405 / 1,865
成就編
夏便り 4
しおりを挟む
カーテンに包まれ、宗吾さんからの熱烈なキスを受け続けた。
「ん……んうっ……」
この部屋はレースのカーテンを室内側にしてドレープカーテンを窓側へ吊るすフロントレーススタイルになっているので、僕が動けば動く程、柔らかいレースが躰にまとわりついてくる。
まるで女性のドレスのように、ふわふわと……
「……男の瑞樹がいいんだよ。俺は」
まるで僕の仄暗い心を見透かしたように、宗吾から言われて恥ずかしくなった。
今日……夏祭りで浴衣姿の女性が宗吾さんの傍に立つと、とてもお似合いに見えた。浴衣姿だと女性が、より女らしく見えるから、気になってしまった。
僕も宗吾さんより背も低く華奢だが、女性とは全く違う体つきだ。丸みもなければ触り心地だって硬い。
「おい、瑞樹? 馬鹿だな、さっきから何考えている?」
「すみません……浴衣の女性にあてられたみたいです」
「ん?」
「だって宗吾さんと並ぶとお似合いで……うっ……」
こんなことで、泣きべそ?
僕はどうしちゃったのか。
「おいおい、ちょっと待てよ。あー泣くな。俺、どうしたらいいんだ? 俺は浴衣の女性が真横にいても、瑞樹の事ばかり探してしまうのに。いつも君の事で頭が一杯なのに……」
「うっ僕、変なこと言ってすみません。こんなに欲張りではなかったはずなのに」
「あー可愛いな。そうか、これって瑞樹の我が儘か!いつも聞き分け良すぎるのは芽生だけじゃないよ。瑞樹もだ。瑞樹だって今までしてこなかった分、自由になれよ!」
宗吾さんと言う人は、なんと懐が広く大らかなのか。
もう27歳にもなる僕に、そんなことを……
やっぱり泣けてくる。
「さぁ俺に沢山我が儘を言ってくれよ」
口づけの合間合間に誘導され、ずっと言い出せなかった言葉が込み上げてきた。
「う……僕も……浴衣を……着てみたかったです」
自分でも驚いてしまう。
こんな事、口走るつもりなかったのに!
「浴衣って、まさか女物?」
「ちっ違いますよ。男物です」
「だよな。よかった。俺も断然そっちがいいんだ」
僕には女装をしたい願望はない。
宗吾さんも同じ気持ちのようで安堵した。
男の僕をそのまま愛して欲しい。
僕を僕のまま……愛してもらう。
それが一番嬉しい事だ。
自分で言った事なのに、急に恥ずかしくなってしまった。
「あ……あの、やっぱり、今のは聞かなかった事にして下さい」
「いやバッチリ聞いたぞ」
「もうっ――」
宗吾さんは僕の動揺とは裏腹に、とても嬉しそうだった。
「買いに行こう! 俺も今日ずっと思っていたよ。瑞樹に清楚な浴衣を着せたら、さぞかし似合って綺麗だろうなって」
「本当に?」
「あぁ芽生にも買ってやりたいし、よし早速、明日行こう」
「宗吾さんって……やっぱり行動力ありますね」
「それが取り柄さ」
コツンと額を合わせて笑いあった。
「ベッドに行くか。それともここで」
「絶対、ベッドがいいです」
「そうだな。俺にもご褒美をくれ」
「くすっ焼きそばの屋台のお仕事、お疲れ様でした」
「もう腹ペコだ」
「え? でも、さっき焼きそばのお土産を沢山食べたのに?」
「可愛いね。君に飢えてるのさ」
ベッドに仰向けに寝かされ、宗吾さんにガバッと抱きしられた。
「待ち遠しかった!」
「そ、宗吾さん、明日は浴衣を買いに行くから……ほどほどにしてください!」
「心に留めておく」
「わっ……ちょっと待って下さい。もう、最近しつこすぎますよー」
口では抵抗しつつ、沢山愛してもらいたいと願い、甘える夜だった。
****
翌朝、瑞樹よりも先に起きた。
昨日彼を抱いた興奮が、まだ躰の隅々に残っているのを感じていた。
そして、まだ俺の横でぐっすりと眠っている瑞樹……
「君の寝顔って、結構あどけないんだよな。あー可愛いな」
幸せそうに眠る柔らかな頬をツンツンすると、自然に笑みが漏れてしまう。
