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いない

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甘かった。
ほんとうに、浅はかだった。

高校の間は、アルバイトしたお金で行くからと言っても親が絶対に許してくれなくて
一度もライブに行けなかった。

ずっとずっと行きたくて仕方なかった彼らのライブに、
初めて行けたのは、高校を卒業して、最初のお給料が出てからだった。

あなたに教えてもらった、あの原宿のお店で。

当時のわたしからしたら、大奮発で
上下でうん万円の服を買って
ライブが初めてで何もわからないから

中学からの友達で、同じ就職組だった友達に来てもらって一緒に行った。

友達には申し訳ないけど
わたしはあなたを探すことに夢中だった。

綺麗なコスプレのお姉さんを見かけるたびにあなたじゃないかと思って

でも違って

それでも、ライブが始まったら夢中で楽しんだ。
三年間、あなたと一緒に
と言っても一緒だったのは最初の二年だけだったけど
応援してきた彼らの、初めての生の音。

冗談でもなんでもなく、感動して泣いてしまった。

わたしは初めてのライブだったけど
始まる時、あなたの最推しの彼が

「おかえりなさい」

って
声をかけてくれて、初めてのライブなのに、
ここにいていいんだ、って思えて
あなたには会えなかったけど

彼のおかえりなさいを、あなたも同じ場所で聞いてる気がして
絶対にまた会える、って勝手に信じられた。

それからのわたしはもう、
Luna一色だった。

会社のお給料は全部彼らに注ぎ込んだと言っても過言ではない。

六月、わたしには二度目のライブ。
チケットも取れてないのに会社も休んで行った。
チケットが余ってるひとを探していたら、たまたま、ほんとうにたまたま、ドタキャンした友達の分を譲ってくれたひとがいた。
大感謝だ。

二度目の幸せな時間を過ごしたけど、やっぱりあなたは見つからなかった。
もしかしたら、いたのかもしれない。
でもわたしにはわからなかった。

Lunaのボーカルがラジオの公開生放送をやってるのを知って
もしかしたらそこにきてるかもしれないって
そこにも通ったけどあなたはいなかった。

わたしはいつも、Lunaの向こうにあなたを探してた。
これじゃ、Lunaのおっかけなのか、あなたのおっかけなのかわからないね。

夏休みもLunaのライブに日付を合わせて取って
初めての遠征。
ほんとおっかけっぽいなぁと思ってたけど
わたしが追ってたのは、やっぱりあなたの影だった。
いつかどこかで会えるんじゃないかって。
ずっと期待が捨てきれなかった。

Lunaが海外公演をすることが決まったとき、
会社を辞めた。
どうしてもついて行きたかった。
ファンと行くツアーを組む、って言ってたから
そこについて行きたくて
そこならあなたがくるんじゃないかって思ったから。

でも、そんな理由で会社を辞めたわたしにバチが当たった。
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