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発展編
想い寄せ合って 9
「パパぁ、きょうはたのしかったね」
瑞樹と名残惜しく別れた後、家に着いた途端、おんぶしていた芽生が起きた。
「あぁ、コータくんにも会えてよかったな」
「うん!パパもおにいちゃんとずっといっしょでよかったね」
「うっコイツ!」
流石我が息子。気配りが出来ているなとほくそ笑む。
「あれ?おにいちゃんはどこ?」
背中がモゾモゾと動く。どうやら瑞樹がいないのでキョロキョロと首を動かして探しているようだ。
「瑞樹なら、今日はもう帰ったよ」
「えー!今日もいっしょにねむれるとおもったのに」
「はははっ、芽生も瑞樹が好きか」
「うん!おにいちゃんはすごくやさしいんだよ」
「へぇ……どんな所が」
芽生を玄関で降ろし部屋の明かりをつけながら、興味があったので聞いてみた。
「あのね、あれしなさい!これしなさいっ!っておこらないの。ボクのはなしをちゃんときいてくれるの」
「あぁ成程」
確かに瑞樹は、相手の気持ちに寄り添う優しい心を持っている。
それってなかなか難しいことだ。
特に大人とは厄介な生き物だから、特に目下の者や子供に対して上から目線で物を言ってしまう節があるからな。俺も耳が痛いぞ。
「それにね、おにいちゃんはすてきなアイデアいっぱいもっているんだ。おにいちゃんのおかげでソフトクリームだってよくばりできたよ」
ミックス味のことか。ミルク味とチョコレート味の両方を食べられたことが余程嬉しかったみたいだ。そういえば俺はいつも芽生の意見なんて聞かずに、ソフトクリームは真っ白だと決めつけて、ミルク味しか買ってあげてなかったな。しかし幼心とは愛くるしいものだと、思わず目を細めて芽生のことを見つめた。
「あのね……パパもスキだけど、おにいちゃんはもっとスキ!ねぇまたおとまりにきてもらおうよ。それからどうぶつえんとかこうえんにもいきたいなぁ」
「そうかそうか。パパも瑞樹のことが大好きだから頼んでみよう」
「パパがんばって」
芽生には男同士包み隠さず何でも話している。まだ四歳だから理解できないかもしれないが、俺が瑞樹が好きな気持ちがどういうものかも、きちんと伝えてある。
まぁ……あとは俺の努力次第だな。
それでも今日一日でぐっと進展した関係の未来は明るいと思う。
「さぁ風呂はいって寝るぞ」
「パパ、あしたはなにするの?」
「あしたは家で掃除だよ、芽生も手伝ってくれ」
「えーつまんないの」
「悪いな。でもこのままだと芽生の部屋に瑞樹が来てくれなくなるぞ」
「え!それはいやだー」
日曜日は溜まっている家事をしないといけない。
それまで家庭の事は玲子に全て任せっきりだったが、別れて初めて家事の大変さを知った。平フルで働いていると洗濯物や掃除機など毎日出来ないことも多いし、散らかり放題の子供部屋の流石に片づけもしないとな。晴れるならそろそろ布団も干さないと……あぁくそっ!ちょっと考えるだけで、ミッションが多すぎだろう。
明日も瑞樹と会いたいと願う心は必死に押さえつけて、掃除に明け暮れそうだ。そうだ、せめて布団を干す前に瑞樹が眠ったベッドを拝借しよう。せめて瑞樹の残り香を楽しもうじゃないか。思いついた変態じみた考えにニヤリとしてしまう。
「なぁ芽生、今日はパパが芽生のベッドで寝ていいか」
「んーどうしようかな。おにいちゃんのあとにパパかぁ」
「おい、パパも仲間にいれておくれ」
「かわいそうだからいいよ!」
「おいっ!」
その晩、瑞樹が眠ったベッドに潜り込んだ。
いい年の大人なのに、昨晩ここで瑞樹が一晩過ごしたと思うと胸が高鳴るんだ。すんと嗅ぐと微かに感じる瑞樹の香り。花の香りなのか、これは……花になんて興味なんて全くなかったのに何の花なのか知りたくなる。瑞樹の花にかける情熱も応援したくなる。
更には観覧車のてっぺんでキスした清楚な唇を思い出して、悶えてしまいそうになる。
「パパ、へんなかおーきもちわるいよ」
「ほら、もう眠るぞ」
「おやすみーパパ。そしておにいちゃん」
(お休み瑞樹)
その一言だけ……手早く瑞樹にメールした。
本当はこの胸に抱いて直に伝えてやりたい。そのいつか一緒にこの夢を実現させるためにも、瑞樹の心に寄り添って歩んでいこう。
今はこの微かな残り香を抱くことで我慢しよう。
****
半分だけ空室のアンバランスな部屋に戻ると、一瞬気が滅入った。でも今日一日滝沢さんと芽生くんからもらった幸せの欠片が心を温めてくれた。
一馬……僕はこのまま進んでいいんだよな?
