コールドムーン〜妖精寫真と月の書舗〜

無明

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序幕・月を犯す夢、或いはガラテアの眼球

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 なんでだ。

 なんでいつもこうなるのだろう。

 僕は、己しか愛していないというのに。

 なんでいつも結局、こうなるのだろう。

 僕は、己しか愛していないのに、結局いつも破滅してしまう。

 僕は、いつも結局、己しか愛していないというのに。

 一体、何がそんなに、欲しいというのだろうか。

 自身しか愛してないならば、己だけで完結してしまえばよい。

 どうせ、怨みしか知らぬ生き物だ。

 結局、怨みしか逃れられないんだ。

 なぜ、怨みが、こんなに、烈しいのだろう。

 幾ら怨んだって、こんなこと、どうしようもない事なのに。

 

 復讐したいのか。

 独裁したいのか。

 排斥したいのか。

 いつも思っている。

 

 僕だけが、真剣に悩んだところで、それは、己の中だけの真剣な悩みであり、世界に置いては些末な事だと、理解しているというのに。

 

 本当に……。

 本当に、なんでこの難癖は、治らないのであろうか。

 

 完結していたい。

 終わらない物語を、ぐるぐると、永遠と、迷宮のように、愉しんでいたい。

 そこから、脱出したくはない。

 終わらない物語に、固執している。

 

 だのに、その力がない。

 己を愛する力が、己にはない。

 憎い。

 怨みだらけである。

 

 なぜ、こんなにも、愛せないのだろう?

 なぜ、こんなにも、魔性なのだろう?

 いつも悩んでいる。

 

 その悩みで、世界を、殺したいと願う。

 

 しかし、それはできない。

 そして、別にそれは本質的な望みではない。

 

 僕は要は、根本的には、僕の中に完結してたいのだ。

 

 永久機関のように。

 近親相姦のように。

 平和主義者である。

 

 しかし、結局己も、周りも、『知り得る範疇』しか、知らないというのが、哀しみであるように思う。

 

 魅力よりも。

 愛着を選択している。

 否。

 もはや、愛着ではない。

 妄執と云える。

 

 『憑いている』

 

 そう云うべきか。

 憑かれている。

 存在しない何かに。

 彼女であろうか。

 いつも、僕の中で、死んでいる、最愛の人。

 人形の眼球のような人。

美しい。

 彼女は美しい。

 永遠に彼女の傍にいたい。

 僕は、ただそれだけなのだ。

 彼女に憑依されていたい。

 それだけなのだ。

 永遠に、彼女の慈愛の中で、孕み続けていたい。

 近親相姦のように、愛し合っていたい。

 外なる世界などいらない。

 羊水の揺蕩う海面の中で。

 彼女と遊んでいたいのだ。

 ただ、それだけなのだ。

 

 或る日の夢の中だった。何処かの深い森の、塗装の剥げた古城で、僕は彼女の為に、千人の生まれたばかりの赤ん坊を、串刺しにして、その血潮を浴びて、犯して、殺して、晒して、愉しんでいた。

 

 貴公子の僕は、男でありながら、まるで母親のように、彼女を、愛撫し続けていた。今でも実在しない子宮の卵子で、彼女を妊娠する事を夢想していた。そして、生まれた美しい彼女と、母子相姦をする事を考えていた。

 

 素晴らしい。

 きっと、最高の幸福に満たされるに違いない。

 子宮の中の彼女と性交する。

 とてもロマンチックだ。

 感動で泣きそうなくらいだ。

 

 世界が終わっても、二人だけがいればいい。

 

 他人なんか、全て消えてしまえ。

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