機械の世界と白い鳥

堕天使あわび

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出会いと旅立ち

少女との出会い

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 モンスター討伐部隊、クワードルの一員であるクオレは、今日も見回りでシェルターの外に来ていた。シェルターというのは、人々の暮らす巨大な建物のことだ。この世界は、かなり技術が発展している。だが、他の生き物の生活を脅かしたせいで自然から怒りを買い、生き物の一部がモンスター化している。そのため、人々は巨大なシェルターで暮らしているのだ。
 クオレは辺りを見回し、何も異常がないことを確認すると、手首につけた通信機器で他の隊員に連絡した。
「こっちは何も異常なしだ。そっちはどうだ?…そうか。分かった。何か異常を見つけたらまた連絡する。また後でな。」
クオレは通信を切ると、ため息を吐いた。その時。手首の通信機器が、いきなり大きな警報音を鳴らし始めた。レーダーはクオレの真上を指している。バッと上を見あげると、空が歪み、時空の裂け目が現れていた。
「…‼︎」
呆然と裂け目を見つめていると、その裂け目から少女が落ちてきたのが見えた。クオレは少女を慌てて受け止めた。
「っと…!」
少女は気を失ってぐったりしている。クオレは少女を背負うと、家まで急いで帰った。

クオレが目を覚ますと、先ほどの少女が家のベッドに座っていた。家に着いた後、少女をベッドに寝かせて看病したのだが、そのまま寝てしまったようだ。
「…悪い。寝てたみたいだ。起きたんだな。気分悪かったりしないか?」
少女は戸惑っているようだ。
「聞こえてるか?」
少女は頷いた。
「…もしかして、喋れないのか?」
また、頷いた。
「…そうか…。…じゃあ、とりあえずこれに文字書いて会話してくれ。」
クオレは少女にメモ帳とペンを渡した。
『助けてくれたんですか?』
「ああ。お前は、時空の裂け目から落ちてきたんだ。…お前、名前は?」
『ユナです』
「そうか。教えてくれてありがとな。俺はクオレだ。好きに呼んでくれていい。」
『じゃあ普通にクオレさんと呼ばせていただきます』
「ああ。…敬語なんかわざわざつけなくて平気だ。」
ユナは少し考えた後、紙に文字を書いた。
『ありがとう』
「どういたしまして。」
『なんで助けてくれたの?』
「あー…。…困ってるやつは放っておけないだろ。」
『優しいんだね』
「…そんなことない。」
『あるよ』
「ない」
『ある』
「ない」
『ある』
「ないって言ってんだろ」
「!」
「…悪い、つい言い方がきつくなった。」
『別に平気だよ』
「…ありがとな。」
『うん』
クオレがユナの頭を撫でようとしたその時。パンッと音がして、窓ガラスに丸く穴が空いた。それが何かすぐに察したクオレは、ユナを抱えて床に倒れ込んだ。
「…⁉︎」
「大丈夫か?」
『うん。どうしたの?』
「…銃弾が飛んできた。」
「‼︎」
「お前、何か狙われるような心当たり、あるか?」
ユナはぶんぶんと首を振った。
「そうか…。…とりあえず、今日は寝るぞ。」
『寝て大丈夫なの⁉︎』
「床で寝れば平気だろ。」
「…。」
「嫌か?」
『死ぬよりいい!』
「…そうか。じゃあ寝るぞ。おやすみ。」
『おやすみ』
クオレはあっという間に寝てしまったが、ユナは緊張と恐怖でなかなか眠れなかった。

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