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あの日になる今日
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死んでしまおうと思いました。
いつも空想ばかりして、それを筆を取って絵や文章にすることもなく、ただただ自己完結的な空想に人生を費やしてしまいました。私の人生の進路は狂うこともなく、まるで記憶の彼方にある過去から決定されていたかのように、順調に、何かを成し遂げることも、他者から愛されることも、また愛することも叶いませんでした。
タチが悪いことに、私には何かを成し遂げられるような環境な整えられていたのにも関わらず、惰性で人生を進めてしまった。
この人生は私の責任によってこうなった。
だから、私自身を終わらせるつもりでした。
家で実行してしまうと、それを最初に見た人が可哀想だと思い、今まで無意味に貯めていたバイト代を使い、引き寄せられるかのように遠く離れた山の樹海まで公共交通機関を利用して赴きました。遺書は残していません。
背負ったリュックの中には、片道の交通費を使い切り空になった財布と、ロープだけが残り、私の両足を地面に留まらせるほどの重みはありませんでした。麓に到着し、空を見上げてみれば、そこには高い山がありました。登山のために訪れた人々は、その山の高さが発する威圧感と、人為的に下界と境界が張られたかのような白い頂によって彩られた絵画のような美しさに圧倒されていましたが、私にとって興味関心の対象にはなりませんでした。
山頂まで登る必要はありませんが、樹海に着くまでには麓から少々離れた高さにあったため、私は人生を終わらせるための歩みが必要になりました。
周りの人々は山頂という目標のために、装備を整え、身体から意志力が滲み出るような活力によって四肢を動かしていましたが、その中で見窄らしく虚ろな目をしたまま、引き摺り込まれるように動く私は、とても浮いている存在に見えたのでしょう。私を追い越す際に振り向く人々の目は、心配、驚き、呆れなど多種多様な色彩を見せていました。
樹海に到着するまでに掛かった時間は2時間程度でしたが、身体の疲労はそこまで感じませんでした。私の頭は考えることを放棄し、”終わらせる”ことが、全てにおいて優先されるべき事項だったのです。
数分間樹海の中を進み、ある程度奥へ入り込んだと判断した後、約70kgの物を括り付けた紐の重さに耐えられそうな枝を探しました。樹海と言われるまでもあって、背が高い木々の樹冠がお互いに重なり合い、陽の光が遮られていました。真っ暗と言うほどではありませんが、世界そのものの明度が極端に下がったように見え、その光景によって私の心情がこれからの行為に向かって加速させる要因になったのでしょう。
息絶えるまでに持ってくれる耐久力がありそうな太い枝を見つけた途端、私は今までの人生を振り返ることなく、機械的に準備を始めました。
バッグからロープを取り出し、木を登り、数m上の枝にロープを括りつける、ロープが掛かった枝の上に腰を下ろし、輪っかを作り自分の首に付ける。
この一連の動作を淡々とこなし、あとは飛び降りるだけとなりましたが、その瞬間、私個人の精神ではなく、人間に備わっている本能的な死の恐怖が私の脳裏を横切りました。しかしそれもほんの一瞬の出来事で、恐怖からの昂りを抑える暇もなく、空中に身を投げ出そうとした次の瞬間
首を垂れるには後ろ髪引かれる何かが見えた。
今振り返れば、恐怖が作りだした1秒にも満たない刹那が私の命、そしてこれからの人生を変えるきっかけになったのでしょう。
あと既の所で、これからの物語を共にする彼女に会うことも叶わなくなるところでした。
いつも空想ばかりして、それを筆を取って絵や文章にすることもなく、ただただ自己完結的な空想に人生を費やしてしまいました。私の人生の進路は狂うこともなく、まるで記憶の彼方にある過去から決定されていたかのように、順調に、何かを成し遂げることも、他者から愛されることも、また愛することも叶いませんでした。
タチが悪いことに、私には何かを成し遂げられるような環境な整えられていたのにも関わらず、惰性で人生を進めてしまった。
この人生は私の責任によってこうなった。
だから、私自身を終わらせるつもりでした。
家で実行してしまうと、それを最初に見た人が可哀想だと思い、今まで無意味に貯めていたバイト代を使い、引き寄せられるかのように遠く離れた山の樹海まで公共交通機関を利用して赴きました。遺書は残していません。
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山頂まで登る必要はありませんが、樹海に着くまでには麓から少々離れた高さにあったため、私は人生を終わらせるための歩みが必要になりました。
周りの人々は山頂という目標のために、装備を整え、身体から意志力が滲み出るような活力によって四肢を動かしていましたが、その中で見窄らしく虚ろな目をしたまま、引き摺り込まれるように動く私は、とても浮いている存在に見えたのでしょう。私を追い越す際に振り向く人々の目は、心配、驚き、呆れなど多種多様な色彩を見せていました。
樹海に到着するまでに掛かった時間は2時間程度でしたが、身体の疲労はそこまで感じませんでした。私の頭は考えることを放棄し、”終わらせる”ことが、全てにおいて優先されるべき事項だったのです。
数分間樹海の中を進み、ある程度奥へ入り込んだと判断した後、約70kgの物を括り付けた紐の重さに耐えられそうな枝を探しました。樹海と言われるまでもあって、背が高い木々の樹冠がお互いに重なり合い、陽の光が遮られていました。真っ暗と言うほどではありませんが、世界そのものの明度が極端に下がったように見え、その光景によって私の心情がこれからの行為に向かって加速させる要因になったのでしょう。
息絶えるまでに持ってくれる耐久力がありそうな太い枝を見つけた途端、私は今までの人生を振り返ることなく、機械的に準備を始めました。
バッグからロープを取り出し、木を登り、数m上の枝にロープを括りつける、ロープが掛かった枝の上に腰を下ろし、輪っかを作り自分の首に付ける。
この一連の動作を淡々とこなし、あとは飛び降りるだけとなりましたが、その瞬間、私個人の精神ではなく、人間に備わっている本能的な死の恐怖が私の脳裏を横切りました。しかしそれもほんの一瞬の出来事で、恐怖からの昂りを抑える暇もなく、空中に身を投げ出そうとした次の瞬間
首を垂れるには後ろ髪引かれる何かが見えた。
今振り返れば、恐怖が作りだした1秒にも満たない刹那が私の命、そしてこれからの人生を変えるきっかけになったのでしょう。
あと既の所で、これからの物語を共にする彼女に会うことも叶わなくなるところでした。
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