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忍び寄る悪意
第28話~かわいい後輩は双子
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はぁ……。
ため息をしつつジェスはまた、仕事始めの見届け人の任務から帰って来た次の日の午前中に、魔術師の館の三階を足早で歩いていた。
リズの仕事始めの見届け人兼イッロを探る任務の件は、中級魔術師総隊長のアルドヘルムではなく、小隊長に報告するつもりでいた。
だがまた、直々にアルドヘルムから呼び出しが来たのだ。
「ゼノさんが上手く言ってくれたと思ったんだけどなぁ……」
ゼノは、事情を知っている。前の様に上手く処理してくれるものだと思っていた。
今回は、イッロではなく、イッロに雇われていた魔術師のランベールが黒幕だったが、自分達はまんまと騙された。
賊は捕まえる事は出来たが、ランベールには逃げられたのだ。
しかも一応見届ける対象のレネが怪我をした。
「はぁ……。覚悟するか」
扉の前に来て、ジェスはそう呟いた。
トントントン。
扉をノックする。
「ジェスです」
「入れ」
「失礼します」
入ってすぐにお辞儀をするジェスに、ソファーに座るようにアルドヘルムは促す。ジェスはそれに従い、ソファーに腰を下ろす。
「昨日はご苦労だったな。魔術師が関わっていたと報告を受けた。それとこれ、君のだろう?」
テーブルに置かれたのは、探していたムチだった!
「あの、これ……どこで?」
ゼノからは、発見出来なかったと連絡を受けていた。
「私の所に届いてな。たまにあるのだ。私はそういう係りではないのだが。確か白いムチを愛用していたと聞いたが違ったか?」
「いえ。僕のです。ありがとうございます。お手数お掛けしました」
届けたのは一体誰だと聞きたいが、相手がアルドヘルムだった為聞きづらい。
ジェスは、ポーチにムチをしまう。
「今日呼んだのは昨日の件とは別件なんだが……」
「え?」
イッロの件で呼ばれたと思っていたジェスは驚く。
「実は、お願いがあってな」
またアルドヘルムからお願いという単語が出て来て、ドキッとした。彼のお願いは良い話ではない。
「まあ、そう身構えるな。嫌なら断っていい件だ。私の個人的なお願いだ。知人から少々頼まれごとをしてな。君にやってもらいたい事があるのだ」
ジェスは、アルドヘルムの言葉に目を丸くする。
個人的な知人のお願いに自分を選んだからだ。昨日任務に失敗した相手を選ぶだろうか? もっと優秀な者はいっぱいいる。年齢だろうか? とジェスは困惑する。
「そんな困った顔をするな。別に困らせようとしてる訳じゃない。相手が君を指定したからだ」
「え? 僕を?」
顔に出ていたのだろう。アルドヘルムはそう説明した。
ジェスもアルドヘルムが自分に頼むのに納得はしたものの、その者が何故自分を選んだのか不思議だった。
「実は知人のアーバテに頼まれてな」
頷きアルドヘルムは、お願いの内容を話し始めた。
――アーバテには、イルとミルという双子の姉妹がいる。二人共十歳だ。
アーバテの知り合いに、彼女達が懐いている探索家がいて、その者がある洞窟にマジックアイテムを落とした話をしたらしい。
それを取りに行きたいと二人は言い出した。
探索家と言うのは、いろんな場所を探索してお宝を探す者を指す。大抵は魔術師を雇い一緒に旅をするのだが、お金がない者は危なさそうな所に行く時だけ雇う。
探索家が入った洞窟は、穴があり落ちた偶然見つけた場所だった。一通り探索して落ちた穴から這い出た後に、魔術師隊に連絡し、危険だからとその穴は埋められた。その後に、マジックアイテムをその洞窟に落としてきた事に気が付いた。
洞窟には、もう一つ出入り口があったが、それは海に面した崖。
イルとミルは、魔術師の試験を受け初級魔術師ではあるが、勿論空を飛べない。
そこで空を飛べる魔術師をお願いしたいとアーバテから頼まれた。しかも出来ればジェスをと。
イルとミルには、憧れの人物だった。十代にして中級魔術師。そして優しいと評判なのだ。
なので二人は、出来るなら是非ジェスに会いたいと話が来たのだった。
「そういう訳で、出来れば引き受けてくれるとありがたい」
断ってもいいとは言われたもののやっぱり断りづらい。それに内容的には、危険ではない。
「それはいつ……」
「昨日の今日とは言わない。引き受けてくれるなら明後日ぐらいで構わん。連絡をしておくので、ゆっくりと明日まで休んで……」
バン!!
