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第三章 道明様の愛
第二十二話 聖女の務め
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今日は後回しになっていた軽症者の治療のみということで、心は軽かった。いや、正直に言うと、昨夜の事と今朝の事のおかげというのも大きかったが。
そして、いつもより軽やかな聖女の笑顔で本日の患者第一号を治し始めた時だった。
聖女の力が、強くなっていたのだ。
治していたのが擦り傷だったため、周りの先生方は気づかなかったと思う。それでも、確実に力は強くなっていた。
やっぱり原因はアレなのかと思う。けど、少し違うような気もする。
そんな動揺も一切見せずに、午前中の治療がすべて終わる。午後は避難中に体調を崩した患者の対応ということで、私の出番は少なくなりそうだった。
僧房の一角で、医療団のみんなでそろってお昼ご飯を食べる。
こうやって集まれるのはなんだか久しぶりな気がして、凄く嬉しかった。
見渡すと、先生方の顔色もだいぶ良くなっている。昨日の朝なんていつ誰が倒れてもおかしくない顔色だったのを思い出すと、確実に健康を取り戻していた。
「明日の昼食は清水城に招待を受けている」
園田先生からの業務連絡。お偉いさんに謁見するのであれば、今日は早めに治療を切り上げてお風呂に入る必要がありそうだ。
東山城では毎日お風呂に入っていたが、出立してからは体を拭くことしかできていなかったため、お風呂に入れるのは物凄くありがたい。
「移動は明日の朝で問題ないでしょうか?」
「ああ、念のため急患がいないか確認してから移動する」
「午後はこちらに戻るのですよね?逗留はいつまでになりますか?」
気になる話題を全て的確に聞いてくれる郷広先生の存在がありがたい。
私は、聞き耳を立てながらも気にしていない顔で「ごちそうさまでした」と手を合わせた。
「城へ赴くのは昼だけだ。その後はまたこちらへ戻るが、問題がなければ明後日の昼に発とうと思っている」
ということは、今日の夜と明日の夜は道明様と過ごせるかもしれないのか。
園田先生のスケジュールは性急にも思えたが、八ツ笠の地にも患者はいるのだ。ずっとこの地にいれるはずもない。
聖女としての仕事もあと少し、帰ったらまたお福さんに会いに行こうと思った。
「はぁ~気持ちいぃ~」
お湯の温かさに思わず声が出てしまう。
久しぶりのお風呂だ。八ツ笠を立ってからだから、もう4日ぶりか。
あれ、4日ぶりということは、昨晩あの人は、4日もお風呂に入っていなかった私とそういうことをしたのか・・・!
今更恥ずかしくて悶えてしまう。
馬鹿なのか。いや、馬鹿なんだろう。あの人も、私も。
あちらの世界ではありえないことなのに、お風呂に入っていないとかおしゃれをしていないとか化粧をしていないとか、そんな些細な事どうでもよくなってしまうのだ。あの人と一緒にいれる喜びの前には。
でも、綺麗にできるのであればしておきたい。風邪をひくかもしれないけれど今日は髪の毛も洗った。
お風呂で十分温まって、草順先生お手製の石鹸でピカピカになって、なんだか準備万端みたいではあるが、それでもいいと思えるくらいには道明様との時間が楽しみなのだ。
お風呂から上がると、待ち受けていたお凛さんが髪の毛を拭いてくれる。たくさん拭いてくれたおかげで、そこそこ乾いてきて風邪はひかないで済みそうだった。
部屋に戻ると、すでに布団が敷かれていた。お凛さんが「では、お休みなさい」と下がると、一人きりになる。
時間があったので、少しだけ、これからの事を考えた。
殿は医療に力を入れていて、こうして別の領地にまで医師団を派遣している。派遣すればリスクもあるだろうが、きっとそれ以上にメリットは大きいのだろう。
殿の名前と聖女の名前はそのうち全国に大きく広がる。
ここはあちらの世界と全く違う異世界なのか、過去なのか、それともよく似た異世界なのか、それが分かるのはまだまだ先になるだろう。
でも、きっとこれからもこうやって聖女としてあちこちに行かないといけなくなることは確かだ。
聖女として実績を残して、有名になれば、道明様の隣にも立てるのだろうか。
道明様。あの人は、八ツ笠と霧巻が戦にならないように聖雅院の院主になったのを知っている。
聖雅院はいわゆる悪の巣窟みたいなところで、道明様であってもどうにかするには時間がかかるんだろう。
