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三章 王都にて
夜
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「うーん、冒険者の仲間ねぇ」
夜、食事も終えた僕らは水浴びを済ませて、宿舎に戻ってきていた。
寝るまでの話題は色々あったが、ここに来た目的を相談してみると、やはりというか二人の返答は渋いものだった。
「私は兎も角、タリヤは目的があるもんね」
そう答えるミュールも、命の危険が少ないせいか、冒険者よりかは魔法使いとして雇われる方を選びたがっていた。
それも出来れば、好きな子の家に勤めたいとか。いやー、青春してるね。
「明日、他の友達に聞いてみるね」
ミュールは何だかんだで顔が広いらしい。先程までもぼくは魔法クラスの人たちの相関関係とか色々教えて貰っていた。
対してタリヤはあまり口が上手な方ではなく、また人見知りも少しあるようだった。
僕と話せたのはたまたまあいだにミュールの存在があったからで、武術クラスでもその強さも相まって少し浮いてしまっているらしい。
「ありがと、寄宿舎って聞いてちょっと緊張したけど、無事に過ごせそうでよかった」
「メルちゃんならきっと仲間を見つけられるよ」
いつの間にかあだ名までついていた。今まで友達らしい友達っていなかったから、ちょっと嬉しいかも。
「それで、神様の縁を探すんでしょ? 王都の教会には行った?」
「ううん、此処には学院があるとしか聞いてなかったから、何処にもいってないよ」
僕の答えにミュールが音を立てて起き上がる。
上の段のベッドからは見えないけど、何か思いついたのだろうか。
「じゃあ今度の休みの日に、例の男の子と行って来なよ」
「だから、アランとはただの仲間だって」
「うんうん、仲間から生まれる新たな感情、青春ね~」
こっちの話は聞いてくれやしない。本当にそんなのじゃないんだけど。
「そんなメルちゃんには秘蔵のコレをお貸ししましょう」
ミュールが自分の荷物をゴソゴソ漁る。
「イメチェンドキドキ作戦~」
体ごと下を覗き込めば、出てきたのは一枚の薄い黄色のワンピースだった。ただし、その丈は明らかに短く、しかも胸元も
大きく開いている。
「メルちゃんのお洋服、みーんなおとなし目でしょ? コレで彼の視線も釘付けだよ!」
うん、言いたい事はわかる。だけど、これには一番の大きい問題がある。
「えーと、ミュール。気にしてくれるのはありがたいんだけど、その服僕が着ると胸のとこスカスカになると思う……」
「……あっ」
ミュールが僕を見上げて、絶句する。いやいや、ない訳じゃないんだよ? ない訳じゃ。そりゃ今まで出会った人の平均値よかは下かもしれないけども。
ただ、どうやったところで埋める事の出来ない格差があるだけなのだ。
そりゃ詰め物とかすればいけるだろうけど、何か空しいしそこまでする必要があるかどうなのか……
「じゃ、じゃあメルちゃんの服をアレンジして視線をかっさらおう!」
そこで僕の服を弄る話になっても困るんだけど、とは思ったけれども、彼女曰くそういう手先は器用な方らしいのと、あまりの押しの強さに僕は早々に抵抗をあきらめた。
「ほどほどにしてね」
最早言える言葉はそれだけだ。あとはアランにも生贄になってもらおう。
「程々じゃだめ! 思いっきりイメチェンして、彼をドキドキさせないと!」
頼むから僕の話を聞いてほしいなー。
そしてこういう話になるとタニヤは静かだ。自分が標的にならないようにする処世術なのか、単純に興味無いのかわからないけど。
「……メルタ、頑張って」
それはどういう意味の応援なのだろうか。こちらは僕の真下だから、姿を見ることはできない。
「タニヤはそういう話はないの?」
ちょっと恨めしいので少しパスを投げてみる。これでお相手がいれば標的も変わるはず。
「……私は、強い人が好きだから」
ほうほう、でも今の彼女を凌ぐ実力の持ち主ってだけでなかなか大変そうな気もするけど。
「……なんなら、無理矢理押し倒せる位の人が良い」
わー、爆弾発言。見た目からは想像できない過激さだ。
でも押し倒す…… っていうとどうしてもアランのやってきた事が脳裏に蘇る。
うわわわ、なんで僕までそんな想像してんだろ。なしなし、こんなのなし!
