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一章 始まりの道筋
神の座
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「やぁ、君がくるのを待ってたよ」
若い男、少年の様な声に思わず顔を上げると、そこは何時ぞやにみた白い部屋だった。
違うのは大樹はなく、辺り一面に武具が山のようにあることと、目の前には僕と同じようなチュニックを着た少年がいる事。見た目的には僕より年下っぽいけど、この場所にいるのだから普通の存在ではないだろう。
「その通り。僕はこの世界の力にまつわる神、ベリエル。ここはまぁ―― 僕の個室みたいなもんだよ」
僕の心を見透かしたように告げてくる。一体今更なんの用だろうか。
「それにはちょっと理由があるのさ。君に与えた種はちょっと特殊だから」
「変なのを埋め込んだとかそういうのじゃないよね」
「まさか、世界の命運を左右するといっても多言じゃないんだから、ちゃんとしたもの。それも一点ものだ」
その言葉にそっと胸を撫でおろす。生まれてから今までこんだけ散々だったんだから、それこそちゃんとしたものじゃないと困る。
「何に生まれるかはランダムだよって、ちゃんと言ってただろ? 蟲とかじゃないだけ良かったって思ってほしいな。」
それはそっちも同じなんじゃないの? 世界を命運するのが蟲で、生まれた瞬間プチってつぶされましたーじゃお笑いにもなりはしない。
「そうそう、ちゃんと人間として生まれてくれたからホッとしたよ。僕も力を託す身としては蟲が力を振り回す世にならなくて一安心さ」
今気づいたけれど、どうにも心が読まれているらしい。考えていることが駄々洩れだ。プライバシーはどうなってるんだ神。そもそも一切関与しないとかいってたんじゃないのか神。もうちょっと異世界転生に夢見せてほしかったぞ神。
「君、結構肝が据わってるね…… 普通の人は種の祝福でここにくると頭を垂れるもんだけど」
「僕の頭にどんだけ価値があるのさ。それに、最果ての園庭の時と全然しゃべりが違うのはなんで?」
「僕はあの時一言しかしゃべってないし、気楽な方が君にとってもいいんじゃない?」
そりゃそうだ。むしろ神様然として話されてたらちょっと怒ってたかも。
「それに関与しないって言ったのも、種を腐らせないためさ。助かるってわかりきってる苦難なんて苦難にならないでしょ。希望は薬じゃない、毒なんだよ」
それはそうとしても、この世界自体、僕の扱いが雑だよね。しかもこの自称神様なんて僕と喋りが被ってるし。そこら辺の武器を投げつけるくらい許されるんじゃなかろうか。
「うーん、最初のイメージよりも大分じゃじゃ馬より…… ああ、なんでもないよ」
しっかり聞こえてますー。人をとっ捕まえてじゃじゃ馬とはよく言ってくれたもんだ。そっちがそうなら本当にこの金槌でも――
「ワー 可憐デ有能ナ子ガ来テクレテウレシイナー」
「すっっっごい態とらしい」
「…… 要件を済ませよっか」
僕の冷たい視線に耐えられなくなったらしい。少年、力の神様とやらがどこか諦めた表情で手を振るう。それだけで辺り一面に広がっていた武具の山が消え去り、僕の手元に光の剣が残る。
「その剣は君の種に与える僕からの祝福だよ。さ、名付けて」
「えぇ…… 急に言われても…… 剣の名前なんてそんなに知らないし、ほにゃららの剣とかでいいの?」
「流石にほにゃららはやめてほしいかな。その力は君のイメージに左右されるからあやふやな名前だと何にもならないんだよ。ほら、君の世界にあった伝説の武器とかそういうのの名前でいいからさ、なんかないの?」
なんかないの、と言われても女の子に武器の名前を問うなんて野暮じゃないかな。どうせならもっと分かりやすいのをくれても良かったのに。
「神から与えられた神器とも言える力を前にそんな面倒くさそうな顔するのは君が初めてだよ。」
どこか呆れた声で自称神様がぼやく。これって神器になるんだ。へー、すごーい。
「すごい力なんだよ本当に…… で、名前は?」
「うーん、じゃあ光の剣で」
「そんな安直な…… 仕方ない、ちょっと弄って光の剣にでもしておこうか。 とりあえずこれで僕の要件は終わり。そうそう、君の目的は当面、僕以外の神から同じように力をもらうことだから。頑張ってねー」
「ちょっと待ってそれって――」
「ばいばーい」
一編に済ませられないの、とかそんな大事な事をついでみたいに言うな、とか言う前に一方的に告げられ、再びごおんと鐘が鳴る。
ハッとして顔を上げるとそこには薄らと赤く輝く水晶と、にこやかな顔をしたフィリーネさんが居る教会の一室に戻ってきていた。
「貴方には剣ーー力を司る神であるベリエル様のご加護をその種に宿しているようですね。力の加護は万種の加護とも呼ばれる様に、ありとあらゆる方面に期待ができるでしょう」
「あまり、実感はないんですけど。そういう物ですか?」
だってテンプレみたいにぺかーって明るく光ったり、水晶玉が壊れたりとか全然してないんだもん。
そんな気持ちを込めた僕の怪訝そうな顔に彼女がくすりと笑う。
「種は飽くまでも種でしかありません。全ては自らの意思と神の御加護により芽吹きの時を迎えるのです。私もまた慈悲の種を戴く身。お互い頑張りましょう、ね?」
彼女の顔をみていると頑張る気にはなるけど、それ以上に頑張る理由ができた。それはーー 兎に角もう一度神様に会って文句を言う!
