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修行1日目
1フライト目:羽田→那覇(6)
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僕の着席後、5分ほど経ちいよいよこのフライトの出発準備が始まったようだ。
「業務連絡です。客室乗務員はドアモードをアームドに変更し、相互確認を行ってください」
この声は藤咲さんだ。僕は心の中で呟いた。そして、藤咲さんによる機内アナウンスが始まった。
「皆様、おはようございます。本日もご搭乗いただき誠にありがとうございます。この便は東京羽田発・沖縄那覇空港行きです。この便のチーフパーサーは藤咲、他8名の乗務員が皆様と那覇空港までお供いたします。御用がございましたら遠慮なくお近くの客室乗務員へお知らせください」
藤咲さんが近かったらなぁ・・・飲み物でも持ってきてもらうのにな。
そう心の中で思ったが、ここは飛行機の機内であってスナックやキャバクラではないことは自覚している。そんなサービスなんて無いんだ!と自分自信に言い聞かせながら、窓の外に目を向ける。
先ほどまで荷物の積み込みを行っていた作業員や作業者がバックして機体から離れてゆく。そして、天井に付けられたディスプレイには安全に関する動画は放映され始めた。
初めて飛行機に乗ってこの動画を見た時、僕は万が一のことを想定してしまい、頭の中でシミュレーションを行なった。ただ、実態としては周囲を見回すと、この動画を真剣に見ている人は少ないようで、皆さん朝早かった影響からか目を閉じている人、本を読んでいる人と様々であった。
飛行機は世界で一番安全な乗り物と言われていることは知っているが、一旦事故が起こると亡くなる方がいる場合は世界中にニュースとして放送される。特に旅客機の事故になると数百人が一度に亡くなることで自動車事故よりもインパクトが大きい。
この安全に関する動画をちゃんと見ておかないと、いざというときに対応できないのでは無いかと僕は真面目な性格が出てしまい、ちゃんと今回も見ることにした。
動画の放映が終わり、窓に目を向けると、ちょうどエンジンが始動したようで大きな音と振動が機体から座席や僕自身の身体に伝わってくる。
いよいよ修行の初フライトの開始だ。飛行機は滑走路に向かって動き出し、空港内をぐるぐると移動しながら滑走路に到着した。一旦停止した後、エンジン音が一気に大きくなり、機体は急加速を始める。その加速度によって僕の体は座席に押しつけられ、窓の外を見ると景色が一気に過ぎ去ってゆく。そして、数十秒だった頃、機体はフワッと浮き上がった。
眼下には東京のビル群や川崎の工場地帯、そして横浜のランドマークタワーが見えた。その直後、飛行機は雲の中に入った。
これまでの搭乗2回ともに中央座席だったので窓側の楽しさを初めて知った瞬間だった。空から地上の姿を見ることはほとんどなかったので、見慣れた街の景色が新鮮に思えた。
僕はまるで小学生のような気持ちになり、窓から見える景色に釘付けだ。
僕が小学生だった頃、共働きの両親の予定が合うときにたまに車で旅行に連れていってくれた。夏休み、冬休み、春休みのような長期連休でないと両親は都合を合わせられないくらいの多忙さで、ただの土日にはできなかった旅行を重大イベントとして僕はいつも心待ちにしていた。旅行といってもいつも隣県のペンションや小さなホテルであったが、この時も車の窓から見える景色が新鮮で、ずっと外を見ていた気がした。
つまりは、基本的にお出掛けをするのは好きなタイプだったと、ふと思い出す。
今では土日は家でゴロゴロして、漫画やゲームをする毎日だったので、休日に出かけていることも何れだけ振りだろう?と自問自答していると、今度は富士山が見えた。
既に飛行機の高度は富士山をゆうに超えており、真っ白に雪化粧した富士山が小さく見えた。
「そういえば僕って旅行好きだったっけ。こうやって新しい土地の景色を眺めるのが大好きだったなぁ」
漫画を読んだりゲームをしたりせず、1人でぼーっとする時間によって、僕は過去の色々な自分のことを思い出すきっかけになっていることに気づいた。
「ひとりで旅行に出かけるのも悪くないな。“修行“という名前が相応しく無いくらい、この旅行、楽しいかもしれない」
また僕は独り言を呟いた。
隣に座る男性は既に眠りについているようで、機内も静かでエンジン音だけが僕の耳に入ってくる。
