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第二襲 災炎嵐龍編
朝焼けの中で ――サンライズ――
しおりを挟む気持ちのいい太陽の明るい光を感じ取り、瞼を開ける。
明るい朝――窓の向こう側の世界で小鳥が復唱するようにさえずり、木には綺麗な淡い桃色の葉っぱがついていた。
「桜……、異世界なのに……」
ふと、意識がはっきりする――昨日は仮面の女と激しく戦った。私のありったけの魔力を使ってしまい、意識を失ってしまったはずだ。ヴェールが上から降ってきたところまで憶えているが、それ以降は……。
もしかして――死んだ!?
通りで日が当たる空間で暖かいと思った。
昔の私なら――こんな明るい空間嫌いだったのに。
しかも、こんなベッドは生まれて初めてだ。木製の暖かみのあるフレームに身体をよく反発するマットレス。布団はふわふわで暖かくていくらでも顔をうずめることが出来る。枕ももふもふのもこもこで毛がある獣の上にいるような感じ。
――この世の天国がベッドにはあった。
この部屋の扉が空くような音がする。
「キリエン、起きてる~?」
私は――生きてた!
ヴェールの声を聞いて安心しながら、布団で頭を覆い隠す。
「いや、起きてるじゃろ!」
「――寝てる」
「喋ったから起きてるのじゃろ! 我、へこんじゃうぞ!」
ヴェールはため息を吐くと、なにやら物が動いた音がする。椅子にでも座ったのだろうか。
「私は今、どこにいる?」
「えっ……? どこってキリエンの部屋じゃよ!」
「――はっーーーー!」
布団から驚いたかのように出ようとすると、ごちんっとヘッドボードに頭を思いっきり打つ。
なんだか星が出たような気がしたから、急いで頭を抑えようとさするもなかなか消えてくれない。
「大丈夫かっ? そんな、驚かなくても……」
頭を抑えながらあらためて部屋を見渡す。明るいライトイエローでまとめたかのような綺麗な空間が広がっていた。
転移する前、おばあちゃんの家なんかザ・木の色みたいな暗い空間だったのに――なんだか、また別の世界に来たみたいで新鮮だ。
「どうした、ニヤけおって。ハイネンとアルムンを巻き込んでギルドにキリエンの部屋を作っていた」
「いつのまに……」
曇りのないヴェールの笑顔を見ると、きっとアルムとハイネは無理矢理働かされていたんだろうなと邪推してしまう。
それに、いつの間に作っていたんだろうか?――今までアルムの部屋で寝ていたのに、知らないうちに作っていたのだとしたらサプライズのタイミングがうますぎだ。
「キリエンは普段から暗いから明るい部屋にしようと思って、我がインテリアコーディネートした!」
ヴェールは私に話しかけながら真っ赤な果実コリンと包丁を取り出すと4等分に切り出す。
その1等分を――ウサギコリンを作ろうとしているのか。
こわばっている適当な場所に置かれたような小さな親指にぶれにぶれまくっている腕を見て心配になるのだが――アレ、不器用だ。見ていて、怖くなってきた。
「よぉし……、これをこうして……ウサギさん!」
ヴェールの手のひらには皮がボロボロになったウサギとは名状しがたいものが誕生していた。
見れば見るほど芸術的――耳は不器用な刃の後で所々切れていて、しかも、片方なくなっているし、なかなかに下手グロテスクになり果てていた。
しょうがない――キリエも重い腰を上げて切ってみようか。
「もう1個、コリンはあるか……? キリエも切りたい」
「えっ?」
「お手本を見せる」
「よし! 分かった!」
ヴェールからすぐにコリンと包丁を借りると、見やすいように右手で持ち、つばの部分に親指を立てるように置く。
「まず、包丁の柄を握ったらこのつばの部分に親指を置くんだ」
「おぅ!」
そして、肩の力を抜き、親指に力を入れながらコリンに切れ込みを入れていく。
「そして、肩に力を抜いて、抜いた分を少し親指に力をいれてこうする」
「おぉぉぉおおお~~!」
「これで完成だ」
「キリエ凄いな! やりおるな!」
ヴェールは私が軽々と切る姿を見て驚嘆していた。
嬉しい――久しぶりに人を殺すこと以外で褒められたような気がする。ムシャノ村が滅んでいなかったら、もっと別のことで褒められるように頑張っていたのだろうか。少なくとも、村のみんなが笑顔になるような生き方を目指していたのかもしれない。
「なぁ、次は我もやりたい! 次なら上手く出来る気がする!」
ヴェールの目が爛爛と宝石のように光輝く。私の目を見ながら次は我もとやりたそうに手をぶんぶんと振っていた。
「そうか。じゃあ、近くに来てくれないだろうか」
ベッドに横たわる私の元へヴェールは駆け寄っていくと、包丁を渡した。
「これをこうして……」
「肩に力が入りすぎている。もっと力を抜いて友達になるようにやさしく持つんだ」
「はぁ……」
ヴェールは深く息を吐く。恐らく、肩の力を抜こうとしているのだが……、逆に肩がこわばってしまっていた。
深いため息を吐く。やさしくて笑顔になるような――そんな、ため息。
「なら、これから少しずつ練習しよう。少しずつ練習して包丁と友達になろう」
「それじゃあ、よろしく頼むぞ!」
どの宝石にも負けないような明るい微笑みは、魔力を使い切って疲れている私にとっては眩しく……、でも、自然と笑顔になれたのかもしれない。
窓際から木漏れ日が差し込む中、お互い作ったウサギコリンを交換して食べていた。
いびつで可愛くなかったが、目の前で笑い合える友達がいるならそれでいいような気がする。
なんだかいつもより甘く感じた。
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