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『レベル10―嘘は魔法使いの始まり ―』

―エピローグ―

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 稲葉先輩は、何故か部室にいた。
 機嫌がよさそうで、得意げに杖を掲げている。
 どうやら入部試験だと思い込んだ稲葉先輩は、入部届を出しに走ったらしい。で、めでたく新入部員になった!
 まじかー!!
 魔女っ子大好きじゃないけど、安達先輩大好きでそれもまた大変なんだけど!

 「しかし、俺にも出来ちゃうなんてな! どういう仕組み?」
 「種も仕掛けもないよ。それ本物の杖だから」
 「は?!」

 稲葉先輩の質問に、僕はそう答えた。
 どうせ、すぐに変だと気づくだろう。マジックだと思って、ポンポンモンスターを出されても困る!

 「そうだよ! それね、私の傑作なの!」
 「俺達は、レプリカだもんなぁ。でもまあ、魔法使いって感じでいいか」

 大場は、それなりに満足しているみたいだ。

 「あぁ。そう言えば、魔法使いって審だけだっけ?」
 「うんうん。そうなの!」
 「そうなのじゃない! 魔法使いじゃないからって言っているだろう! だいたいそれなら全員魔法使いだろう!」

 意味がわからないと稲葉先輩は、首を傾げた。

 「自分で言っていなかったっけ?」
 「だから、それは設定!」
 「だろう? で、他の奴はどういう設定なの?」

 そこは、突っ込まないでほしい。

 「なんだよ、お前。いつも否定する癖に、先輩には自慢していたのかよ」
 「私は、杖職人の見習いだよー」
 「私は、勇者!」
 「安達先輩が勇者なら、私は賢者にしようかな」
 「勇者に賢者? じゃ俺、何にしよう」
 「何だ。魔法使い以外決まってなかったのか? よし、じゃ設定からだな!」

 はぁ。何で稲葉先輩が仕切ってるの?
 魔法使いじゃないからって言っているのに……。
 って、設定なら全員魔法使いでよくない?
 何で、勇者や賢者なの?! それ魔法使いより上じゃない?

 「あ、俺、魔王な!」

 ノリノリで稲葉先輩は言った!
 ぴったりですね!
 って、この部は何の部になったんだー!!
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