この修行では自分の過去を見つめ直し、今後に向かって何かを考えるきっかけになりそうだ。僕はふと思った。
「業務連絡です。客室乗務員はドアモードをアームドに変更し、相互確認を行ってください」
この声は藤咲さんだ。僕は心の中で呟いた。そして、藤咲さんによる機内アナウンスが始まった。
「皆様、おはようございます。本日もご搭乗いただき誠にありがとうございます。この便は東京羽田発・沖縄那覇空港行きです。この便のチーフパーサーは藤咲、他8名の乗務員が皆様と那覇空港までお供いたします。御用がございましたら遠慮なくお近くの客室乗務員へお知らせください」
藤咲さんが近かったらなぁ・・・飲み物でも持ってきてもらうのにな。
そう心の中で思ったが、ここは飛行機の機内であってスナックやキャバクラではないことは自覚している。そんなサービスなんて無いんだ!と自分自信に言い聞かせながら、窓の外に目を向ける。
先ほどまで荷物の積み込みを行っていた作業員や作業者がバックして機体から離れてゆく。そして、天井に付けられたディスプレイには安全に関する動画は放映され始めた。
初めて飛行機に乗ってこの動画を見た時、僕は万が一のことを想定してしまい、頭の中でシミュレーションを行なった。ただ、実態としては周囲を見回すと、この動画を真剣に見ている人は少ないようで、皆さん朝早かった影響からか目を閉じている人、本を読んでいる人と様々であった。
飛行機は世界で一番安全な乗り物と言われていることは知っているが、一旦事故が起こると亡くなる方がいる場合は世界中にニュースとして放送される。特に旅客機の事故になると数百人が一度に亡くなることで自動車事故よりもインパクトが大きい。
この安全に関する動画をちゃんと見ておかないと、いざというときに対応できないのでは無いかと僕は真面目な性格が出てしまい、ちゃんと今回も見ることにした。
動画の放映が終わり、窓に目を向けると、ちょうどエンジンが始動したようで大きな音と振動が機体から座席や僕自身の身体に伝わってくる。
いよいよ修行の初フライトの開始だ。飛行機は滑走路に向かって動き出し、空港内をぐるぐると移動しながら滑走路に到着した。一旦停止した後、エンジン音が一気に大きくなり、機体は急加速を始める。その加速度によって僕の体は座席に押しつけられ、窓の外を見ると景色が一気に過ぎ去ってゆく。そして、数十秒だった頃、機体はフワッと浮き上がった。
眼下には東京のビル群や川崎の工場地帯、そして横浜のランドマークタワーが見えた。その直後、飛行機は雲の中に入った。
これまでの搭乗2回ともに中央座席だったので窓側の楽しさを初めて知った瞬間だった。空から地上の姿を見ることはほとんどなかったので、見慣れた街の景色が新鮮に思えた。
僕はまるで小学生のような気持ちになり、窓から見える景色に釘付けだ。
僕が小学生だった頃、共働きの両親の予定が合うときにたまに車で旅行に連れていってくれた。夏休み、冬休み、春休みのような長期連休でないと両親は都合を合わせられないくらいの多忙さで、ただの土日にはできなかった旅行を重大イベントとして僕はいつも心待ちにしていた。旅行といってもいつも隣県のペンションや小さなホテルであったが、この時も車の窓から見える景色が新鮮で、ずっと外を見ていた気がした。
つまりは、基本的にお出掛けをするのは好きなタイプだったと、ふと思い出す。
今では土日は家でゴロゴロして、漫画やゲームをする毎日だったので、休日に出かけていることも何れだけ振りだろう?と自問自答していると、今度は富士山が見えた。
既に飛行機の高度は富士山をゆうに超えており、真っ白に雪化粧した富士山が小さく見えた。
「そういえば僕って旅行好きだったっけ。こうやって新しい土地の景色を眺めるのが大好きだったなぁ」
漫画を読んだりゲームをしたりせず、1人でぼーっとする時間によって、僕は過去の色々な自分のことを思い出すきっかけになっていることに気づいた。
「ひとりで旅行に出かけるのも悪くないな。“修行“という名前が相応しく無いくらい、この旅行、楽しいかもしれない」
また僕は独り言を呟いた。
隣に座る男性は既に眠りについているようで、機内も静かでエンジン音だけが僕の耳に入ってくる。
この修行では自分の過去を見つめ直し、今後に向かって何かを考えるきっかけになりそうだ。僕はふと思った。
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