陰キャでオタクな修行僧とキャビンアテンダント

藤咲レン

文字の大きさ
34 / 51
会社編(1)

僕の日常(3)

しおりを挟む
翌朝、僕の歓迎会に参加してくださった方々に挨拶をして回った。

「昨日は歓迎会を開いて頂いてありがとうございました」

どの人も昨日とは打って変わって仕事モードに入っており、軽く会話を交わす程度であった。しかし、鈴木さんだけは違った。

「ねぇ、山田くんは年齢=彼女いない歴って聞いたんだけど、それホント?」
「えぇ!?なんですか急に!」
「今朝、リーダーからお願いされたのよ。山田くんに良い出会いを紹介してあげなさいって。それで、本当かどうか本人に一応確認したかった訳」

鈴木さんは腕組みしながら、僕の顔をじっと見つめてくる。

僕は昨夜の話、つまり鈴木さんに相談するようにというリーダーの話は冗談かと思って「わかりました」と回答をしたが、まさか本当に鈴木さんの耳に入るとは思わなかった。

「まぁ、本当ではありますけど、今は特に出会いを求めているわけでは無いですし、僕は1人の生活を楽しんでいますから、今のところは恋愛相談はしないですよ」

僕は鈴木さんに対して言い切った。

すると、鈴木さんは、
「ふ~ん、それで良いんだ。山田くんが困っているなら、独身の女友達でも紹介しようと思ったのに。私、こう見えて顔が広いのよ」

僕は急に彼女ができるかもしれないという興奮を抑えつけるのに必死だった。仮に鈴木さんに紹介を受けたところで、昨夜の飲み会で言われたように、僕には恋愛耐性ができていない。しかも休日の過ごし方もゲームや漫画を読んでばかりでデートに行けるような服すら持っていない。食事もいつも近所のファストフード店か牛丼チェーンで済ませている。今紹介を受けても棒に振るだけだ。そう思った僕は、“今は“鈴木さんの申し出を断ることにした。

「いやー、でも、僕って恋愛体質じゃないので、鈴木さんに紹介されても彼女を幸せにできる自信がないですから。紹介は経験を積んでからというか、もっとその気になってからというか・・・」

すると鈴木さんが突然僕に肩を回してきた。

「ねぇ、山田くん。その恋愛体質じゃないとか、彼女を幸せにできないとか、いつになったら現実を見るの?このままじゃ一生、恋人なんてできっこないわよ?」

しばらく僕は鈴木さんと近い距離で見つめあった状態になり、無言のまま
数秒が経過した時、鈴木さんが口を開いた。

そして、僕の肩から手を離す。

「まぁいいわ。山田くんがその気になったら声を掛けなさいよね。アドバイスでも相談でも紹介でもなんでもしてあげるから。山田くんはダイヤの原石なんだからね?」


僕がダイヤの原石・・・?


僕は鈴木さんが何を言っているのかさっぱり分からなかった。

ただ、これ以上、鈴木さんから彼女に関する話をされることは無かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

自習室の机の下で。

カゲ
恋愛
とある自習室の机の下での話。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

女子ばっかりの中で孤軍奮闘のユウトくん

菊宮える
恋愛
高校生ユウトが始めたバイト、そこは女子ばかりの一見ハーレム?な店だったが、その中身は男子の思い描くモノとはぜ~んぜん違っていた?? その違いは読んで頂ければ、だんだん判ってきちゃうかもですよ~(*^-^*)

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...