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第八章 成田山新勝寺 表参道
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弥生のお母さんが帰ると私は教室に戻った。そしてクラスメイトたちと話していると弥生も教室に戻ってきた。
「おーい弥生」
私はそう言って弥生を呼び止めた。すると弥生に「何?」と怪訝な顔で返事された。私はそれに構うことなく続ける。
「さっきあんたのお母さんに会ったよ。仕事戻るってさ」
「あ、そう」
弥生は素っ気なく答えるとそのまま自分の席に座った。特にリアクションはない。まぁ……。これはいつものことなのだけれど。
そうこうしていると担任がクラスに戻ってきた。そして生徒に「将来幸せになってください」という宿題を出すと良いことを言ったみたいな顔をした。なかなかのウザさだ。その言い方じゃ今が幸せじゃないみたいじゃないか……。とツッコみたくなる。
そんな民放の某学園ドラマ的な担任の話が終わると私たちの小学校生活はいよいよ終わった。あと数週間後には中学生か……。そう思うと妙な気分になる。
「美鈴ー!」
私がそんな風に卒業の感傷に浸っていると不意にクラスメイトの泰菜に呼ばれた。
「何? どったのやっちん?」
「これからみんなで打ち上げすんだけどあんたも来ない? ほら! 新しくできたカフェ!」
泰菜はそう言うと奥に溜まっている女子たちに視線を送った。どうやらその女子たちの中に私も加えたいらしい。
「うーん……。ごめん、今日は弥生とご飯行くつもりだからさ」
「……そっかぁ。でも春日さんもういなくない?」
「え? マジ?」
「うん。だってさっき帰ってったよ?」
泰菜はそう言うと今度は弥生の席に視線を送った。そして彼女の視線の先には誰もいない椅子と机だけがあった。どうやら弥生は私に何も言わずに帰ってしまったらしい。
「……んだよ。卒業式終わったら飯行こうって言っといたのに」
私は思わずそんな悪態を吐いた。前々から約束していたのにこの仕打ちはあんまりだと思う。
「美鈴さぁ。そろそろ春日さんとの付き合い考えたら? だってあの子は……」
泰菜はそこまで言い掛けて口を閉じた。おそらくこれ以上話したら私の地雷を踏むと察したのだと思う。
だから私は「いや、これからも今まで通りだよ」とだけ返した。泰菜は「そっか」とだけ返すとそれ以上何も言わないでくれた。泰菜にはこういうところがあるのだ。良くも悪くも立ち回りが上手いのだと思う――。
それから私は泰菜に「じゃあ中学校で」と言って教室を出た。そしてその足で昇降口へ向かった。もしかしたら弥生はまだ帰ってないかも。そう思ったのだ。そして予想通り下駄箱の前で弥生を見つける。
「おいおい、帰るなら声掛けてけよ」
私は少し怒った口調で言うと軽めに弥生を小突いた。
「あ、うん。ごめん」
「マジでさぁ。……何? 何かあったの?」
「いや……。別に」
弥生は私の質問にそう返すと俯いてしまった。どうやら口にもできないほどショックな出来事があったらしい。
だから私は「弥生ちゃんさぁ。とりあえず飯行こうぜ! 飯! 私腹減っちったよ」とわざとらしく腹をさすって見せた。私のそんな態度に弥生は小さな声で「わかったよ」とだけ返した――。
それから私たちは一緒に国道沿いのファミレスへと向かった。道中の会話は……。まぁ酷かった。これなら幼稚園児と話している方がまだマシな気がする。
「相変わらず弥生のお母さん忙しいみたいだねぇ」
「うん」
「やっぱ空港って休み取りづらい感じなんかね?」
「たぶんね」
「そっかぁ。まぁ仕事だもんね。しゃーないか」
「そうだね」
――そんな感じの会話だ。弥生と付き合ってるとたまにこうなるのだ。たぶん今日の弥生はすこぶる調子が悪いのだと思う。
「ねぇメイリン?」
「ん? 何さ」
「何で泰菜ちゃんたちと一緒に行かなかったの?」
「は? そりゃ弥生と一緒に飯行こうと思ってたからだよ。やっちんとはまた別の日にでも行けば良いしさ」
「……そっか。」
「うん、そうだよ。だってせっかく今日は卒業式の日じゃん? だから弥生と一緒にお祝いしたくてさ」
私がそこまで話すとその場で弥生は立ち止まった。そして首を横に振ると「どうして」と言って顔を上げた。顔を上げた弥生の目には大粒の涙が溜まっている。
「なになに? どしたん?」
私はそう言って弥生の肩を抱いた。抱いた弥生はまるで生まれたての子猫みたいに震えている。
「もう良いんだよ……。メイリン。もう私なんかに構わないでもいいん……だよ」
