聖女の私にできること往古来今

藤ノ千里

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三笠晴彦

第三話 公衆の面前での

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 愛想不足気味の一松は逆に実直そうで、色黒な上に体も大きめだからサーフィンとかしてそう。
 でも二人ともきちんとしたスーツが似合っていて、道明様のスーツ姿に劣らないくらい似合っていて、個室なせいで高級ホストクラブにでも来たような気持ちになってきちゃう。
 まぁ、イケメン三人をはべらす財力なんて、持ち合わせてはないんだけどね。
「すみれ、職場から直で来たの?」
「はい」
「そのスラックス似合ってる。けどもう少しゆったりしたパンツの方が良いよ」
 促されて席に座りつつ、カバンを取り上げられて。
 しかも公衆の面前で凄い恋人感出してきて。
 晴彦と一松が唖然としてるのに、気付いてないわけないのに。
「そう、ですか・・・?」
「あぁ、週末一緒に買いに行こう。好みのブランドとかある?」
「ないです」
 デレデレモード全開な道明様に困惑しつつも、晴彦と一松は恐る恐る席についた。
 道明様は、当然のように私の隣に座った。
 しかもその後、料理を注文する間も、配膳を待つ間も、道明様はずっとこの調子だった。
 晴彦と一松が口を挟んで来ても、流す感じで応えていた。
 一松の「出会いは?」という質問に「一目ぼれしてナンパした」なんて答えた時のどや顔は可愛かったけど、晴彦「えぇ?!」って仰天してたよ?
 思わず一松と顔を見合わせてたよ?
 体裁を気にしなくていい職業になったからって、さすがにさ。
 人前でのハグとキスは控えた方が良いんじゃないかな?


------
 道明先輩の彼女さんに会って、第一印象は「どこにでもいそうな普通の女性」だった。
 手入れのしやすさ重視っぽい髪は、染めてもいなくて、仕事帰りだったとしてもアクセサリーのひとつも付けていない、地味目な感じの女性で。
 あ、リングは、着けてたか。左手の薬指に。先輩とお揃いのやつを。
 靴もヒールのない動きやすいもので、バッグも可愛らしくはあっても機能性重視という感じだった。
 ブランド物は、指輪だけっぽかった。
 だから先輩の金目当てじゃないんだろうというのには安心した。
 俺の、女子ウケする笑顔にも困った顔をするだけで、俺の顔をまじまじと見る割にはなびく様子は全くなくて。
 でも道明先輩には、可愛らしい笑顔を向けていた。
 道明先輩も、彼女さんには驚くくらい幸せそうな笑みを向けていた。
 先輩が頭でも打ったのかってくらい激甘な様子なのには我が目を疑ったけど、俺と一松には普段通りの態度だったから、あれは彼女さん向けの特別対応らしい。
 「運命の相手」だと、言っていた。
 「一目ぼれ」だとも言っていたけど、道明先輩と彼女さんが会話する姿は誰がどう見ても「幸せ」を映像化したような光景で。
 お互いに、お互いがいるだけで幸せなんだという事が、ひしひしと伝わって来たんだ。
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