「やっぱり、ほどほどに出来なくて……ごめんな、君が可愛すぎるのが悪い」
先にシャワーを浴びていると、芽生が起きて来た。
「パパ、おはよう。あ、いいな、おふろーボクも入りたい」
「なんでだ?」
「おきたら、汗びっしょりできもちわるいんだもん」
「本当だ。汗疹が出来るといけないから、おいで」
「うん」
パジャマを脱ぎ捨てた芽生が、浴室に勢いよく飛び込んで来た。まだお腹がぽっこりの可愛い幼児体型に、目を細めてしまう。
「パパーきのうのおまつりたのしかったね。こんどは花火がいいなぁ」
「それもいいな。浴衣を着て行こう」
「でも……ボクもってないよ」
「今日買いに行くぞ」
「え、本当? わーいわーい!」
嬉しさで勢い余った芽生が、裸のままリビングに飛び出してしまった。
「おい待て!ちゃんと服着ないと」
「まだいいよ~だって暑いもん」
「ははっ、それは分かるが」
「パパだっておなじだよ」
「それは芽生を追いかけているからだろう」
お互いに裸のまま居間を駆け回っていると、寝室の扉が静かに開き瑞樹が目を擦りながら起きて来た。
「ん……おはようございます。あの……さっきからドタバタしてますが……下から苦情がきちゃいますよ」
「おっと、そうだな」
「パパ、ストップ!」
「あれ? 芽生くんもいたんですか」
瑞樹がパッと顔を上げて、途端にギョッとした表情になった。
「な、な、なんで!! 朝から二人とも裸なんですかー! それに床、濡らさないでくださいよぅ……掃除しないと。ううっ、まだ眠いのに……」
瑞樹の声が、虚しくリビングに響いた。
「えーでも、おにいちゃんってば! おにいちゃんも半分おなじだよ」
「何言って? 僕は、ほら、ちゃんと着ているよ」
瑞樹は自分の胸元を慌てて見つめパジャマを確認し、ホッとしていた。
うむ、確かに……
パジャマは着ているもんな。
でも俺のパジャマで、上のみだけどな。
「あっ、え?わぁっ……!!!」
俺の大きなパジャマの、上のみ。
そこからすらりとした生足が伸びていた。
やっぱり太腿に色香があるなぁ……
でも大丈夫、パンツはちゃんと履いているぞ。
「ん……んうっ……」
この部屋はレースのカーテンを室内側にしてドレープカーテンを窓側へ吊るすフロントレーススタイルになっているので、僕が動けば動く程、柔らかいレースが躰にまとわりついてくる。
まるで女性のドレスのように、ふわふわと……
「……男の瑞樹がいいんだよ。俺は」
まるで僕の仄暗い心を見透かしたように、宗吾から言われて恥ずかしくなった。
今日……夏祭りで浴衣姿の女性が宗吾さんの傍に立つと、とてもお似合いに見えた。浴衣姿だと女性が、より女らしく見えるから、気になってしまった。
僕も宗吾さんより背も低く華奢だが、女性とは全く違う体つきだ。丸みもなければ触り心地だって硬い。
「おい、瑞樹? 馬鹿だな、さっきから何考えている?」
「すみません……浴衣の女性にあてられたみたいです」
「ん?」
「だって宗吾さんと並ぶとお似合いで……うっ……」
こんなことで、泣きべそ?
僕はどうしちゃったのか。
「おいおい、ちょっと待てよ。あー泣くな。俺、どうしたらいいんだ? 俺は浴衣の女性が真横にいても、瑞樹の事ばかり探してしまうのに。いつも君の事で頭が一杯なのに……」
「うっ僕、変なこと言ってすみません。こんなに欲張りではなかったはずなのに」
「あー可愛いな。そうか、これって瑞樹の我が儘か!いつも聞き分け良すぎるのは芽生だけじゃないよ。瑞樹もだ。瑞樹だって今までしてこなかった分、自由になれよ!」
宗吾さんと言う人は、なんと懐が広く大らかなのか。
もう27歳にもなる僕に、そんなことを……
やっぱり泣けてくる。
「さぁ俺に沢山我が儘を言ってくれよ」
口づけの合間合間に誘導され、ずっと言い出せなかった言葉が込み上げてきた。
「う……僕も……浴衣を……着てみたかったです」
自分でも驚いてしまう。
こんな事、口走るつもりなかったのに!