あれは飽くまでも僕がからかいすぎたから忠告の意味でされたんであって、そんな気はなかったはずだ。
まぁ何にしてもあれから気不味さがお互いにあるから、週末に一緒にでかけてリフレッシュするのはいいかもしれない。勿論ミュールの期待していることはなしでだ。
「タニヤの趣味嗜好はおいといて、メルちゃんは明日服の改造一緒にがんばろうね~」
ミュールに玩具にされるのも、この際我慢しておこう。一度やっておけばしばらくは満足するだろうし。
いっその事すべてを諦めて楽しみにしてしまうのもありだろう。久々に冒険抜きで街をで歩けるとなれば、色々見て回れるだろうし。当然お金はないから買い物はできないけれど、それでもちょっとした食事できるくらいのお金は持ってるし。教会までいってちょっくら神様に文句言いに行きがてら、その日を十二分に楽しむことにしよう。
夜、食事も終えた僕らは水浴びを済ませて、宿舎に戻ってきていた。
寝るまでの話題は色々あったが、ここに来た目的を相談してみると、やはりというか二人の返答は渋いものだった。
「私は兎も角、タリヤは目的があるもんね」
そう答えるミュールも、命の危険が少ないせいか、冒険者よりかは魔法使いとして雇われる方を選びたがっていた。
それも出来れば、好きな子の家に勤めたいとか。いやー、青春してるね。
「明日、他の友達に聞いてみるね」
ミュールは何だかんだで顔が広いらしい。先程までもぼくは魔法クラスの人たちの相関関係とか色々教えて貰っていた。
対してタリヤはあまり口が上手な方ではなく、また人見知りも少しあるようだった。
僕と話せたのはたまたまあいだにミュールの存在があったからで、武術クラスでもその強さも相まって少し浮いてしまっているらしい。
「ありがと、寄宿舎って聞いてちょっと緊張したけど、無事に過ごせそうでよかった」
「メルちゃんならきっと仲間を見つけられるよ」
いつの間にかあだ名までついていた。今まで友達らしい友達っていなかったから、ちょっと嬉しいかも。
「それで、神様の縁を探すんでしょ? 王都の教会には行った?」
「ううん、此処には学院があるとしか聞いてなかったから、何処にもいってないよ」
僕の答えにミュールが音を立てて起き上がる。
上の段のベッドからは見えないけど、何か思いついたのだろうか。
「じゃあ今度の休みの日に、例の男の子と行って来なよ」
「だから、アランとはただの仲間だって」
「うんうん、仲間から生まれる新たな感情、青春ね~」
こっちの話は聞いてくれやしない。本当にそんなのじゃないんだけど。
「そんなメルちゃんには秘蔵のコレをお貸ししましょう」
ミュールが自分の荷物をゴソゴソ漁る。
「イメチェンドキドキ作戦~」
体ごと下を覗き込めば、出てきたのは一枚の薄い黄色のワンピースだった。ただし、その丈は明らかに短く、しかも胸元も
大きく開いている。
「メルちゃんのお洋服、みーんなおとなし目でしょ? コレで彼の視線も釘付けだよ!」
うん、言いたい事はわかる。だけど、これには一番の大きい問題がある。
「えーと、ミュール。気にしてくれるのはありがたいんだけど、その服僕が着ると胸のとこスカスカになると思う……」
「……あっ」
ミュールが僕を見上げて、絶句する。いやいや、ない訳じゃないんだよ? ない訳じゃ。そりゃ今まで出会った人の平均値よかは下かもしれないけども。
ただ、どうやったところで埋める事の出来ない格差があるだけなのだ。
そりゃ詰め物とかすればいけるだろうけど、何か空しいしそこまでする必要があるかどうなのか……
「じゃ、じゃあメルちゃんの服をアレンジして視線をかっさらおう!」
そこで僕の服を弄る話になっても困るんだけど、とは思ったけれども、彼女曰くそういう手先は器用な方らしいのと、あまりの押しの強さに僕は早々に抵抗をあきらめた。
「ほどほどにしてね」
最早言える言葉はそれだけだ。あとはアランにも生贄になってもらおう。
「程々じゃだめ! 思いっきりイメチェンして、彼をドキドキさせないと!」
頼むから僕の話を聞いてほしいなー。
そしてこういう話になるとタニヤは静かだ。自分が標的にならないようにする処世術なのか、単純に興味無いのかわからないけど。
「……メルタ、頑張って」
それはどういう意味の応援なのだろうか。こちらは僕の真下だから、姿を見ることはできない。
「タニヤはそういう話はないの?」
ちょっと恨めしいので少しパスを投げてみる。これでお相手がいれば標的も変わるはず。
「……私は、強い人が好きだから」
ほうほう、でも今の彼女を凌ぐ実力の持ち主ってだけでなかなか大変そうな気もするけど。
「……なんなら、無理矢理押し倒せる位の人が良い」
わー、爆弾発言。見た目からは想像できない過激さだ。
でも押し倒す…… っていうとどうしてもアランのやってきた事が脳裏に蘇る。
うわわわ、なんで僕までそんな想像してんだろ。なしなし、こんなのなし!
あれは飽くまでも僕がからかいすぎたから忠告の意味でされたんであって、そんな気はなかったはずだ。
まぁ何にしてもあれから気不味さがお互いにあるから、週末に一緒にでかけてリフレッシュするのはいいかもしれない。勿論ミュールの期待していることはなしでだ。
「タニヤの趣味嗜好はおいといて、メルちゃんは明日服の改造一緒にがんばろうね~」
ミュールに玩具にされるのも、この際我慢しておこう。一度やっておけばしばらくは満足するだろうし。
いっその事すべてを諦めて楽しみにしてしまうのもありだろう。久々に冒険抜きで街をで歩けるとなれば、色々見て回れるだろうし。当然お金はないから買い物はできないけれど、それでもちょっとした食事できるくらいのお金は持ってるし。教会までいってちょっくら神様に文句言いに行きがてら、その日を十二分に楽しむことにしよう。
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