お前の残した言葉を守っていくぞ……
もういないアイツに話しかけ、冷蔵庫に貼ったままのアイツからの書置きを指で辿っていく。
……
瑞樹は俺にとって、ずっと水のような存在だった。瑞樹を抱けばいつも乾いていた心が潤った。そしていつも抱くと花のようないい匂いがして心地良かった。だが俺はもう二度とお前を抱けない。水をやれない。
だけど……瑞樹は水を忘れるな。君を置いていく俺を、恨んでくれ。おこがましいが……どうか幸せになって欲しい。
……
再び……幸せになれるか。
それは僕次第だ。
ならば、幸せになれるよう努力をしていこう。
滝沢さんの想いに、僕の心を寄せていく。
『想い寄せ合って』了
瑞樹と名残惜しく別れた後、家に着いた途端、おんぶしていた芽生が起きた。
「あぁ、コータくんにも会えてよかったな」
「うん!パパもおにいちゃんとずっといっしょでよかったね」
「うっコイツ!」
流石我が息子。気配りが出来ているなとほくそ笑む。
「あれ?おにいちゃんはどこ?」
背中がモゾモゾと動く。どうやら瑞樹がいないのでキョロキョロと首を動かして探しているようだ。
「瑞樹なら、今日はもう帰ったよ」
「えー!今日もいっしょにねむれるとおもったのに」
「はははっ、芽生も瑞樹が好きか」
「うん!おにいちゃんはすごくやさしいんだよ」
「へぇ……どんな所が」
芽生を玄関で降ろし部屋の明かりをつけながら、興味があったので聞いてみた。
「あのね、あれしなさい!これしなさいっ!っておこらないの。ボクのはなしをちゃんときいてくれるの」
「あぁ成程」
確かに瑞樹は、相手の気持ちに寄り添う優しい心を持っている。
それってなかなか難しいことだ。
特に大人とは厄介な生き物だから、特に目下の者や子供に対して上から目線で物を言ってしまう節があるからな。俺も耳が痛いぞ。
「それにね、おにいちゃんはすてきなアイデアいっぱいもっているんだ。おにいちゃんのおかげでソフトクリームだってよくばりできたよ」
ミックス味のことか。ミルク味とチョコレート味の両方を食べられたことが余程嬉しかったみたいだ。そういえば俺はいつも芽生の意見なんて聞かずに、ソフトクリームは真っ白だと決めつけて、ミルク味しか買ってあげてなかったな。しかし幼心とは愛くるしいものだと、思わず目を細めて芽生のことを見つめた。
「あのね……パパもスキだけど、おにいちゃんはもっとスキ!ねぇまたおとまりにきてもらおうよ。それからどうぶつえんとかこうえんにもいきたいなぁ」
「そうかそうか。パパも瑞樹のことが大好きだから頼んでみよう」
「パパがんばって」
芽生には男同士包み隠さず何でも話している。まだ四歳だから理解できないかもしれないが、俺が瑞樹が好きな気持ちがどういうものかも、きちんと伝えてある。
まぁ……あとは俺の努力次第だな。
それでも今日一日でぐっと進展した関係の未来は明るいと思う。
「さぁ風呂はいって寝るぞ」
「パパ、あしたはなにするの?」
「あしたは家で掃除だよ、芽生も手伝ってくれ」
「えーつまんないの」
「悪いな。でもこのままだと芽生の部屋に瑞樹が来てくれなくなるぞ」
「え!それはいやだー」
日曜日は溜まっている家事をしないといけない。
それまで家庭の事は玲子に全て任せっきりだったが、別れて初めて家事の大変さを知った。平フルで働いていると洗濯物や掃除機など毎日出来ないことも多いし、散らかり放題の子供部屋の流石に片づけもしないとな。晴れるならそろそろ布団も干さないと……あぁくそっ!ちょっと考えるだけで、ミッションが多すぎだろう。
明日も瑞樹と会いたいと願う心は必死に押さえつけて、掃除に明け暮れそうだ。そうだ、せめて布団を干す前に瑞樹が眠ったベッドを拝借しよう。せめて瑞樹の残り香を楽しもうじゃないか。思いついた変態じみた考えにニヤリとしてしまう。
「なぁ芽生、今日はパパが芽生のベッドで寝ていいか」
「んーどうしようかな。おにいちゃんのあとにパパかぁ」
「おい、パパも仲間にいれておくれ」
「かわいそうだからいいよ!」
「おいっ!」
その晩、瑞樹が眠ったベッドに潜り込んだ。
いい年の大人なのに、昨晩ここで瑞樹が一晩過ごしたと思うと胸が高鳴るんだ。すんと嗅ぐと微かに感じる瑞樹の香り。花の香りなのか、これは……花になんて興味なんて全くなかったのに何の花なのか知りたくなる。瑞樹の花にかける情熱も応援したくなる。
更には観覧車のてっぺんでキスした清楚な唇を思い出して、悶えてしまいそうになる。
「パパ、へんなかおーきもちわるいよ」
「ほら、もう眠るぞ」
「おやすみーパパ。そしておにいちゃん」
(お休み瑞樹)
その一言だけ……手早く瑞樹にメールした。
本当はこの胸に抱いて直に伝えてやりたい。そのいつか一緒にこの夢を実現させるためにも、瑞樹の心に寄り添って歩んでいこう。
今はこの微かな残り香を抱くことで我慢しよう。
****
半分だけ空室のアンバランスな部屋に戻ると、一瞬気が滅入った。でも今日一日滝沢さんと芽生くんからもらった幸せの欠片が心を温めてくれた。
一馬……僕はこのまま進んでいいんだよな?
お前の残した言葉を守っていくぞ……
もういないアイツに話しかけ、冷蔵庫に貼ったままのアイツからの書置きを指で辿っていく。
……
瑞樹は俺にとって、ずっと水のような存在だった。瑞樹を抱けばいつも乾いていた心が潤った。そしていつも抱くと花のようないい匂いがして心地良かった。だが俺はもう二度とお前を抱けない。水をやれない。
だけど……瑞樹は水を忘れるな。君を置いていく俺を、恨んでくれ。おこがましいが……どうか幸せになって欲しい。
……
再び……幸せになれるか。
それは僕次第だ。
ならば、幸せになれるよう努力をしていこう。
滝沢さんの想いに、僕の心を寄せていく。
『想い寄せ合って』了
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