「浴衣って、まさか女物?」
「ちっ違いますよ。男物です」
「だよな。よかった。俺も断然そっちがいいんだ」
僕には女装をしたい願望はない。
宗吾さんも同じ気持ちのようで安堵した。
男の僕をそのまま愛して欲しい。
僕を僕のまま……愛してもらう。
それが一番嬉しい事だ。
自分で言った事なのに、急に恥ずかしくなってしまった。
「あ……あの、やっぱり、今のは聞かなかった事にして下さい」
「いやバッチリ聞いたぞ」
「もうっ――」
宗吾さんは僕の動揺とは裏腹に、とても嬉しそうだった。
「買いに行こう! 俺も今日ずっと思っていたよ。瑞樹に清楚な浴衣を着せたら、さぞかし似合って綺麗だろうなって」
「本当に?」
「あぁ芽生にも買ってやりたいし、よし早速、明日行こう」
「宗吾さんって……やっぱり行動力ありますね」
「それが取り柄さ」
コツンと額を合わせて笑いあった。
「ベッドに行くか。それともここで」
「絶対、ベッドがいいです」
「そうだな。俺にもご褒美をくれ」
「くすっ焼きそばの屋台のお仕事、お疲れ様でした」
「もう腹ペコだ」
「え? でも、さっき焼きそばのお土産を沢山食べたのに?」
「可愛いね。君に飢えてるのさ」
ベッドに仰向けに寝かされ、宗吾さんにガバッと抱きしられた。
「待ち遠しかった!」
「そ、宗吾さん、明日は浴衣を買いに行くから……ほどほどにしてください!」
「心に留めておく」
「わっ……ちょっと待って下さい。もう、最近しつこすぎますよー」
口では抵抗しつつ、沢山愛してもらいたいと願い、甘える夜だった。
****
翌朝、瑞樹よりも先に起きた。
昨日彼を抱いた興奮が、まだ躰の隅々に残っているのを感じていた。
そして、まだ俺の横でぐっすりと眠っている瑞樹……
「君の寝顔って、結構あどけないんだよな。あー可愛いな」
幸せそうに眠る柔らかな頬をツンツンすると、自然に笑みが漏れてしまう。
「やっぱり、ほどほどに出来なくて……ごめんな、君が可愛すぎるのが悪い」
先にシャワーを浴びていると、芽生が起きて来た。
「パパ、おはよう。あ、いいな、おふろーボクも入りたい」
「なんでだ?」
「おきたら、汗びっしょりできもちわるいんだもん」
「本当だ。汗疹が出来るといけないから、おいで」
「うん」
パジャマを脱ぎ捨てた芽生が、浴室に勢いよく飛び込んで来た。まだお腹がぽっこりの可愛い幼児体型に、目を細めてしまう。
「パパーきのうのおまつりたのしかったね。こんどは花火がいいなぁ」
「それもいいな。浴衣を着て行こう」
「でも……ボクもってないよ」
「今日買いに行くぞ」
「え、本当? わーいわーい!」
嬉しさで勢い余った芽生が、裸のままリビングに飛び出してしまった。
「おい待て!ちゃんと服着ないと」
「まだいいよ~だって暑いもん」
「ははっ、それは分かるが」
「パパだっておなじだよ」
「それは芽生を追いかけているからだろう」
お互いに裸のまま居間を駆け回っていると、寝室の扉が静かに開き瑞樹が目を擦りながら起きて来た。
「ん……おはようございます。あの……さっきからドタバタしてますが……下から苦情がきちゃいますよ」
「おっと、そうだな」
「パパ、ストップ!」
「あれ? 芽生くんもいたんですか」
瑞樹がパッと顔を上げて、途端にギョッとした表情になった。
「な、な、なんで!! 朝から二人とも裸なんですかー! それに床、濡らさないでくださいよぅ……掃除しないと。ううっ、まだ眠いのに……」
瑞樹の声が、虚しくリビングに響いた。
「えーでも、おにいちゃんってば! おにいちゃんも半分おなじだよ」
「何言って? 僕は、ほら、ちゃんと着ているよ」
瑞樹は自分の胸元を慌てて見つめパジャマを確認し、ホッとしていた。
うむ、確かに……
パジャマは着ているもんな。
でも俺のパジャマで、上のみだけどな。
「あっ、え?わぁっ……!!!」
俺の大きなパジャマの、上のみ。
そこからすらりとした生足が伸びていた。
やっぱり太腿に色香があるなぁ……
でも大丈夫、パンツはちゃんと履いているぞ。
14
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
生まれ変わりは嫌われ者
青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。
「ケイラ…っ!!」
王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。
「グレン……。愛してる。」
「あぁ。俺も愛してるケイラ。」
壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。
━━━━━━━━━━━━━━━
あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。
なのにー、
運命というのは時に残酷なものだ。
俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。
一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。
★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる