幸せな存在 ~歩み寄る恋をしよう~

志生帆 海

文字の大きさ
132 / 1,871
発展編

深まる秋・深まる恋 15

「お兄ちゃん、カボチャが『おむすびころりん』みたいに、ころがって来たよ~」
「わっ! 芽生くんありがとう。っていうか、もう着替えたの? 可愛いうさぎさんだね、宗吾さん見て下さい」
「おお! ウサミミつけて、服までモコモコで抱き心地良さそうだな。なんと尻尾までついているのか」
「うん。ほら見て見て!」

 カボチャを持ってお尻をフリフリする芽生くんの様子が可愛かった。そのまま僕と宗吾さんで手を繋いで夜道を歩いた。

 昔、両親にしてもらったことを今度は僕がする。この道は間違っていない。これでいい。そう思える幸せな瞬間だ。

「なぁ芽生、その尻尾と耳をあとでちょっとパパにも貸してくれないか」
「んーなんで?」
「……瑞樹にもつけてみたい」
「宗吾さん!」

 ふぅまったく油断も隙も無い人だな。といいつつ宗吾さんが喜ぶのなら……なんて思ってしまう僕もついにアレの仲間入りなのか。イヤだ。

「おーい!仮装の服が揃ったので、今からくじ引きをするぞ。自分があてたものは絶対に着ること!」

 流さんが張り切った声でブンブンと手を振っている。

 はたして一体何の仮装をすることになるのか。まぁこのメンバー限定だったら何でもいいという吹っ切れた気分にはなっていた。

「なぁ瑞樹は今まで仮装をしたことあるか」
「それは……ありますよ」
「何だって! それはいつだ?」
「いつって……あの、新入社員の余興で……」
「何だって! まさかそれって女装じゃないよな?」
「……まぁ……一応……そうでしたが」
「くそぉ! 」

 宗吾さんがドンドンと地団駄を踏む。そんな大げさな。同期5人全員で酔っ払いながらしたので、そんなやましいものではなかったのに。

「よし決めたぞ。今日は絶対、瑞樹の女装を見る! 」
「はぁ……くじで当たったらちゃんと着ますので、どうか落ち着いて」

 鼻息の荒い宗吾さんを窘めた。何だか宗吾さんって知れば知る程面白い人だ。

「お兄ちゃん~こんなパパでごめんなさい」
「ふふっ大丈夫、だいぶ慣れたよ」
「前はこんなんじゃなかったのに、ヘンだなぁ」

 それぞれがくじを引いた。

 翠さんと流さん、丈さんと洋さん、僕と宗吾さん、皆、顔が真剣だ。薙くんだけは何でもいいのか余裕の態度だった。

 結果発表──

 流さん→レースたっぷりのドレス!
 翠さん→タキシードに仮面の男

 丈さん→魔女!
 洋くん→ドラキュラ伯爵

 薙くん→猫耳カチューシャと尻尾

 宗吾さん→ナース!!
 僕→白衣の医師

 翠さんと洋くんと薙くん、僕は安堵のため息。
 他の面々の悲鳴が……すぐさま聞こえてきた。

「ナースなんてありえん! 嫌だ!」
「俺は着ないぞ、ド……ドレスなんて絶対にありない!」
「流兄さん、一体何でこんなものを買ったのです? この魔女の衣装は胸も開き過ぎだし、スカート丈も短すぎて破廉恥だ!」

 わわっ、すごい! 真っ二つに分かれたな。よりによってそっち? と言いたくなるのは分かる。宗吾さんと流さん丈さんは大ブーイングだ! 

 そこに翠さんの『鶴の一声』

「君たちね……『武士に二言なし』だろう。諦めて着て見せておくれ。僕は見たいな。なぁ流……駄目かな」
「翠兄さんは……はぁぁ、こうなったらもうヤケクソだ!」

 本当にお気の毒だ。三人は衣装を抱えてブツブツ言いながら隣の和室に入ったが、どうなることやら。

 一方、残された僕達は平和に着替えることが出来た。それにしても次、あの和室の扉が開くと、一体どんな光景が待っているのか……かなり怖いな。

 僕は医師の白衣を羽織ってみた。なんだか学生時代の理科の実験を思い出すな。洋くんはドラキュラ伯爵になった。妖しい男の色気が漂っている。翠さんはタキシードに仮面姿。これはまた素晴らしい。このまま仮面舞踏会に行けそうな風格だ。薙くんは可愛い猫耳で、とてもキュートで軽やかだった。
 
「可愛いですね!」「決まっていますね」「キュートだね」

 お互いにまともな姿を大いに喜びあった。

「わーお兄ちゃんたちも変身したんだね。みんなすごくにあってるよー」

 芽生くんにも受け入れてもらえて大満足だ。僕達は芽生くんと一緒に記念撮影をして仮装を楽しんだ。

 やがて隣の部屋から不平不満の声が聞こえてきた。ちらっと頭の中で宗吾さんのナース姿を想像してみると、全然似合わなくて……悪いけれども気持ち悪くなった。

「どっドレスが、や、破れそうだ。レースがキモイ! 」
「ひぃーもう駄目。その逞しいスネ毛の足に網タイツってないだろー」
「スカートがパツンパツンで歩けん。しかも胸元のボタンが止まらない……く、くるしい」

 三者三様の悩みがあるようで、どうにも床をズルズルと這い蹲っているような変な音がする。

「お……おにいちゃん、怖い。おばけがくるかも」
「う……うん」

 襖がやがてゆっくりと横に開く……

 そこには!


感想 88

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています