道端の花にだって、人生はある。

保科ゆみ

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(私は、今はクレアの代理。もしかするとこの行動が、クレアにとって良くないことになるかもしれません。
ですが・・・。)

彼の前まで、歩を進めると、歩み寄る私に気づき、ゆっくりと顔を上げた彼。
お互いの視線が合うのと同時にワルツの前奏部分が、奏でられ始めました。
仮面越しではあるものの、なぜか目が離せない私たちは、自然と手を取り合って踊り始めたのです。


「(拒否されなかった。この方のお眼鏡にかなったのでしょうか。まぁ、きっと、お互いパートナーがいないと気付いて、音楽が始まったので仕方なくが1番有能説ですね。それにしても。)」


ダンスの練習はしたものの、少し不安があった私ですが、彼のリードのお陰で、とても優雅に舞うことが出来ています。
ダンスの時間がこんなに楽しいものだとは知りませんでした。
しばらく踊っていると彼がようやく口を開きました。

「・・・楽しいな。こんなに楽しいのは久しぶりだ。」


相手の彼も同じことを思ってくれていたようです。私は自然と表情が綻ぶと、彼から声を掛けられました。

「なぜ、こんな姿の俺と踊ろうと思った?」

「・・・(あ、良かった。やはり好きで着ている服ではないんですね。何か事情があるのでしょう。・・・色々と今思っていることを話したくても今はクレアの代理ですし、喉が痛いという設定上話すわけにはいかないんですー!)」

お話することが出来ず、ひたすら沈黙で返していると、

「お前も先程の女と同様に注目を集めたいのか、それとも興味本位だったのか。」

「・・・(いえ!!それは否定します!!過去の自分と状況が似ていたからだなんて言えるわけないですが!!)」


心では否定していましたが、私がずっと話さないからでしょう。彼は次第にそのことに疑問を持ち始めたようでした。

「質問には答えたくないのか、答えられない事情があるのか。・・・ま、俺がこんな格好をしてる時点で、こんなやつに話したくないわな。」


今までとは違いそう話す彼の瞳がひどく悲しげに感じられたので、私はなぜか吸い寄せられるかのように、彼の頬に手を触れてしまいました。


「え。」


彼は悲しげな目をしていましたが、私の行動に驚いて目を見開きました。そりゃそうなりますよね!!正しい反応です!!私もなんで、こんなことしてしまったんでしょう?!いや、彼がすごく泣きそうというか、泣いてるように見えたんです!!


さて、この手、どうしましょう?!


と焦っていると一曲目のワルツがタイミング良く終わったのです!本当に助かりました!そっと手を下ろすことに成功しましたが、触れた手がとても熱いです。

私は安堵感と焦燥感が入り混じってしまい、当初予定していたアーデル様の迎えを待つことを、この一連の出来事ですっかり忘れて、丁寧にお互いへの敬意を示したお辞儀をしたあと、急いで彼を見ることなく出口の方に向かって行ってしまったのです。


(色々とやってしまいました!!クレアの代理だというのに!クレアごめんなさいー!)

出口に向かう道中、これまでの出来事を振り返り、私はもう、やってしまったという絶望感でいっぱいになっていました。
出口に着くと、少し頭のもやもやが晴れ、アーデル様との流れを忘れていたことに気付きました。慌てて元来た道に戻ろうと振り返ると。


「・・っはぁはぁ、お前歩くの速いのな。」


先程の男性が息を切らして目の前にいらっしゃいます。




なんでぇぇぇぇーーーーー!!!?




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