わたしの“おとうさん”

谷内 朋

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蜘蛛の巣は凶相です

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 このところ萩君は口を開けば起業の話題ばかりになっていた。その際どうしても資金が必要だそうで、私にもそれとなく協力してほしいと言ってきた。しかし私では彼の役に立てそうにないと思う……そう伝えるとほんの少しの投資だけで十分だと言った。

 ほんの少しと言ってもいくらくらいなんだろうか? 起業というくらいだから百円とかではないことくらい想像できるけど。一万円? 十万円? それを超えると一般的な大学生には厳しい金額だ。

「トータルで二千万円くらいかな、他の友人にも声掛けはしてるから君一人にそんな大金お願いしないよ」

 それを聞いてちょっと安心した。いざとなれば母の保険金があるけどさすがに未成年である私の一存では決められない。何てったって二千万円、見たことも無い大金を独断で取り扱える度胸なんか持ち合わせていない。

 本来こういったことは誰かに相談した方がいいのかも知れない。なのにあの時言われた台詞が疼いてそれをためらわせてしまう。どうしたらいい? ネットで相談してみても【詐欺だからやめておけ】という答えにしかならず、別の意見を欲していた時、偶然街中で千葉さんとばったり出会った。

 普段の私であれば多分会釈程度で別れたであろう。しかし誘われるまま近くのレストランに入り、友人の悩みということにして彼に相談することにした。

「大学生相手に随分な大金を要求するんだね。起業については長野さんの方が詳しいと思うけど、このご時世やり方次第では零円でもできるよ」

「そうなんですか?」

「今時何らかのネットツールは持ってるもんでしょ? パソコンが無くたってこれ一つでネット繋ぎ放題なんだから」

 千葉さんはケータイを持ってそう言った。

「周囲には反対されてるそうなんです、『詐欺だからやめておけ』って」

「当然の反応だよね、信頼の程度にもよるけど私なら止めるし断るよ。家族がいるのにそこまでのリスクは冒せない」

 既婚だとそうなるよね……と思うが私は彼を応援したい、だからそれが助けになるのであれば協力したい。

「信頼が高ければ投資もアリってことですよね?」

「まぁそうなるけど、プランが相当しっかりしてないと無駄金になるよ。それなりの大金をわざわざ生ゴミに混ぜて棄てるようなものだから」

「……」

 彼のシビアすぎる例えに何も言えなかった。私には起業についての知識が全く無いので、萩君の起業プランがしっかりしてるかどうかも分からない。でも彼はとても賢い人だ、きっと凄いプランを練った上で実行に移そうとしていると思う。

「友人には『プランと信頼度次第』と伝えます」

「止めたところで本人次第だからね。ただ一度距離を置いて考える時間を持った方が良さそうな気がするよ、それで接突いてくるようなら詐欺とみて間違いないと思う」

 千葉さんは怪訝な表情を見せながらそう言った。
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