよかったわ!

 うん? がさがさと向こう側で、動いた様な?
 ここって池じゃない。探し回ってここまで来たのね。
 辺りを見渡して確認すると、誰もいない。
 よし。探すだけなので、失礼します……。

 先生に見つかったら大目玉ね。

 「ミャ」

 小さな声でミャの名を呼びつつ、人に見つからない様にコソコソと歩く。怪しすぎるわ、私。

 ちゃぽん。

 うん? 水の音?
 え? 人?

 音の方は湖だった。茂みに居るかもとそっちばかり見ていたので、近づくまで気づかなかったわ。

 「あなた、ここで何をしているの? もしかして、水晶を入れました?」

 背を向けていた女子生徒が、声を掛けると驚いて振り向いた。私のクラスの人ではないわ。とうい事は、二年か三年生よね。

 「あ、あなたこそ」
 「私は、猫を探しに来たのですけど」
 「知らないわ、猫なんて……。だから向こうへ行って!」
 「え? でもここ立入禁止ですわ。一緒に出ましょう」
 「あっちへ行ってと言っているのよ! 邪魔しないで頂戴!」

 え? なに? 池が揺らいでる?

 「……なにあれ」

 私の呟きに怒鳴っていた女子生徒が湖に振り向いた。

 「きゃー!」

 黒い影の様なモノが立ち上がり集まって行く。

 「ユリーナ嬢!」
 「あ、マイステリー様!」
 「離れて! これが姉さんが言っていた影か……」

 これが魔法の暴発なの!?

 「これは……」

 リゾール殿下とお姉様も現れた。
 たぶん、ミャを迎えに行くと言って戻って来ないから探しに来たのね。もしかして私がここに来るというイメージがあるのかしら。

 「なんだこれは。マイステリー、まさかと思うが彼女ユリーナがやったのか?」
 「違います! これが、姉さんが言っていた暴発の原因だと思います」
 「何をしてこうなった?」

 リゾール殿下が問う。

 「きっかけは怒りだと思います。彼女がここを立ち去って欲しいと……」
 「え? 私のせいだというの? 私はただ……願い事をしようとしただけよ!」
 「立入禁止なのに入ってまでか!」

 リゾール殿下に言われ、女子生徒は泣きだした。

 「だって、今までの場所でできなくなったから……人に見られない様にしないと効果ないから」
 「見張りをつけておくべきだったか……。一度ここを離れるぞ。これを取り込むとこないだの男の様になる可能性がある!」
 「これをこのまま放置するのですか?」

 リゾール殿下の言葉に驚いて、マイステリー様のお父様が叫ぶ。
 いつの間にか、来ていたのね。

 「いや、今から封印を行う! まだ段取りが不完全だが仕方がないだろう」
 「今から? あれが大人しく留まっているとは思いませんが?」
 「それでもやるしかない!」

 これが、カーリア様が言った魔力の暴発なのでしょうか?
 もうマイステリー様の封印は、間に合わないのでしょうか?
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