陰キャでオタクな修行僧とキャビンアテンダント

藤咲レン

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会社編(1)

僕の日常(1)

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僕が勤めているのは電気製品を製造するメーカーだ。中途社員として入社し、既に8年目になる。最初に勤めた会社はブラックで有名な会社だったようで、わずか数年で退職した。しかし、今の会社に入れたのは、ブラック企業ではありつつ、早く帰りたいという一心で開発した業務効率化ソフトウエアなどの業務改革の成果を今の部長が高く評価してもらったおかげかもしれない。ただ、外勤ではなく内勤として外勤としてバリバリと働く営業部隊をサポートする仕事をしている。実際のところは前職で開発した業務効率化ソフトを生かすことはなく、既に導入されているシステムが優秀であることから、僕は部内のIT管理や資料作成などのいわゆるTHE内勤の業務を担当している。僕自身、仕事をバリバリとやるタイプでは無いので、言われたことを粛々とこなすタイプだ。なので、今の仕事が向いていると思ってあっと言う間に8年目になった。

会社自体はBtoBのビジネスを手がけていることから、あまり知名度はない。地元に暮らす両親に会社名を伝えたところ、「そんな会社は聞いたことないぞ」と言われたほどだ。しかし、ニッチな分野で世界シェアを握っており、案外会社の業績は右肩上がりで好調だ。そのため、給与は人並みではあるが賞与は同世代の会社員よりも多くもらっていた。そのため、趣味らしい趣味を持っていない僕は修行のお金を捻出できたという訳だ。

また、世界シェアを持っていることで、営業部門は頻繁に海外の顧客へ出張に行く。部長や管理職になるとビジネスクラスを使用できるが、一般職はエコノミークラスと聞いたことがある。ただ、僕は内勤なので出張はない。顧客への外回りも減速はないが、以前の福岡出張のように営業担当者にアテンドすることはある。いわゆる鞄持ちだ。ただ、僕のグループの顧客は都内のオフィスに集中しており、出張することは皆無だった。


修行の翌週の月曜日の朝、修行の疲れは日曜日で解消できたので、いつも通り家を出る。電車はもちろん座れることはない。僕は好きな音楽を聴きながら、スマホニュースを斜め読みして通勤時間を始終過ごしている。時にはSNSで友人が何をしているのか、近況を確認することもある。たまに結婚報告や出産報告を見ると、僕もそろそろ結婚しないとなぁと思う。ただ、年齢=彼女いない歴の僕にはハードルが高い。そんなどうでも良いことを考えていると、あっという間に会社のある最寄駅に到着する。
オフィスは自社ビルではないものの、比較的大きなビルに入居しており、朝にビルのコンビニでお昼ご飯を買って出社するのが僕の日課だ。
出社するとまずはPCでメールのチェック。顧客からのメールは大体CCで僕が入れられているが、自分からは動かない。外勤の営業担当者の指示をもらって動くことにしている。ただ、予め情報を頭に入れておいて、すぐ動けるようにしておいた方が良いことはブラック企業に勤めたことで理解した。

そして、しばらくして朝礼が始まる。営業部は以前にラウンジに招待してくださった近藤部長が率いている。僕が入社してから部長の立場は変わっていない。それだけ会社の経営層から信頼されているのかと僕は理解している。

全体朝礼が終わると、各チームに分かれてのミーティングが始まる。僕のチームは総勢10名で内勤は僕ともう1人鈴木さんの2名で外勤のスタッフをサポートしている。鈴木さんは典型的な思ったことをズバズバという人で既に結婚もされてお子さんもいる。そのため、僕と違って定時には帰ってしまうことが多い。しかし、仕事の質はとても高く、以前はこの会社で外勤として営業成績上位だったという話を聞いている。年はもうすぐ40歳ということだが、見た目は若々しく30歳前後にも見えると評判だ。

僕が鈴木さんに一瞬だけ恋心を持ったことはあった。それは既婚と知る前だ。入社直後に色々と指導してくださったのが鈴木さんだったからだ。女性に年齢を聞けないのは当然のマナーだったので、入社直後のOJTではみっちり鈴木さんからこの会社のイロハを教わった。しかし、指導は厳しく、スピードと質の両方を求められる指導だった。ただ、僕にとっては論理的にビシビシと言ってくださる鈴木さんが今まで出会ったどの女性よりも魅力的に思えたのだ。

ただ、修行中に感じた“稲妻に打たれた感覚“という一目惚れではなかったのは事実だ。
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