聖女の私にできること第四巻

藤ノ千里

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第八章 道明様と過ごせる時間

第六十三話 報告とお願いと

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 向日ちゃんの診察も終わり、木村先生は先に外来の方へと戻った。
 で、草順に向日ちゃんの食事や諸々の療法を書き出していって貰ってる時に、晴彦がやってきたのだ。
「お帰りなさいませ小瑠璃様」
「ただいま晴彦」
 小坊主姿で、人懐こい笑みを浮かべる晴彦は少し幼くも見える。
 でも、向日ちゃんは初めての人には緊張するのか、私の影に隠れた。
「早速ではございますが、道明僧正様がお呼びでございまする。ご案内してもよろしいでしょうか?」
「あ、じゃあこれは後から届けますね」
「ありがとう草順、よろしくね」
「はい」
 気の利く元同僚に感謝を告げると、今度は向日ちゃん。
 でも彼女は、ニコリと微笑んであげると「大丈夫」と言わんばかりに頷いてくれた。
 ・・・やっぱり可愛いな。
 彼女の手を取りながら、一緒に立ち上がる。人目を避ける布は持ってるし・・・問題なさそうだね。
「晴彦お願い」
「ではこちらへ」
 晴彦に先導してもらいつつ、向日ちゃんの手を引きながら歩いた。
 もちろん、顔には聖女の笑みを称えて、目が合った人には微笑みつつだ。
 人目を引くのは分かりきっていたから、少しでも向日ちゃんが目立たないようにあえて注目を集めながら歩いた。
 近づいてきそうな人は晴彦が対応してくれたお陰で、難なく光来寺に辿り着き、道明様のお部屋へも辿り着く。
 道明様のお部屋の障子は、日中なのに閉まっていた。
「道明僧正様、晴彦です」
「入りなさい」
 許可を貰ってから晴彦が開けた障子の向こう。つまり道明様のお部屋の中。
 そこには、道明様だけじゃない、一松と楠木がいたのだ。
 このお呼び出し、どう考えても旅の報告を聞くためのものだけど、そこに楠木がいると言うだけで嫌な予感がしてくる。
 だってこの人、絶対私に不利になることばっかり言うのが目に見えてるじゃん。
 でも道明様の目が「早くしなさい」と言ってるし、向日ちゃんが人目に触れる時間を短くしてあげたいから仕方なく部屋に入った。
 で、道明様の真ん前に腰を下ろした。
 必然的に向日ちゃんは私の隣で、左手の下座には楠木と一松。あ、晴彦もその隣に座ったのか。
「此度は随分と早い帰りであったな」
 道明様の表情が気持ち猫かぶりなのは向日ちゃんの手前だろうか。
 猫かぶり・・・だけど細められた目元には慈しみが滲んでいて、私の帰りを喜んでくれているのが分かる。
「急いで帰ってきたので」
「だが私の為ではないのであろう?」
「そう・・・なんですけど」
 この感じ、同行者二人のどっちかから軽く報告は受けた後だな・・・。
「どこまで聞きました?」
「軽く一通りは。しかし今一度はなから聞かせてくれ」
「分かりました」
 楠木と向日ちゃんがいる手前だったので少し気恥しさもあったけど、今回の旅で起こったことをかいつまんで道明様にご報告差し上げた。
 と言っても、既に耳にしていたのだろう。道明様はあまり驚く様子もなく話を聞いてらっしゃったから。
 そして、予想通りではあったけど、彼が一番気になったのは向日ちゃんについて、だった。
「その娘御が巫女様であると?」
「そうです。私が『向日』と言う名前をあげました」
 ずっと私の影に隠れているけど、握った手はちゃんと暖かくて変に力も入っていない。
 だから、問題は無さそうだ。
「向日ちゃん、布を取ってもいい?」
「・・・はい」
 小さな返事が聞こえたのを確認してから、彼女の顔を隠す布を取り払った。
 現れた色素の薄い髪と肌。日本人ではない目の色。
 だけど、道明様はあまり驚かなかった。
 そう、驚かなかったのだ。
 あの、木村先生と草順でさえ驚いていたというのに。
 恐るべし大魔王。彼にとっては初めて見るはずのハーフの子なのに一瞬も驚かないなんて。
「合いの子か。歳は?」
「十二歳だそうです」
「十ほどに見えるが?」
「体が弱いので成長が遅いのかと」
 道明様の態度が変わらなかったのに安心したのか、向日ちゃんは恐る恐る顔を上げた。
 ニコリと微笑んであげると、彼女の目が道明様の方を向く。
「医療所にて療養させるのか?」
「あ、それなんですが・・・」
 さっきの話の時に伝えれなかったから、忘れないうちにこの話になってくれて助かった。
 さすがは道明様だ。
「この子、私の侍女にします。ただ体が弱いだけで生活習慣にだけ気を付けていればいいらしいので」
「侍女・・・?」
「駄目ですか?」
 聞き返されてしまったので、ちょっとだけ不安になってしまった。
 でも彼は、優しくフッと笑ってくれたのだ。
「良いに決まっておろう。が、侍女を雇うのであれば田助も交えて話さねばなるまい?」
「あ、そっか」
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