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第88話~誤報でした!正しくは――

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 精霊王は、スッキプをするかのように嬉しそうに、私達の上を飛び回っています。

 「やってみるもんね~。本当は、あの森で待っていてもよかったんだけど、どうせなら錬金術師様の力を見てみたいと思ってね!」

 「え? それってどういう事でしょう?」

 精霊王の言葉に、ユージさんが聞きました。私も聞きたいです!

 「私がお願いしたの。そうすると呼び出せると言ってみてって! まさか、ロウちゃんの所で呼び出すとは思わなかったけどね!」

 「だから、そのロウちゃんは、おやめなさい! 皆に迷惑を掛けてどうする。フォレスト様も呆れられていた」

 「ごめんなさい。だって、錬金術師様に会って見たかったんだもん。お礼に満開の桜を見せてあげるからね!」

 「ありがとう」

 「ありがとう。ねえ、その桜ってどこで咲かせるの?」

 私が聞くと、ずっと向こう側を指差した。

 「この島の中央よ。そこに咲かせるの」

 「へえ、何でそこなの?」

 「何で? そういう事は考えた事はなかったわ」

 「桜の木がそこにあるんじゃないの?」

 ユージさんが言うと、精霊王は首を横に振った。ユージさんの言葉で、そっかぁっと納得したところだったので、私もユージさんも驚きました。

 「ち、違うの?」

 「私が桜のまいを踊ると、何故か桜が咲くんです!」

 「すごーい!!」

 「そこから見てみたい!」

 ……すごく、ユージさんが食いついています!

 「え? そこから? 咲く前に連れて行ってもいいのかなぁ?」

 精霊王は、首を傾げます。

 「精霊王の権限でなんとか!」

 「え? 私にそんな権限はないよ」

 ユージさんが言うと、ムリだと言われました!
 それって、精霊よりフォレスト様とか言う方の権力が強いって事なのかな?

 「この島の事の決定権は、フォレスト様にあります」

 話を聞いていたロウさんが、教えてくれました。やっぱり、フォレスト様が一番みたい。

 「精霊王でも決定権は、ないんだ……」

 「っていうか、叱られるかも! 放棄するつもりだったのかぁって!」

 「一つ宜しいか」

 「はい……」

 ロウさんが、真面目な顔(たぶん)で見ています。

 「精霊は、それぞれの役目を持っていて、それに上も下もない。それは、私もだ。この森の番を任されているだけの事。セイレイオウも一年に一度、桜を咲かせる役目を与えられている」

 「精霊の王様でも一番じゃないんだ……」

 「「王様?」」

 私の言葉に、ロウさんと精霊王が声を揃えた。

 「王様ってロウちゃんの事?」

 「いえ、精霊王。あなたの事です」

 私の代わりに、ユージさんがそう答えると、精霊王はキョトンとする。

 「私、王様じゃないよ?」

 「あ、そっか! 王女様だよね?」

 「だから違うよ!」

 精霊王の言葉に私達は、顔を見合わせた。
 あれ? 精霊の王様だから精霊王じゃないの?

 「もしかして! 漢字にしたら精霊のさくらと書いて、精霊オウなのかも! 意味合いとして!」

 「え? 桜!?」

 私は、驚いて精霊王を見ると、首を傾げています。

 「私は、セイレイオウだよ」

 「うん??」

 「たぶん書状には、『セイレイオウ』って漢字じゃなくて平仮名とかで書いてあったんじゃないかな? それを『精霊王』だと思って解釈してしまったって事!」

 そっか! そういう事ね!
 王様が逃げ出すなんてと思っていたけど、私達の方が勘違いしていたって事ね!

 「舞うところは見れないのか……」

 本当に残念そうにユージさんは呟きました。

 「あそこに咲かせるぐらいならいいんじゃない?」

 精霊桜セイレイオウちゃんが指差したのは、ロウさんが止まり木でした!

 「あれぐらいならきっと、ロウちゃんの権限でいいと思う! ね、ロウちゃん!」

 精霊桜ちゃんの提案に、どうなのと私達は、ロウさんをジッと見つめました。すると仕方がないとロウさんは頷いてくれました!
 ロウさんの止まり木は、葉っぱすらない枝だけの木です。あれに桜が満開になると思うと、今からわくわくします!
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