聖女の私にできること第二巻

藤ノ千里

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第一章 聖女としての生活

第二話 脳専門の治療所

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 15分ほど駆け足で移動した先は、二階建ての、宿屋のような建物だった。
「急患だ!恐らく脳内で出血がある!」
 園田先生が叫びながら建物に入っていく。
 どう見ても病院には見えなかったが、私も後に続いた。
 建物内も、やはり宿屋にしか見えなかった。
 医療所の人たちと同じような格好をした人達が、手際よく4人がかりで患者を台車から下ろして運んで行く。
 それを確認した園田先生は、仕事は終わりとばかりに振り返った。
「ここは・・・?」
 表情から険しさの消えた園田先生に疑問をぶつけてみる。
 患者を搬送したからにはここで治療をしてもらえるのだろうが、どうしてもそんな施設には見えなかったのだ。
「初めてであれば驚くのも無理は無い、ここは脳専門の治療所だ」
 そう園田先生に言われても、何となく納得できない気持ちが続いていた。


 患者の搬送も終わり、園田先生と共に医療所へと戻る道中。
 不服そうな私の様子を見ていた先生が、珍しく声をかけてくれた。
「あそこが治療所だと言うのが信じられない顔だな」
 四角くて強面の園田先生は、愛想は無くはないがあまり口数が多い方では無い。
 そんな彼が思わず声をかけてしまうくらい変な顔をしてしまっていたようだ。
「信じられないなら今度見学でもさせてもらえばいい」
「見学?」
 脳専門の治療所と言うからには衛生面には気を使うだろうし、外部の人間が「見学させてください」と言ってそうそう受け入れてくれるものだろうか?
 今日だって運ぶだけ運んで帰るということは、気軽に中に入れてもらえる訳でもなさそうだった。
「何か伝手でもあるんですか?」
 ひとつだけ浮かんだ可能性を聞いてみる。
 木村先生ならあるいは、と思ったのだ。
「なんだ聞いていないのか?」
 園田先生は足を止めて、意外そうな顔で振り向いた。
「あそこは幸太郎先生の実家だぞ」
「えええええ??」
 幸太郎先生?あの、チャラ男にしか見えない幸太郎先生?
 意外すぎて驚きが止まらない。ホストクラブが実家だと言われた方がまだしっくりくる。
「驚きすぎだ」
 園田先生が苦笑しながらまた歩き出す。
 先程の宿屋のような治療所にいた人達を思い出すが、暗く重い雰囲気でどう考えてもあの場に幸太郎先生は合わな過ぎた。
 そんな風に喋りながら歩いてたため、あっという間に医療所に帰り着く。
 園田先生が台車を片付けに行き、私はそのまま医療所の戸をくぐった。
 今日の診察はあまり混んでいなかったため、並んでいた外来の列はあと数人のみになっているようだった。
「あ、聖女ちゃーん!おかえりー!」
 今日は終いとばかりに、件の幸太郎先生が受付診療の方から下りてくる。
 やっぱりどこをどう見ても、治療所が実家な人には見えない。
「俺の顔に見とれてるの?」
 考え事をしていたらとんでもない思い違いをされてしまいそうだったので、無言のまま彼に背を向ける。
 少し早いが、おやつの時間の手伝いをするべく草順先生の元へ向かった。


 今日のおやつは草順ソウジュン先生お手製の(使用期限が切れそうな)漢方クッキーだ。
 3日連続だったので正しくは「今日も」だったが。
 早めに外来が終わっていたので、集会の場所で先生方と一緒に食べることにした。
「聖女殿の頑張りで患者さんも減ってきてますよね」
 そんな嬉しいことを言いながらお茶を入れてくれたのは、優しいお兄ちゃんこと郷広サトヒロ先生。
「おかげで漢方が余る」
 いい意味なのか悪い意味なのかはあまり考えずに呟くのは、薬草博士の草順先生。
「くれぐれも無理はなさらないでくださいね!」
 私の分だけ漢方クッキーを取り分けてくれるお世話焼きの妹分は、おリンさんだ。
 歳が近い事もあり、最近はこうやってこの4人でいる時間が増えていた。
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