アルドヘルムが話している途中に突然扉が開き、二人は驚いて扉を見た。そこには同じ顔の子供が二人立っていた!
初級魔術師が着る一般的な魔術師の服を着た、ツインテールで淡い桃色の髪。瞳は濃い桃色で、キラキラと輝かせていた。
「きゃー!! 本物!」
「こんな近くで見たの初めて!!」
少女達は悲鳴に近い高い声で、興奮したように叫ぶ。
「これお前達! すまないアルドヘルム殿。ジェスさんが来ていると聞いて行くと聞かなくてな」
行商人風の中年の男性が二人の後に現れ、軽く頭を下げた。
どうやら彼女達が今話していたイルとミルらしい。
アルドヘルムとジェスも立ち上がり、会釈する。
「ねえ、おじ様! 引き受けてくれるの?」
「これイル! ここではおじ様ではなく……」
「あぁ。よい。どうぞ中へ」
注意をするアーバテにアルドヘルムは、部屋に入るように促す。
アーバテは中に入ると、パタンと扉を閉めた。
「ちょうど今、お話をしていたところだ」
アルドヘルムがそう言うと、少女達はジッとジェスを見つめた。
こうなるとますます、ノーとは言えない。
危険はないし、ここでアルドヘルムに恩を売っておく方がいいだろうと、ジェスは静かに頷いた。
「やったぁ!! じゃ、行きましょう!」
ジェスが頷いた途端、イルがジェスの手を引っ張る。
「え? もしかして今から?」
ジェスが驚いて聞くと、嬉しそうにイルが頷いた。
明後日からで良いと言われたのにと、ちらっとジェスがアルドヘルムを見ると彼も困り顔だった。
明後日で良いと言ったが、彼女達にそう言いづらそうだ。
ミルを見ると、ジッとジェスを見返して来る。
「はぁ……。わかりました。今日行きましょう。でも僕は何も用意していないので、用意をしてからでいいかい?」
仕方なくジェスは二人にそう言った。
「やったぁ!! じゃ早く!」
イルにジェスは、ソファーの前から引っ張り出される。すると反対側の手をミルも引っ張った。
「あ、いや、だから、用意を……」
「別に洞窟に行って戻って来るだけだ。その装備で十分だろう」
そうアルドヘルムが言った。
ジェスは、ポーチは付けて来ていた。その中には、200mlの水とマジカルチョコ、緊急連絡用のマジックアイテムが入っていた。
これに先ほど戻って来たムチも入っている。
全て万が一の為の物だ。マジカルチョコは、遭難時これを少しずつ食べれば三日持つ。魔力も少し回復する食べ物で、年に数度無料で支給される。一度も使った事がないので、五つほど入れてある。封を切らなければ、半永久的に日持ちするらしい。
緊急用のマジックアイテムは、中級魔術師になった時に渡された物。危険な任務にも就く事があるので、助けが必要な時に使うアイテムだ。
アルドヘルムが言う様に、これだけあれば大丈夫だろう。
ジェスは、わかったと頷いた。
「やったぁ!」
「行って来ます!」
イルが言うとミルが言って、二人は扉にジェスを引っ張っていく。
「気を付けてな!」
「頼んだぞ、ジェス」
「あ、はい」
何でこうなるんだと思いつつ、ジェスはアルドヘルムとアーバテに行って来ますと頭を下げた。
こうして、半ば強制的にジェスは、向かう羽目になった――。
ため息をしつつジェスはまた、仕事始めの見届け人の任務から帰って来た次の日の午前中に、魔術師の館の三階を足早で歩いていた。
リズの仕事始めの見届け人兼イッロを探る任務の件は、中級魔術師総隊長のアルドヘルムではなく、小隊長に報告するつもりでいた。
だがまた、直々にアルドヘルムから呼び出しが来たのだ。
「ゼノさんが上手く言ってくれたと思ったんだけどなぁ……」
ゼノは、事情を知っている。前の様に上手く処理してくれるものだと思っていた。
