機械の世界と白い鳥

堕天使あわび

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一の島

亀裂と和解

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 「もういい加減に泣きやめ。な?」
「…じゃあ、もっと自分を大事にしてよ!」
「…。」
「…なんで黙るの?」
「…。」
「ねえ!」
「…悪い。」
「…もういい!!クオレなんか知らない!!」
「あ…」
シクルは別の部屋に閉じこもってしまった。
「…。」
『謝らないの?』
「…分かってる。」
「ならさっさと謝ってこい。」
「…ああ。」

クオレは、シクルのいる部屋のドアをノックした。返事はない。
「…その、さっきは悪かった。」
「…。」
「…でも、俺はもっとモンスターを倒して、強くならなきゃならない。…だから、多分、自分は大事にできないと思う。…ごめんな。」
「…。…なんでそんなに強さにこだわるの?」
「!それは…。…言えない。」
「なんで?なんで言えないの?」
「…。」
「…そうやって隠し事ばっかりで、何も教えてくれないじゃん!!そんなクオレなんか、大っ嫌い!!」
「…!!…。…そうか…。」
「…。」

「で、どうだったんだ?」
「…大嫌い。そう言われた。」
「は?なんでだよ?」
「…俺はもっとモンスターを倒して、強くならなきゃならない。…だから、多分、自分は大事にできない。そう言ったんだ。そうしたら、なんでそんなに強さにこだわるのか聞かれて、言えないって答えたら、言われた。」
「…。」
『どうして言えなかったの?』
「それが言えないから困ってるんだろ。」
「…。」
「…とりあえず、根気良く謝るしかないな。」
「…分かった。」

しばらくして、シクルが部屋から出てきた。
「…その、シクル、ごめんな。」
「…。…あ、フレイヤ、僕お腹空いちゃったんだけど、何かあるかな?」
「…。」
「…えっと、パンでいいか?」
「うん!」
「なあ…」
「じゃあ、いただきます!」
「…。」
するとクオレは、貸してもらっている部屋に閉じこもってしまった。
「…。…シクル、これでいいのか?」
「え…?」
「このままじゃ、もうクオレは口を聞いてくれないぞ。」
「…うん…。」
「そんなの、嫌じゃないのか?」
「…嫌だよ…。…でも、もう大嫌いって言っちゃったんだもん…。」
「なんだ、そんなことか。多分、クオレはそんなことより、無視されたことを気にしてるぞ。」
「…そっか…。」
「ほら、さっさと謝ってこい。」
「…うん。」

クオレは、一人で部屋に閉じこもっていた。すると、上から声がした。
「あんた、何やってんの?」
「!…誰だ?」
その方向を見ると、窓に白い…カラス?が止まっていた。いや白いからカラスではないのか。
「やだなあ、おいらはれっきとしたカラスさ。」
「…思考を読んだのか?カラスがなんで喋るんだ?というかなんで白いんだ?」
「えっと、一つずつ説明すると、おいらは特別なカラスだから思考を読めるし、喋るんだ。で、突然変異かなんかで、白くなって生まれてきた。…こんなにカラスカラス言ってると、ゲシュタルト崩壊しそうだな~。」
「…。」
「で、あんたは何やってんの?」
「…。…仲間と喧嘩したんだ。」
「へえ…。謝ったのか?」
「ああ。…そうしたら、大嫌いって言われた。」
「あ~、それはキツいな~。」
「…で、完全に無視された。」
「え、そいつ酷くない?」
「そうか?…で、なんでお前はここにきたんだ?名前は?」
「…えっと、おいらはラシェ。…ったく、誰だよ、こんなオシャレな名前つけたやつ…。絶対おいらには似合ってないと思うんだけど…。…で、暇だったから、負のオーラを感じてここに来たんだ。おいらは思考が読めるぶん、人の感情にも敏感なんだ。」
「…そうなのか…。」
「で、あんたの名前は?」
「…俺はクオレだ。仲間はシクルとユナ、フレイヤだ。」
「今喧嘩してんのは?」
「…シクルだ。」
「男?女?多分ユナとフレイヤは女だろうけど、シクルがわかんないな~。」
「…シクルは男で、大体10歳くらいだ。」
「え、あんた何歳?」
「…18だ。」
「うわ~、年下相手で、しかも仲間じゃ強く言えないしな~。…そういえば、喧嘩の原因は?」
「…俺だ。」
「なんて言ったんだ?」
「…自分を大事にしろ、そう言われたから、無理だって答えた。」
「そっか~。…なんか事情があるみたいだし、深くは聞かないよ。」
「…。」
「じゃ、もいっかい謝ってきなよ。」
「…どうせ無視されるだろ。」
「でも、そのシクルってやつ、部屋の前に悲しみのオーラ全開で立ってるけど?」
「!」
クオレがドアを開けると、シクルが思い切り抱きついてきた。
「うわああん!!ごめんなさいー!!大好きだよー!!」
「!…ありがとな。」
「うぅ~…。」
「…俺も悪かった。ごめんな。」
「うん…。…!誰?っていうかなに!?」
「…あ、おいら?おいらは——」
「喋ったああ!?」
「あ~…まあ、普通の反応か…。おいらはラシェ。クオレの友達だ。…あれ?友達だっけ?…まあいいや、よろしく!」
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