名実ともに聖女として知れ渡れば、彼の役に立てたりしないだろうか。彼の負担を、少しでも減らしてあげられないだろうか。
道明様を待ちながら、私はずっとそんなことを考えていた。
そして、いつもより軽やかな聖女の笑顔で本日の患者第一号を治し始めた時だった。
聖女の力が、強くなっていたのだ。
治していたのが擦り傷だったため、周りの先生方は気づかなかったと思う。それでも、確実に力は強くなっていた。
やっぱり原因はアレなのかと思う。けど、少し違うような気もする。
そんな動揺も一切見せずに、午前中の治療がすべて終わる。午後は避難中に体調を崩した患者の対応ということで、私の出番は少なくなりそうだった。
僧房の一角で、医療団のみんなでそろってお昼ご飯を食べる。
こうやって集まれるのはなんだか久しぶりな気がして、凄く嬉しかった。
見渡すと、先生方の顔色もだいぶ良くなっている。昨日の朝なんていつ誰が倒れてもおかしくない顔色だったのを思い出すと、確実に健康を取り戻していた。
「明日の昼食は清水城に招待を受けている」
園田先生からの業務連絡。お偉いさんに謁見するのであれば、今日は早めに治療を切り上げてお風呂に入る必要がありそうだ。
東山城では毎日お風呂に入っていたが、出立してからは体を拭くことしかできていなかったため、お風呂に入れるのは物凄くありがたい。
「移動は明日の朝で問題ないでしょうか?」
「ああ、念のため急患がいないか確認してから移動する」
「午後はこちらに戻るのですよね?逗留はいつまでになりますか?」
気になる話題を全て的確に聞いてくれる郷広先生の存在がありがたい。
私は、聞き耳を立てながらも気にしていない顔で「ごちそうさまでした」と手を合わせた。
「城へ赴くのは昼だけだ。その後はまたこちらへ戻るが、問題がなければ明後日の昼に発とうと思っている」
ということは、今日の夜と明日の夜は道明様と過ごせるかもしれないのか。
園田先生のスケジュールは性急にも思えたが、八ツ笠の地にも患者はいるのだ。ずっとこの地にいれるはずもない。
聖女としての仕事もあと少し、帰ったらまたお福さんに会いに行こうと思った。
「はぁ~気持ちいぃ~」
お湯の温かさに思わず声が出てしまう。
久しぶりのお風呂だ。八ツ笠を立ってからだから、もう4日ぶりか。
あれ、4日ぶりということは、昨晩あの人は、4日もお風呂に入っていなかった私とそういうことをしたのか・・・!
今更恥ずかしくて悶えてしまう。
馬鹿なのか。いや、馬鹿なんだろう。あの人も、私も。
あちらの世界ではありえないことなのに、お風呂に入っていないとかおしゃれをしていないとか化粧をしていないとか、そんな些細な事どうでもよくなってしまうのだ。あの人と一緒にいれる喜びの前には。
でも、綺麗にできるのであればしておきたい。風邪をひくかもしれないけれど今日は髪の毛も洗った。
お風呂で十分温まって、草順先生お手製の石鹸でピカピカになって、なんだか準備万端みたいではあるが、それでもいいと思えるくらいには道明様との時間が楽しみなのだ。
お風呂から上がると、待ち受けていたお凛さんが髪の毛を拭いてくれる。たくさん拭いてくれたおかげで、そこそこ乾いてきて風邪はひかないで済みそうだった。
部屋に戻ると、すでに布団が敷かれていた。お凛さんが「では、お休みなさい」と下がると、一人きりになる。
時間があったので、少しだけ、これからの事を考えた。
殿は医療に力を入れていて、こうして別の領地にまで医師団を派遣している。派遣すればリスクもあるだろうが、きっとそれ以上にメリットは大きいのだろう。
殿の名前と聖女の名前はそのうち全国に大きく広がる。
ここはあちらの世界と全く違う異世界なのか、過去なのか、それともよく似た異世界なのか、それが分かるのはまだまだ先になるだろう。
でも、きっとこれからもこうやって聖女としてあちこちに行かないといけなくなることは確かだ。
聖女として実績を残して、有名になれば、道明様の隣にも立てるのだろうか。
道明様。あの人は、八ツ笠と霧巻が戦にならないように聖雅院の院主になったのを知っている。
聖雅院はいわゆる悪の巣窟みたいなところで、道明様であってもどうにかするには時間がかかるんだろう。
名実ともに聖女として知れ渡れば、彼の役に立てたりしないだろうか。彼の負担を、少しでも減らしてあげられないだろうか。
道明様を待ちながら、私はずっとそんなことを考えていた。
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