今回は、イッロではなく、イッロに雇われていた魔術師のランベールが黒幕だったが、自分達はまんまと騙された。
賊は捕まえる事は出来たが、ランベールには逃げられたのだ。
しかも一応見届ける対象のレネが怪我をした。
「はぁ……。覚悟するか」
扉の前に来て、ジェスはそう呟いた。
トントントン。
扉をノックする。
「ジェスです」
「入れ」
「失礼します」
入ってすぐにお辞儀をするジェスに、ソファーに座るようにアルドヘルムは促す。ジェスはそれに従い、ソファーに腰を下ろす。
「昨日はご苦労だったな。魔術師が関わっていたと報告を受けた。それとこれ、君のだろう?」
テーブルに置かれたのは、探していたムチだった!
「あの、これ……どこで?」
ゼノからは、発見出来なかったと連絡を受けていた。
「私の所に届いてな。たまにあるのだ。私はそういう係りではないのだが。確か白いムチを愛用していたと聞いたが違ったか?」
「いえ。僕のです。ありがとうございます。お手数お掛けしました」
届けたのは一体誰だと聞きたいが、相手がアルドヘルムだった為聞きづらい。
ジェスは、ポーチにムチをしまう。
「今日呼んだのは昨日の件とは別件なんだが……」
「え?」
イッロの件で呼ばれたと思っていたジェスは驚く。
「実は、お願いがあってな」
またアルドヘルムからお願いという単語が出て来て、ドキッとした。彼のお願いは良い話ではない。
「まあ、そう身構えるな。嫌なら断っていい件だ。私の個人的なお願いだ。知人から少々頼まれごとをしてな。君にやってもらいたい事があるのだ」
ジェスは、アルドヘルムの言葉に目を丸くする。
個人的な知人のお願いに自分を選んだからだ。昨日任務に失敗した相手を選ぶだろうか? もっと優秀な者はいっぱいいる。年齢だろうか? とジェスは困惑する。
「そんな困った顔をするな。別に困らせようとしてる訳じゃない。相手が君を指定したからだ」
「え? 僕を?」
顔に出ていたのだろう。アルドヘルムはそう説明した。
ジェスもアルドヘルムが自分に頼むのに納得はしたものの、その者が何故自分を選んだのか不思議だった。
「実は知人のアーバテに頼まれてな」
頷きアルドヘルムは、お願いの内容を話し始めた。
――アーバテには、イルとミルという双子の姉妹がいる。二人共十歳だ。
アーバテの知り合いに、彼女達が懐いている探索家がいて、その者がある洞窟にマジックアイテムを落とした話をしたらしい。
それを取りに行きたいと二人は言い出した。
探索家と言うのは、いろんな場所を探索してお宝を探す者を指す。大抵は魔術師を雇い一緒に旅をするのだが、お金がない者は危なさそうな所に行く時だけ雇う。
探索家が入った洞窟は、穴があり落ちた偶然見つけた場所だった。一通り探索して落ちた穴から這い出た後に、魔術師隊に連絡し、危険だからとその穴は埋められた。その後に、マジックアイテムをその洞窟に落としてきた事に気が付いた。
洞窟には、もう一つ出入り口があったが、それは海に面した崖。
イルとミルは、魔術師の試験を受け初級魔術師ではあるが、勿論空を飛べない。
そこで空を飛べる魔術師をお願いしたいとアーバテから頼まれた。しかも出来ればジェスをと。
イルとミルには、憧れの人物だった。十代にして中級魔術師。そして優しいと評判なのだ。
なので二人は、出来るなら是非ジェスに会いたいと話が来たのだった。
「そういう訳で、出来れば引き受けてくれるとありがたい」
断ってもいいとは言われたもののやっぱり断りづらい。それに内容的には、危険ではない。
「それはいつ……」
「昨日の今日とは言わない。引き受けてくれるなら明後日ぐらいで構わん。連絡をしておくので、ゆっくりと明日まで休んで……」
バン!!
