82 / 117
quatre-vingt-deux
しおりを挟む
会長のお供のため普段よりも一時間遅い出勤。なので電車もいつもよりちょこっと空いていて、乗り換え前の私鉄だけではあるが座ることができた。
それだけでもラクができたと九時四十五分頃に会社に入り、会長室で待たせていただく。秘書課の方……前回社長から呼び出し食らった時にいらした境さんのご案内で、わざわざお茶菓子まで出して頂いた。
「いえ私内部の人間ですので……」
と一応お断りさせて頂いたのだが、彼女曰く『会長夫人からのお土産』だそうで、あくまでも『お裾分け』であるらしい。
「私たちも頂きましたが、美味しかったですよ」
前回もそうだったが、この方気取ってなくて話し易いという印象だ。聞くと東さんと同期だそうで、今や残っているのは二人だけになってしまったと仰っていた。
「珍しいんことなんですけど、同期だった男共は全員一年も持たなかったんです。研修の宿坊で三人が逃亡しました」
あの宿坊はなかなかのものでしたが、逃げるほどでもなかったと思う。貴重な体験ができたと私の同期は全員そこそこ楽しんで乗り切ってたけどなぁ……因みに寿した二人以外は全員残ってます、弥生ちゃんは三月までだけど。
「やぁ、揃ったね」
と会長がカジュアルないでたちで部屋に入ってこられた。ところで今回はどちらへ?
「今日は運転手を付けてるから夏絵ちゃんは楽チンにしてていいよ」
あっそうなんですの、実際問題今後もそうなさった方が宜しいかと思われますよ。
「んじゃ行こうか」
「行ってらっしゃいませ」
境さんは会長に一礼なさってるが……。
「ん?塔子ちゃんも行くんだよ」
「は?」
彼女は聞かされてすらいなかったらしい。私も知らなかったけど、たまにこういうことなさるのよ。
「君行きたがってたじゃない、『平賀時計』の資料館。今日は社長の計らいで開けてもらえることになったんだよ」
「えっ?今リニューアル閉館中では?」
さすが、行きたがってらっしゃるだけあってよくご存知なんですね。で、何となく左腕にはめてらっしゃる腕時計を見るとやっぱりファンなんですね。そのデザイン限定モデルですもの。
「十一時に待ち合わせしてるんだ、余り時間が無いぞぉ」
会長に急かされる形で、私たちは車で一時間弱かかる『平賀時計資料館』へと赴くことになった。
「海東様、本日はお越し頂きありがとうございます」
そう言って私たちを出迎えてくださった見るからに高級感あふれるスーツを身に着けていらっしゃる男性。三十代前半くらいとお若めなのだが、去年先代が急逝なされたとかで跡を継がれた若社長さん……だったと思う。
「少しは慣れたみたいだね」
「いえまだまだです、専務や常務に頼りきりで」
「それは仕方ないさ。有無を言わさずの状況だったんだし、君会社勤めの経験無いじゃない」
マジですの?それでいきなり社長って正直重荷だろうなぁ。
「元々は画家さんだったんです、海外では個展を出されるくらいでかなり注目されていたんですよ」
境さんが無知な私にこそっと耳打ちしてくださる。さすがは秘書課、勉強量も半端ないわ。
「では早速ですがご案内致します」
若社長は重厚そうなドアを開け、館内の案内を始めてくださった。館内の照明は全体的に少々暗めで、展示品に明るめの照明を使ってライトアップしている感じだった。
古くは幕末から明治初期に作られた柱時計を始め、アンティークでセンスの良いぜんまい仕掛けの真鍮製かな?の懐中時計とか腕時計が展示されている。
時計に詳しくない私は凄ぇくらいしか分からないが、境さんは瞳を輝かせて一つ一つ丁寧に見て回り、若社長さんに色々と聞きまわっている。
彼もまだまだと言いながらもこの一年で相当お勉強されてきたと見えて、彼女の質問に一つ一つ丁寧に応えていらっしゃる。会長と私は毎度ながらテキトーにぷらぷらと見回しているだけだったが、一枚の油絵にふと視線が止まった。
「ん?どうした夏絵ちゃん」
その絵は外国の平屋一戸建て……簡単に言えばドールハウスの外装みたいな感じの建物が描かれている。ここにあるのとは色合いが違うんだけど、見たことあるんだよなぁ。
「この絵見たことあるんですよ、どこでだったかなぁ?と思いまして」
「『ライムライト』でしょ。あっちのは星空、これは夕焼け空だね」
そっかミッツんとこのバーか!あそこはいる奴らが奴らなだけに、あの絵だけやたらとアーティスティックで目立ってたんだよね。
「この絵はどなたが?」
「若社長の作品だよ」
そりゃあ凄いわ……私は主役である時計そっちのけで絵画の方に気を取られていた。
「リニューアルの目玉をご案内致します」
若社長さんの声に我に返り、彼の後を付いて奥に入っていく。境さんは既にパンフレットを手にしており、若社長さんと二人時計のことを色々とお話していらっしゃる。
「実はね夏絵ちゃん」
会長が私の耳に顔を近付けてきた。何か内緒話がお有りのようだ。
「何でしょう?」
「実は今回“新社会人”企画で平賀さんとのコラボを考えててね、彼そのプラン会議に来られたことがあるんだよ」
「社長直々にですか?」
お若いだけあって結構アクティブだなぁ。そういうのって企画課と営業課が赴くもんなんじゃないの?
