陰キャでオタクな修行僧とキャビンアテンダント

修行2日目

6フライト目：那覇→羽田（１）

今回はビジネスクラスで食事と飲酒を済ませているので、腹は空いていない。そのため、空港内の食堂で昼食は済ませず、そのまま次の折り返し便のゲート２２番の前にあるベンチで待つことにした。



僕がベンチに座ったころには既に折り返し便の搭乗客がちらほらと腰かけていた。
そのため、一番の特等席である機体が見える窓側座席は既に子供のいる家族連れが使用しており、僕はその後ろの席に座った。

前の家族連れの会話が自然と耳に入ってくるので、僕自身、結婚をまだしていないことをしばし考えさせられた。



前のベンチに座る家族連れの男性、つまり夫はおそらく僕と同い年くらいの30代半ばと思われる。その人の妻はもう少し若く20代後半あたりか。僕は”人を見る目がない”とよく言われるので、年齢を当てるのも苦手ではあるが、だいたいの年齢くらいは合っているものだ。

特に20代と30代では顔のしわや肌質が違ってくることは身を以って体験している。

この家族には男の子と女の子の計二人の子供がいるので、飛行機に乗って旅行するのは大変だろうなぁと余計なお世話であるが想像してしまう。それならどうしてざわざわ旅行に行くのだろうか。仮に僕が結婚しているならば、きっと旅行をしたとしても来るまで行ける範囲にするだろうと思った。ただ、きっと沖縄は奥さんがしきりに子供と飛行機が一緒に写るよう最新型のスマホで撮っているので、いわゆる”インスタ映え”を狙っているのではないかと感じる。

確かに、子供と飛行機の両方が写るのは、僕も写真が映えると思う。ただ、旦那さんは必死に子供たちの機嫌を取り、奥さんは写真を撮ることに躍起になり、これが旅行なのかと思ってしまう。もちろん、僕は修行僧という身分なので、その夫婦にとっては単に飛行機に乗るだけで現地を観光しないなんて無駄な移動と考えられるだろうとも思った。

つまり、価値観というのは人それぞれなんだ。

仮に結婚した場合、妻は観光したい。夫は修行をしたいとなると、一見すると価値観が似ているように思われるが、実際のところは全く異なる。

そういった価値観の違いを乗り越えて、結婚や出産を経ていることを考えると、僕には結婚する自信がないと思ったのだった。