日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~

海獺屋ぼの

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第九章 カワウソカフェ KOTSUME

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「良かったねぇチェリー」
 篠田さんはそう言うとチェリーちゃんにランチセットの小魚を一匹摘まんで手渡した。するとチェリーちゃんはそれを前足で器用に掴んで食べ始めた。その食べ方は動物とは思えないくらい器用だ。まるで人間の子供みたいに見える。
「うわぁ。また手が生臭くなっちゃったよ」
 篠田さんはそう言うとウエットティッシュで指先を拭った。そして「チェリー。あとは自分で取って食べてね」とチェリーちゃんに言った。チェリーちゃんにそれって通じるの?? と一瞬私の頭が混乱する。
 そうこうしていると美鈴さんが「すごいっすね。チェリーちゃんめっちゃ賢いじゃないっすか」と感心しながら篠田さんに言った。
「まぁね。この子は本当に賢いのよ。こう見えてもチェリーはぐらいはできるのよ? 手先も器用だしね」
 篠田さんはそう言うとメガネを外した。そして袖でメガネを拭き取ると再びそれを掛け直す。
「ハハハ、やっぱ漫画家先生は面白いこと思いつくんすね」
 美鈴さんはそう返すとチェリーちゃんを横から覗き込んだ。相変わらずチェリーちゃんは上手に小魚を囓っている。
「フフ……。そうね。多少はネタ持ってないと漫画家なんて続けらんないから」
「やっぱそうっすよね。私は絵を描いたり、話作ったりする才能ないから羨ましいっすよ」
 美鈴さんはそう言うと天井を見上げた。そして弥生さんに「あんたは絵上手いもんね」と話を振る。
「いやいや……。私なんかまだまだだよ」
「そう? 私は弥生の絵好きだけどなぁ」
「……やめてよ。プロの漫画家さんの前で……」
 弥生さんはそう言うと顔を赤くした。やはり憧れの人の前だと緊張して普段通りには話せないらしい――。
 
 それから私たちはカワウソティータイムを楽しんだ。篠田さんはとてもフランクな人で、最初こそ緊張していた弥生さんも次第に打ち解けていった。まぁ……。私はその間ずっとチェリーちゃんと遊んでいたのだけれど。
「そっか。弥生ちゃんは漫画家目指してるんだね」
 私がチェリーちゃんを抱っこしていると篠田さんのそんな言葉が耳に入ってきた。
「はい……。才能ないってわかってはいるんですが」
 弥生さんはそう謙遜……。いや卑下すると恥ずかしそうに俯いた。
「……あまり自分のことを蔑むもんじゃないよ。才能なんてのは状況で変わるもんだしね。私だってアレよ? たまたま賞に応募して、たまたま佳作だったからデビューできたようなもんだしね。チャンスがどこに転がってるか分からない世界だから」
 篠田さんはそう言うと弥生さんに優しく微笑みかけた。そして続ける。
「もし本気で漫画家目指すつもりなら原稿描いて描いて描きまくりなさい。それで描けたらネットに投稿するといいよ。今は……。それが一番の近道だしね」
 篠田さんはそこまで言うと弥生さんの頬に軽く手を当てた。そして「後悔しないようにね」と付け加えた――。
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