「うん。それでね、和仁と面会した時に秘書として付いてた塔子ちゃんに一目惚れしたらしいんだよ」
境さんって芯の通った強さと賢さを備えてらっしゃいますからね、そこに惚れられた感じなんでしょうか?それともつやつやサラサラストレートな黒髪に惚れられたんでしょうか?
いずれにせよ秘書課はデキる美女の宝庫、社長曰く『ウチきっての才媛揃い』とご満悦ですからなぁ。以前にもお話したかもですが、あのホストはバイですので好みに合えば誰でもウェルカムな男です、はい。
……と話が脱線している間に少し明るくなった奥の部屋に入ると、数名の職人さんたちが机に向かってひたすら時計と向き合ってらした。ベテランさんも若手の方もいらして、皆さま真剣な表情で一つ一つパーツを組み立てていらっしゃる。
うーわぁ細かい作業なさってるなぁ……こういう男の人超素敵だなぁと思う。私は手先の器用な男性の手が大好きだ、フェチレベルと言っていいと思う。そんな職人さんたちの手を見て一人ときめきまくっていた。
さすがベテランさんの手の動きはなめらかで熟練されている。若い方もそれなりなのだが、たまに動きが止まったりしていてまだまだ修行中なんだなと思いながら眺めていた。
ゆっくりと歩きながら、ひと通り職人さんたちのハイレベルな手作業を堪能し、最後に視界に入った同世代らしき男性に驚きを隠せなかった。確か別の時計会社に入社なさってたはずだけど……まさかこんな所で見かけるなんて思ってもみなかった。
元カレがそこにいた。
それだけでもラクができたと九時四十五分頃に会社に入り、会長室で待たせていただく。秘書課の方……前回社長から呼び出し食らった時にいらした境さんのご案内で、わざわざお茶菓子まで出して頂いた。
「いえ私内部の人間ですので……」
と一応お断りさせて頂いたのだが、彼女曰く『会長夫人からのお土産』だそうで、あくまでも『お裾分け』であるらしい。
「私たちも頂きましたが、美味しかったですよ」
前回もそうだったが、この方気取ってなくて話し易いという印象だ。聞くと東さんと同期だそうで、今や残っているのは二人だけになってしまったと仰っていた。
「珍しいんことなんですけど、同期だった男共は全員一年も持たなかったんです。研修の宿坊で三人が逃亡しました」
あの宿坊はなかなかのものでしたが、逃げるほどでもなかったと思う。貴重な体験ができたと私の同期は全員そこそこ楽しんで乗り切ってたけどなぁ……因みに寿した二人以外は全員残ってます、弥生ちゃんは三月までだけど。
「やぁ、揃ったね」
と会長がカジュアルないでたちで部屋に入ってこられた。ところで今回はどちらへ?