アルドヘルムが話している途中に突然扉が開き、二人は驚いて扉を見た。そこには同じ顔の子供が二人立っていた!
初級魔術師が着る一般的な魔術師の服を着た、ツインテールで淡い桃色の髪。瞳は濃い桃色で、キラキラと輝かせていた。
「きゃー!! 本物!」
「こんな近くで見たの初めて!!」
少女達は悲鳴に近い高い声で、興奮したように叫ぶ。
「これお前達! すまないアルドヘルム殿。ジェスさんが来ていると聞いて行くと聞かなくてな」
行商人風の中年の男性が二人の後に現れ、軽く頭を下げた。
どうやら彼女達が今話していたイルとミルらしい。
アルドヘルムとジェスも立ち上がり、会釈する。
「ねえ、おじ様! 引き受けてくれるの?」
「これイル! ここではおじ様ではなく……」
「あぁ。よい。どうぞ中へ」
注意をするアーバテにアルドヘルムは、部屋に入るように促す。
アーバテは中に入ると、パタンと扉を閉めた。
「ちょうど今、お話をしていたところだ」
アルドヘルムがそう言うと、少女達はジッとジェスを見つめた。
こうなるとますます、ノーとは言えない。
危険はないし、ここでアルドヘルムに恩を売っておく方がいいだろうと、ジェスは静かに頷いた。
「やったぁ!! じゃ、行きましょう!」
ジェスが頷いた途端、イルがジェスの手を引っ張る。
「え? もしかして今から?」
ジェスが驚いて聞くと、嬉しそうにイルが頷いた。
明後日からで良いと言われたのにと、ちらっとジェスがアルドヘルムを見ると彼も困り顔だった。
明後日で良いと言ったが、彼女達にそう言いづらそうだ。
ミルを見ると、ジッとジェスを見返して来る。
「はぁ……。わかりました。今日行きましょう。でも僕は何も用意していないので、用意をしてからでいいかい?」
仕方なくジェスは二人にそう言った。
「やったぁ!! じゃ早く!」
イルにジェスは、ソファーの前から引っ張り出される。すると反対側の手をミルも引っ張った。
「あ、いや、だから、用意を……」
「別に洞窟に行って戻って来るだけだ。その装備で十分だろう」
そうアルドヘルムが言った。
ジェスは、ポーチは付けて来ていた。その中には、200mlの水とマジカルチョコ、緊急連絡用のマジックアイテムが入っていた。
これに先ほど戻って来たムチも入っている。
全て万が一の為の物だ。マジカルチョコは、遭難時これを少しずつ食べれば三日持つ。魔力も少し回復する食べ物で、年に数度無料で支給される。一度も使った事がないので、五つほど入れてある。封を切らなければ、半永久的に日持ちするらしい。
緊急用のマジックアイテムは、中級魔術師になった時に渡された物。危険な任務にも就く事があるので、助けが必要な時に使うアイテムだ。
アルドヘルムが言う様に、これだけあれば大丈夫だろう。
ジェスは、わかったと頷いた。
「やったぁ!」
「行って来ます!」
イルが言うとミルが言って、二人は扉にジェスを引っ張っていく。
「気を付けてな!」
「頼んだぞ、ジェス」
「あ、はい」
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