弥生はそう言うとその場にへたり込んでしまった。どうやら今日の弥生は私が思っていた以上に情緒不安定のようだ。
「おーい弥生」
私はそう言って弥生を呼び止めた。すると弥生に「何?」と怪訝な顔で返事された。私はそれに構うことなく続ける。
「さっきあんたのお母さんに会ったよ。仕事戻るってさ」
「あ、そう」
弥生は素っ気なく答えるとそのまま自分の席に座った。特にリアクションはない。まぁ……。これはいつものことなのだけれど。
そうこうしていると担任がクラスに戻ってきた。そして生徒に「将来幸せになってください」という宿題を出すと良いことを言ったみたいな顔をした。なかなかのウザさだ。その言い方じゃ今が幸せじゃないみたいじゃないか……。とツッコみたくなる。
そんな民放の某学園ドラマ的な担任の話が終わると私たちの小学校生活はいよいよ終わった。あと数週間後には中学生か……。そう思うと妙な気分になる。
「美鈴ー!」
私がそんな風に卒業の感傷に浸っていると不意にクラスメイトの泰菜に呼ばれた。
「何? どったのやっちん?」
「これからみんなで打ち上げすんだけどあんたも来ない? ほら! 新しくできたカフェ!」
泰菜はそう言うと奥に溜まっている女子たちに視線を送った。どうやらその女子たちの中に私も加えたいらしい。
「うーん……。ごめん、今日は弥生とご飯行くつもりだからさ」
「……そっかぁ。でも春日さんもういなくない?」
「え? マジ?」
「うん。だってさっき帰ってったよ?」
泰菜はそう言うと今度は弥生の席に視線を送った。そして彼女の視線の先には誰もいない椅子と机だけがあった。どうやら弥生は私に何も言わずに帰ってしまったらしい。
「……んだよ。卒業式終わったら飯行こうって言っといたのに」
私は思わずそんな悪態を吐いた。前々から約束していたのにこの仕打ちはあんまりだと思う。
「美鈴さぁ。そろそろ春日さんとの付き合い考えたら? だってあの子は……」
泰菜はそこまで言い掛けて口を閉じた。おそらくこれ以上話したら私の地雷を踏むと察したのだと思う。
だから私は「いや、これからも今まで通りだよ」とだけ返した。泰菜は「そっか」とだけ返すとそれ以上何も言わないでくれた。泰菜にはこういうところがあるのだ。良くも悪くも立ち回りが上手いのだと思う――。
それから私は泰菜に「じゃあ中学校で」と言って教室を出た。そしてその足で昇降口へ向かった。もしかしたら弥生はまだ帰ってないかも。そう思ったのだ。そして予想通り下駄箱の前で弥生を見つける。
「おいおい、帰るなら声掛けてけよ」
私は少し怒った口調で言うと軽めに弥生を小突いた。
「あ、うん。ごめん」
「マジでさぁ。……何? 何かあったの?」
「いや……。別に」
弥生は私の質問にそう返すと俯いてしまった。どうやら口にもできないほどショックな出来事があったらしい。
だから私は「弥生ちゃんさぁ。とりあえず飯行こうぜ! 飯! 私腹減っちったよ」とわざとらしく腹をさすって見せた。私のそんな態度に弥生は小さな声で「わかったよ」とだけ返した――。
それから私たちは一緒に国道沿いのファミレスへと向かった。道中の会話は……。まぁ酷かった。これなら幼稚園児と話している方がまだマシな気がする。
「相変わらず弥生のお母さん忙しいみたいだねぇ」
「うん」
「やっぱ空港って休み取りづらい感じなんかね?」
「たぶんね」
「そっかぁ。まぁ仕事だもんね。しゃーないか」
「そうだね」
――そんな感じの会話だ。弥生と付き合ってるとたまにこうなるのだ。たぶん今日の弥生はすこぶる調子が悪いのだと思う。
「ねぇメイリン?」
「ん? 何さ」
「何で泰菜ちゃんたちと一緒に行かなかったの?」
「は? そりゃ弥生と一緒に飯行こうと思ってたからだよ。やっちんとはまた別の日にでも行けば良いしさ」
「……そっか。」
「うん、そうだよ。だってせっかく今日は卒業式の日じゃん? だから弥生と一緒にお祝いしたくてさ」
私がそこまで話すとその場で弥生は立ち止まった。そして首を横に振ると「どうして」と言って顔を上げた。顔を上げた弥生の目には大粒の涙が溜まっている。
「なになに? どしたん?」
私はそう言って弥生の肩を抱いた。抱いた弥生はまるで生まれたての子猫みたいに震えている。
「もう良いんだよ……。メイリン。もう私なんかに構わないでもいいん……だよ」
弥生はそう言うとその場にへたり込んでしまった。どうやら今日の弥生は私が思っていた以上に情緒不安定のようだ。
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