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ときめき☆ブルジョワジー
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それからかなり本腰を入れて部屋探しに取り組んでいると、山口先輩に声を掛けられた。
「はるなちゃん、部屋探しのことなんだけど」
「良さそうな所見つかったんです、お忙しいのに色々と……」
ありがとうございましたと礼を言おうとしたが、それを遮って紙切れを手渡してきた。
「実は破格物件を見つけたんだ」
「えっ?」
それってどれくらい安いの? 私は反射的にそれを受け取ると、家賃三万円と印字されていた。住所はS市、何かの間違いではないのか? あの界隈は著名人が密集する高級住宅街で、倉庫ですらこんな値段で借りられない。
「値段一桁間違えて……」
「いや、そこは確認したよ。三万円で合ってるって」
であれば何故? しかも間取りは三LDK。あり得ない、何かあるはずだ。
「多分何かあると思います」
「それを確認するために一緒に見に行かない? 僕S市はホームグラウンドだからついでに街案内もするよ」
先輩は私の手を引いてS市にある物件を案内してくれた。
S市はとても閑静な街並みで、見るからに高級感が溢れていた。駅前の店も軒並み高級そうなお店ばかりでスーパーでさえも敷居が高い、ジャガイモ一個で千円くらい取られそうだ。こんな所で暮らしてたらアルバイトのお金だけじゃ無理だ、申し訳ないが断った方がいい気がする。
「あの、私には場違いですのでお断り……」
「それは見てから決めて」
「いえ、街並みだけで無理です」
「えっ? 北部の騒々しさよりはいいと思うけど」
先輩は私を逃がすまいとするかのように多少強引に手を引っ張る。こういった経験のない私は、お父さんと娘ってこんな感じなのだろうかと思考を余所見させていた。
「この辺は子供の頃からよく通ってたんだ、学校帰りにはよくそこでおやつ食べてたんだ」
彼はここの風景を懐かしむように高級レストランちっくな店を指差した。どう見ても“おやつ”は出てきそうにないのだが。
「あの店構えで駄菓子屋ですか?」
「あそこはカフェだよ、それに駄菓子屋って何?」
駄菓子屋を知らないのか? 私は感覚の違いに面食らう。
「子供向けの菓子屋です、二桁値段で買いものができます」
「百円以下ってこと? 凄いね、食べられるもの売ってるの?」
当たり前だ、“菓子屋”なんだから。
「はい、美味しいですよ」
先輩は興味無さげにへぇとだけ言った。この人アレだ……そう思いながらも時々織り交ぜてくる昔話を聞けるのは楽しかったので、結局そのままずるずると付き合って部屋の下見まで済ませていた。
控えめに言って凄い部屋で、学生一人暮らしには相応しくないほどの物件であった。私は念のため不動産屋さんに家賃について訊ねると三万円で合っていると仰り、オーナーさんのご厚意で期限付きではあるがその値段設定にしているとのことだった。
「どうかな? 決めちゃわない?」
先輩は私の顔を覗き込んでくる。リョウとはまた違う魅力的な瞳にドキドキしてしまった。
「保護者に相談しないと、まだ未成年なので」
「そうですね、十八歳以下ですと保護者様の同意が必要になります」
不動産屋さんのアシストで即決だけは免れる。にしても叔母の同意貰えるかな? その不安はあったが取り敢えず契約書一式を受け取って家に戻ることにした。
「はるなちゃん、部屋探しのことなんだけど」
「良さそうな所見つかったんです、お忙しいのに色々と……」
ありがとうございましたと礼を言おうとしたが、それを遮って紙切れを手渡してきた。
「実は破格物件を見つけたんだ」
「えっ?」
それってどれくらい安いの? 私は反射的にそれを受け取ると、家賃三万円と印字されていた。住所はS市、何かの間違いではないのか? あの界隈は著名人が密集する高級住宅街で、倉庫ですらこんな値段で借りられない。
「値段一桁間違えて……」
「いや、そこは確認したよ。三万円で合ってるって」
であれば何故? しかも間取りは三LDK。あり得ない、何かあるはずだ。
「多分何かあると思います」
「それを確認するために一緒に見に行かない? 僕S市はホームグラウンドだからついでに街案内もするよ」
先輩は私の手を引いてS市にある物件を案内してくれた。
S市はとても閑静な街並みで、見るからに高級感が溢れていた。駅前の店も軒並み高級そうなお店ばかりでスーパーでさえも敷居が高い、ジャガイモ一個で千円くらい取られそうだ。こんな所で暮らしてたらアルバイトのお金だけじゃ無理だ、申し訳ないが断った方がいい気がする。
「あの、私には場違いですのでお断り……」
「それは見てから決めて」
「いえ、街並みだけで無理です」
「えっ? 北部の騒々しさよりはいいと思うけど」
先輩は私を逃がすまいとするかのように多少強引に手を引っ張る。こういった経験のない私は、お父さんと娘ってこんな感じなのだろうかと思考を余所見させていた。
「この辺は子供の頃からよく通ってたんだ、学校帰りにはよくそこでおやつ食べてたんだ」
彼はここの風景を懐かしむように高級レストランちっくな店を指差した。どう見ても“おやつ”は出てきそうにないのだが。
「あの店構えで駄菓子屋ですか?」
「あそこはカフェだよ、それに駄菓子屋って何?」
駄菓子屋を知らないのか? 私は感覚の違いに面食らう。
「子供向けの菓子屋です、二桁値段で買いものができます」
「百円以下ってこと? 凄いね、食べられるもの売ってるの?」
当たり前だ、“菓子屋”なんだから。
「はい、美味しいですよ」
先輩は興味無さげにへぇとだけ言った。この人アレだ……そう思いながらも時々織り交ぜてくる昔話を聞けるのは楽しかったので、結局そのままずるずると付き合って部屋の下見まで済ませていた。
控えめに言って凄い部屋で、学生一人暮らしには相応しくないほどの物件であった。私は念のため不動産屋さんに家賃について訊ねると三万円で合っていると仰り、オーナーさんのご厚意で期限付きではあるがその値段設定にしているとのことだった。
「どうかな? 決めちゃわない?」
先輩は私の顔を覗き込んでくる。リョウとはまた違う魅力的な瞳にドキドキしてしまった。
「保護者に相談しないと、まだ未成年なので」
「そうですね、十八歳以下ですと保護者様の同意が必要になります」
不動産屋さんのアシストで即決だけは免れる。にしても叔母の同意貰えるかな? その不安はあったが取り敢えず契約書一式を受け取って家に戻ることにした。
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