平凡な女には数奇とか無縁なんです。

谷内 朋

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quatre

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 それから私は霜田さんと連絡を取り合う様になり、次回のデート(?)は翌々週の土曜日と決まった。となると何着ていこうかな? デートも何年していない? 私は久し振りの事に若干浮かれ回っていた。
「はあぁ~」
 取り敢えずタンスを開けて数少ない服を見て溜息を吐いていると弟の秋都が部屋の中を覗いてきた。いつ見てもルックスは俳優並みだな、馬鹿だけど。
「相っ変わらず殺風景な部屋だな、一応女だろうが」
「うっさい、あんたの部屋みたいに雑多じゃないだけよ」
 昔なら『あんたの部屋みたいに散らかってない』って言い返せたんだけど、最近は物こそ多いけど片付けられる様になってるんだよねぇ。ここへきて恋人を一人に絞ってきたらしく、高収入の女にたかるだけだったのが家事を覚えるようになったのだ。まぁこれまで一度も家に連れてきた事が無いからどんな人かは知らないけど。
「今日は彼女ん家じゃないの?」
「出張中、明後日の晩戻ってくる」
 あっそう。私は秋都からタンスに視線を戻す。はあぁ~、やっぱり溜息しか出てこないわ。
 見た目と同じく服も地味、何年も男と縁遠かっただけあってデートに着て行けそうな服が無い。ここでファッションセンスのある素敵女子、ってジャンルの人たちはあっさりセンスの良いコーディネートを思いつくんだろうけど。うん、私には無理です、買いに行かなきゃ駄目かなぁ? それもまた面倒臭いわ……こうして干物になっていくのね、一応まだ二十代なのに。
「しっかし地味な色合いだな、なつ姉のタンスの中」
「女子のタンスを覗くなっ!」
 秋都まだ居たのかよ、私は慌ててタンスの引き出しを仕舞う。
「タンス開けて溜息吐いてたら何事かと思うだろうが。にしても煮物弁当かと思うくらいに地味地味な……」
「放っとけ! 仕事用の着回しさえあれば困らないもの」
「悲しい事言うなよ、そこそこの給料稼いでる独身女がよぉ」
 秋都は苦虫を噛み潰した様な顔で頭を掻いている。私だって悲しいさ、まさかここまで地味地味なタンスになっていたなんて……前回服買ったのいつだったかなぁ~? 思い出せないくらいに遠い過去だなぁ~。
「今日一日こうしてるつもりか?」
 へっ? 急に何を言い出す弟よ。私は顔を上げて秋都を見る、こいつきょうだいの中で唯一の百八十センチ超えだから首が疲れる。
「服買うぞ、支度しろ」
 秋都はぶっきらぼうにそれだけ言って部屋から出て行った。

 と言う訳で今私は秋都に連れられて自宅から来た車で三十分掛けて大型ショッピングモールにいる。運転はもちろん私、秋都は自動二輪の免許なら持っているが、お馬鹿過ぎて学科試験に五度落ちるという伝説(?)付きだ。
「うしっ、片っ端から攻めてくぞ」
「効率悪すぎ、なるべくコンサバちっくな方が良いからそういうお店に絞らせてもらうわ」
「何言ってんだ、折角だからちったぁ冒険しろって」
 秋都は私の手を引いてすぐ側にあるいかにも女子大生をターゲットにしてそうなお店に入った。いやいや、来年三十路の私には若すぎる! どちらかと言えばお向かいのお店の方が雰囲気に合ってると思うんだけど。
「いらっしゃいませ、久し振りね五条君」
 とさすがアパレル女子、美人でお洒落だわ~なんて思ってたら秋都の知り合いみたいだ。
「おぅ。コレうちの姉なんだけど、デート向けの服選んでやってくんない?」
 私は秋都に背中を押されてアパレル女子の前に差し出される。
「勿論喜んで。そう言えばお姉様にお会いするのは初めてですね、お兄様・・・は何度かご利用頂いていますが」
 えっ? お姉ちゃんここでも服買ってたの?
「あき、あんた知ってたの?」
「おぅ、はる姉の付き添いで何度か来たことあるんだよ。仕事で着る服は時々ここで買うんだと」
 へぇ……姉が利用しているお店と知って一気に興味を示すゲンキンな私。食わず嫌いは良くないかも、といとも簡単にその気になるポリシーゼロの私。自分で言ってて虚しくなる情緒不安定なお年頃の私……そろそろやめときます、何だか悲しくなってきた。
「さすがごきょうだいですね、揃いも揃ってスタイル抜群ですよね」
 確かに身長百六十三センチ体重四十八キロの私はどちらかと言えば痩せ型だとは思うけど、私より身長の高いモデルかよレベルのアパレル女子に言われても嘘臭くて返事の仕様がありません。まぁでもだからって『喧嘩売ってんのかワレコラ!』みたいな空気にする必要も無いので、取り敢えずアホの子みたいに愛想笑いで誤魔化しておく。
「お姉様って五条君と違って・・・知識が豊富そうですよね、お顔立ちも日本的ですから大人コーデでいきましょう」
 良かった、店の雰囲気で勘違いギャルにされるかとヒヤヒヤしてたけどその心配は無さそうです。私はこの一言で一気に彼女を信頼し、結局この店で一式コーディネートしてもらったのでした。
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