そう心に決めると、フィリーネさんに案内されながら聖堂で待つスティーグの下へ向かった。下へ向かった。
若い男、少年の様な声に思わず顔を上げると、そこは何時ぞやにみた白い部屋だった。
違うのは大樹はなく、辺り一面に武具が山のようにあることと、目の前には僕と同じようなチュニックを着た少年がいる事。見た目的には僕より年下っぽいけど、この場所にいるのだから普通の存在ではないだろう。
「その通り。僕はこの世界の力にまつわる神、ベリエル。ここはまぁ―― 僕の個室みたいなもんだよ」
僕の心を見透かしたように告げてくる。一体今更なんの用だろうか。
「それにはちょっと理由があるのさ。君に与えた種はちょっと特殊だから」
「変なのを埋め込んだとかそういうのじゃないよね」
「まさか、世界の命運を左右するといっても多言じゃないんだから、ちゃんとしたもの。それも一点ものだ」
その言葉にそっと胸を撫でおろす。生まれてから今までこんだけ散々だったんだから、それこそちゃんとしたものじゃないと困る。
「何に生まれるかはランダムだよって、ちゃんと言ってただろ? 蟲とかじゃないだけ良かったって思ってほしいな。」
それはそっちも同じなんじゃないの? 世界を命運するのが蟲で、生まれた瞬間プチってつぶされましたーじゃお笑いにもなりはしない。
「そうそう、ちゃんと人間として生まれてくれたからホッとしたよ。僕も力を託す身としては蟲が力を振り回す世にならなくて一安心さ」
今気づいたけれど、どうにも心が読まれているらしい。考えていることが駄々洩れだ。プライバシーはどうなってるんだ神。そもそも一切関与しないとかいってたんじゃないのか神。もうちょっと異世界転生に夢見せてほしかったぞ神。
「君、結構肝が据わってるね…… 普通の人は種の祝福でここにくると頭を垂れるもんだけど」
「僕の頭にどんだけ価値があるのさ。それに、最果ての園庭の時と全然しゃべりが違うのはなんで?」
「僕はあの時一言しかしゃべってないし、気楽な方が君にとってもいいんじゃない?」
そりゃそうだ。むしろ神様然として話されてたらちょっと怒ってたかも。
「それに関与しないって言ったのも、種を腐らせないためさ。助かるってわかりきってる苦難なんて苦難にならないでしょ。希望は薬じゃない、毒なんだよ」
それはそうとしても、この世界自体、僕の扱いが雑だよね。しかもこの自称神様なんて僕と喋りが被ってるし。そこら辺の武器を投げつけるくらい許されるんじゃなかろうか。
「うーん、最初のイメージよりも大分じゃじゃ馬より…… ああ、なんでもないよ」
しっかり聞こえてますー。人をとっ捕まえてじゃじゃ馬とはよく言ってくれたもんだ。そっちがそうなら本当にこの金槌でも――
「ワー 可憐デ有能ナ子ガ来テクレテウレシイナー」
「すっっっごい態とらしい」
「…… 要件を済ませよっか」
僕の冷たい視線に耐えられなくなったらしい。少年、力の神様とやらがどこか諦めた表情で手を振るう。それだけで辺り一面に広がっていた武具の山が消え去り、僕の手元に光の剣が残る。
「その剣は君の種に与える僕からの祝福だよ。さ、名付けて」
「えぇ…… 急に言われても…… 剣の名前なんてそんなに知らないし、ほにゃららの剣とかでいいの?」
「流石にほにゃららはやめてほしいかな。その力は君のイメージに左右されるからあやふやな名前だと何にもならないんだよ。ほら、君の世界にあった伝説の武器とかそういうのの名前でいいからさ、なんかないの?」
なんかないの、と言われても女の子に武器の名前を問うなんて野暮じゃないかな。どうせならもっと分かりやすいのをくれても良かったのに。
「神から与えられた神器とも言える力を前にそんな面倒くさそうな顔するのは君が初めてだよ。」
どこか呆れた声で自称神様がぼやく。これって神器になるんだ。へー、すごーい。
「すごい力なんだよ本当に…… で、名前は?」
「うーん、じゃあ光の剣で」
「そんな安直な…… 仕方ない、ちょっと弄って光の剣にでもしておこうか。 とりあえずこれで僕の要件は終わり。そうそう、君の目的は当面、僕以外の神から同じように力をもらうことだから。頑張ってねー」
「ちょっと待ってそれって――」
「ばいばーい」
一編に済ませられないの、とかそんな大事な事をついでみたいに言うな、とか言う前に一方的に告げられ、再びごおんと鐘が鳴る。
ハッとして顔を上げるとそこには薄らと赤く輝く水晶と、にこやかな顔をしたフィリーネさんが居る教会の一室に戻ってきていた。
「貴方には剣ーー力を司る神であるベリエル様のご加護をその種に宿しているようですね。力の加護は万種の加護とも呼ばれる様に、ありとあらゆる方面に期待ができるでしょう」
「あまり、実感はないんですけど。そういう物ですか?」
だってテンプレみたいにぺかーって明るく光ったり、水晶玉が壊れたりとか全然してないんだもん。
そんな気持ちを込めた僕の怪訝そうな顔に彼女がくすりと笑う。
「種は飽くまでも種でしかありません。全ては自らの意思と神の御加護により芽吹きの時を迎えるのです。私もまた慈悲の種を戴く身。お互い頑張りましょう、ね?」
彼女の顔をみていると頑張る気にはなるけど、それ以上に頑張る理由ができた。それはーー 兎に角もう一度神様に会って文句を言う!
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