「今日は運転手を付けてるから夏絵ちゃんは楽チンにしてていいよ」
あっそうなんですの、実際問題今後もそうなさった方が宜しいかと思われますよ。
「んじゃ行こうか」
「行ってらっしゃいませ」
境さんは会長に一礼なさってるが……。
「ん?塔子ちゃんも行くんだよ」
「は?」
彼女は聞かされてすらいなかったらしい。私も知らなかったけど、たまにこういうことなさるのよ。
「君行きたがってたじゃない、『平賀時計』の資料館。今日は社長の計らいで開けてもらえることになったんだよ」
「えっ?今リニューアル閉館中では?」
さすが、行きたがってらっしゃるだけあってよくご存知なんですね。で、何となく左腕にはめてらっしゃる腕時計を見るとやっぱりファンなんですね。そのデザイン限定モデルですもの。
「十一時に待ち合わせしてるんだ、余り時間が無いぞぉ」
会長に急かされる形で、私たちは車で一時間弱かかる『平賀時計資料館』へと赴くことになった。
「海東様、本日はお越し頂きありがとうございます」
そう言って私たちを出迎えてくださった見るからに高級感あふれるスーツを身に着けていらっしゃる男性。三十代前半くらいとお若めなのだが、去年先代が急逝なされたとかで跡を継がれた若社長さん……だったと思う。
「少しは慣れたみたいだね」
「いえまだまだです、専務や常務に頼りきりで」
「それは仕方ないさ。有無を言わさずの状況だったんだし、君会社勤めの経験無いじゃない」
マジですの?それでいきなり社長って正直重荷だろうなぁ。
「元々は画家さんだったんです、海外では個展を出されるくらいでかなり注目されていたんですよ」
境さんが無知な私にこそっと耳打ちしてくださる。さすがは秘書課、勉強量も半端ないわ。
「では早速ですがご案内致します」
若社長は重厚そうなドアを開け、館内の案内を始めてくださった。館内の照明は全体的に少々暗めで、展示品に明るめの照明を使ってライトアップしている感じだった。
古くは幕末から明治初期に作られた柱時計を始め、アンティークでセンスの良いぜんまい仕掛けの真鍮製かな?の懐中時計とか腕時計が展示されている。
時計に詳しくない私は凄ぇくらいしか分からないが、境さんは瞳を輝かせて一つ一つ丁寧に見て回り、若社長さんに色々と聞きまわっている。
彼もまだまだと言いながらもこの一年で相当お勉強されてきたと見えて、彼女の質問に一つ一つ丁寧に応えていらっしゃる。会長と私は毎度ながらテキトーにぷらぷらと見回しているだけだったが、一枚の油絵にふと視線が止まった。
「ん?どうした夏絵ちゃん」
その絵は外国の平屋一戸建て……簡単に言えばドールハウスの外装みたいな感じの建物が描かれている。ここにあるのとは色合いが違うんだけど、見たことあるんだよなぁ。
「この絵見たことあるんですよ、どこでだったかなぁ?と思いまして」
「『ライムライト』でしょ。あっちのは星空、これは夕焼け空だね」
そっかミッツんとこのバーか!あそこはいる奴らが奴らなだけに、あの絵だけやたらとアーティスティックで目立ってたんだよね。
「この絵はどなたが?」
「若社長の作品だよ」
そりゃあ凄いわ……私は主役である時計そっちのけで絵画の方に気を取られていた。
「リニューアルの目玉をご案内致します」
若社長さんの声に我に返り、彼の後を付いて奥に入っていく。境さんは既にパンフレットを手にしており、若社長さんと二人時計のことを色々とお話していらっしゃる。
「実はね夏絵ちゃん」
会長が私の耳に顔を近付けてきた。何か内緒話がお有りのようだ。
「何でしょう?」
「実は今回“新社会人”企画で平賀さんとのコラボを考えててね、彼そのプラン会議に来られたことがあるんだよ」
「社長直々にですか?」
お若いだけあって結構アクティブだなぁ。そういうのって企画課と営業課が赴くもんなんじゃないの?
「うん。それでね、和仁と面会した時に秘書として付いてた塔子ちゃんに一目惚れしたらしいんだよ」
境さんって芯の通った強さと賢さを備えてらっしゃいますからね、そこに惚れられた感じなんでしょうか?それともつやつやサラサラストレートな黒髪に惚れられたんでしょうか?
いずれにせよ秘書課はデキる美女の宝庫、社長曰く『ウチきっての才媛揃い』とご満悦ですからなぁ。以前にもお話したかもですが、あのホストはバイですので好みに合えば誰でもウェルカムな男です、はい。
……と話が脱線している間に少し明るくなった奥の部屋に入ると、数名の職人さんたちが机に向かってひたすら時計と向き合ってらした。ベテランさんも若手の方もいらして、皆さま真剣な表情で一つ一つパーツを組み立てていらっしゃる。
うーわぁ細かい作業なさってるなぁ……こういう男の人超素敵だなぁと思う。私は手先の器用な男性の手が大好きだ、フェチレベルと言っていいと思う。そんな職人さんたちの手を見て一人ときめきまくっていた。
さすがベテランさんの手の動きはなめらかで熟練されている。若い方もそれなりなのだが、たまに動きが止まったりしていてまだまだ修行中なんだなと思いながら眺めていた。
ゆっくりと歩きながら、ひと通り職人さんたちのハイレベルな手作業を堪能し、最後に視界に入った同世代らしき男性に驚きを隠せなかった。確か別の時計会社に入社なさってたはずだけど……まさかこんな所で見かけるなんて思ってもみなかった。
元カレがそこにいた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる