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発展編
花の行先 11
鏡に映る自分と、目が合った。
頬を赤く染めあげ瞳を潤ませている様子が無性に恥かしくて、ギュッと目を瞑ってしまった。
「瑞樹……瑞樹、こっちを向け、俺を見ろ」
「んっ、ん……」
そっと目を開くと、宗吾さんがもう一度僕を強く抱きしめ、唇を重ねてきた。
ぴったりと唇を覆われ塞がれて、甘噛みされたり、キュッと吸われたり……強弱をつけ唇から丁寧に愛撫されていく。
何度も何度も、角度を変えては同じことが繰り返された。
途中で息が苦しくて唇を薄く開くと、宗吾さんの舌がすぐにやってきて絡み取られた。
「宗吾さん、あっ──」
舌を吸われ口腔内をじっくりと弄られると、頭がぼーっとして、一気に酔いが回ってしまった。
僕の股間も宗吾さんの股間のモノも深い口づけだけで、十分に興奮し始めていた。
僕は欲情している。
もっともっと宗吾さんに触れたい、宗吾さんが欲しい。
日中久しぶり抱いてしまった不安と我慢を、綺麗に拭い去って欲しい。
僕の宗吾さんだと、言葉だけでなく躰でも確かめたかった。
その一方で恥かしさが波のようにやってくるので、その度に目をキツく閉じてしまう。
春に宗吾さんに抱かれるようになってから、気持ち良すぎて涙が零れ落ちる事を知った。寂しさでも、哀しみでもなく……ただただ体が愛撫に過敏に感じ生まれる新鮮な涙が、頬を伝い落ちていく。
濡れた頬を宗吾さんが舌で舐めてくれる。
くすぐったい──
「瑞樹……なぜ? 目を開けてくれ」
宗吾さんに心配をかけたくないので目を開けて、微笑んで見せた。
「なぁ……この涙の理由を教えてくれないか。やっぱり俺のせいか、君を悲しませたよな。ごめん」
今日の宗吾さんはとても素敵だ。精悍な男らしい顔で心配そうにじっと覗き込まれると、本当の理由を言うのが躊躇われた。
「……」
「さぁ言ってくれ。俺には何でも話して欲しいよ、瑞樹……」
唇を指の腹で優しく撫でられ、言葉を促される。
「あの……違うんです。その、宗吾さんとのキスが気持ち良すぎて」
「うっ……また可愛いことを……なら、もっとしてやる!」
「あっ!あ、あ、あっ……」
『キスの雨』という言葉を聞いたことがある。
今僕に絶え間なく降って来るものは、まさにそれだ──
暖かく優しい雨が軽いキスとして、頬……鼻の頭……顎、瞼と次々に降り注ぐ。耳朶も甘噛みされて、腰も震える。
宗吾さんに沢山触れてもらえるのが嬉しい。
「もっと……もっと……僕に触れて……」
気が付くと……心の声が外に漏れていた。
「ここで、いいのか」
「はい」
ここは普段と違う場所だ。
玄関で交わすキスが新鮮で、さっきからドキドキが止まらない!
下駄箱の上にかけた家の鍵が、僕たちが動く度にカチャカチャと音を立てる。
自動点灯の照明は、僕たちが動いている限り消えない。
足元には芽生くんの運動靴が見えた。
こんな日常的な場所で……いけないと思うのに、僕たちはキスを止められなかった。
「どうしよう」
「とまらないな」
お互いの不安をお互いで埋め尽くしたい。
宗吾さんの唇が、更に意志を持って動き出す。
首筋を舐められ咽喉にも触れられ……そのまま着ていたリネンシャツの釦を外されて、胸元を露わにされた。
「ん、あっ……あぁ」
鎖骨の窪みは、特に舌先で丹念に舐められた。
熱い……躰が熱い!
開いたシャツの隙間から手をぐっと奥に差し込まれ、直接指で胸の尖りを撫でられた。
「ううっ──」
宗吾さんがいつもそこばかり丹念に弄るせいで、過敏になった先端がキュッと締まり固くなるのを感じた。
男でも胸で感じる。こんなにも──
「瑞樹のここ……すっかり弱くなったな。こんなに尖らせてイケナイ子だ」
煽られる言葉にすら、今日の僕は震えてしまう。
今日の僕は淫らだ──
宗吾さんの肩越しに抱かれている自分と鏡の中で目があって、それがまた羞恥を煽ってくる。
気が付くとシャツはもう……全開になっていた。
もっと大きく手のひら全体で胸を揉まれ、両方の胸の尖りを摘まみ上げられたり、指先で捏ねられて……喘ぐような声が漏れそうになった。
「ああぁ……いやっ、いやっ」
玄関先という経験がない場所で煽られて、首を左右に振り乱れてしまう。
「んんっ──」
その時、廊下の外をコツコツと歩く足音が聞こえて、思わず自分の手で口を塞いで息を呑んだ。宗吾さんも慌てて僕の頭を掻き抱き、胸元にぎゅうっと押し付けて守ってくれた。
「大丈夫か」
「はぁ……もう宗吾さんはっ」
「瑞樹こそ、こんな場所でこんなに感じて」
「もう……変に……なりそうでした」
「俺もすごく煽られたよ。品行方正な君が、玄関先で乱れる姿が絶品だった」
「そんな言い方は……恥ずかしいだけです」
鏡に映る僕はとても満ち足りた顔と、物足りなさそうな顔の両方を持っていた。
「こんな機会滅多にないから、いつもと違う場所で君を抱きたい」
「もうっ──」
何を言いだすのかと思ったら……でもそう言われると、僕の躰の芯も痺れて甘い気持ちが押し寄せ疼いてしまう。
「今日の僕は……宗吾さんに……飢えています」
宗吾さんの胸元に頬をくっつけて彼の早い鼓動を聞きながら告げると、肩を抱く力がますます増してしまった。
「あっ、駄目です、もうっ!」
「駄目だ、もう止まらない」
「とっ……とりあえず靴を脱ぎましょうか」
「確かにそうだな」
お互いまだ……靴も脱いでいないことに気が付いて、何だか可笑しくなった。
こんなにお互いがお互いに飢えていたなんて──
「あーあぁ俺たち……がっつき過ぎだな」
「ですね、くすっ」
お互いの額をコツンと合わせ、笑ってしまった。
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