聖女の私にできること第三巻

藤ノ千里

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第二章 道明様との共謀

第十四話 慰労とフリ

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 道明様のお部屋に戻ると、体から力が抜け落ちた。
 倒れそうになる私を、すかさず道明様が支えて、座らせてくれる。
「ありがとうございます」
 まだ全て終わったわけじゃないのに、こんな所で挫けちゃ駄目なのに、道明様の前では弱音を吐きそうになってしまう。
 私はなんて弱いんだろう。
 優しい心を失うことなく、こんなことをしながら今まで生きてきたというこの人は、なんて強いんだろう。
 道明様は私の隣に座り、包み込むように抱きしめてくれた。
 私がやると決めたことを、彼は取り上げないでいてくれる。私が自分で「止める」と言うまでは、信じて任せてくれるつもりなんだ。
 道明様がずっと傍にいてくれる。ならば、私は頑張れる。
 醜悪な心を見て、感じても、あんな風に化け物を見るような目で見られても、この手を罪に染めることになったとしても。道明様がいてくれるなら、私は頑張れる。
「すみれ」
 呼ばれて顔を上げると、悲しそうに微笑む綺麗なお顔があった。
 私の痛みを一緒に背負ってくれるのだ。
 なんて愛おしい人。私の旦那様。
「『小太郎』ですよ」
「そうであったな」
 いつもと立場が逆みたいだ。何だか面白くなってしまいクスクスと笑ってしまった。つられて道明様も小さく笑い声を上げる。
 オレンジ色の光が差し込み始めてはいたが、まだ晩ご飯前。素に戻るには早すぎる。
 なのに道明様が愛おしげな目で見てくるから、思わず目をつぶってキスを受け入れてしまったのだ。
 1回だけかと思ったのに、2回3回と道明様の唇が私のそれを貪る。
 そして、そのまま押し倒されてしまった。
 まだ少し明るすぎるし、それに、人が来てしまうかもしれない。
 首を横に振っても道明様は止めてくれない。それどころかまた、キスが降ってきた。
 いつもはそんな危険犯したりしないのに、様子が変だ。まるで、誰かに見られたいかのようで・・・。
「道明様・・・!」
「しっ、フリだけだ」
 フリ?意味は分からないが、ズボンは易々と脱がされてしまった。道明様は服で私を包み込むように覆い被さると、私に、腰を押し付ける。
 布越しでも彼の体が私を求めているのが分かった。
「小太郎、愛いやつだ」
 耳元で囁きながら道明様は腰を小さく動かす。
 フリって、しているフリってこと・・・?
 確かに挿入ってはいない。だが、逆に言うと挿入っていないという違いだけで、これはもうしている時と同じ状況だった。
「あ、道明様ぁ・・・」
 彼の唇が首筋を撫でた。
 その感触に興奮してしまい、グリグリと押し付けられているだけなのに、それだけなのにもどかしい快感が体を襲う。
 フリってことは誰かに見られてるって事で、という事は演技をしないといけなくて、だと言うのに擦れるから本当に気持ち良くなってしまって。
「小太郎」
 道明様の妖艶な眼差しが私を捉えて、そして噛み付くようなキスが降ってきた。
 彼の舌が、私の口の中を激しく犯して、それに気を取られていると、腰をぐいと引き寄せられた。
 挿入ってしまったかと思った。だって・・・その、気持ちよく、なってしまったから。
 口が離れても、鼻が触れそうな距離に道明様のお顔があった。少し、驚いた顔をしていた。
「そなた・・・」
 一瞬で体が燃え上がってしまうような恥ずかしさが込み上げくる。道明様を突き飛ばしてしまいたいのに、誰かに見られてるかもしれない状況ではそんなことも出来ない。
 せめて、赤くなってしまっているであろう顔を両手で覆って隠した。
 指の隙間から見える道明様は、視線だけで周囲を確認しているようだった。
「道明様」
 小さく聞こえてきたのは、知らない誰かではなく、晴彦さんの声。
「夕餉をお持ちいたしましたが・・・」
 晴彦さんが来たならフリは終わりにして良さそうだ。
 道明様の体が私の上から離れていったことに、少しだけ安心する。
「しばしそこで見張っておれ」
 晴彦さんにそう言うと、彼は服を脱ぎ始めた。
 服を、脱ぎ始めた・・・?
 セクシー過ぎる道明様の素肌が、あっという間に顕になっていく。
 高揚した肌では彼を拒めるわけもなかったが、せめて抗議の意を示すべく、私は彼に背を向けた。
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