幸せな存在 ~歩み寄る恋をしよう~

志生帆 海

文字の大きさ
535 / 1,865
成就編

恋満ちる 33

しおりを挟む
「葉山先輩、どうして起こしてくれなかったんですかー」

 朝食のビッフェ会場で菅野と和やかに談話していると、金森がボサボサ頭のまま、すっ飛んできた。

「……よく眠っていたからだよ。ところで昨日の記憶って、ある?」
「いえ、全然ないっす! オレ、いつの間に部屋に? あー先輩と部屋で酒飲んで語りたかったのに、残念です。しかし、よく眠った」
「……イビキがひどかったぞ」

 あまりの能天気ぶりに、僕にしては珍しく嫌味の一つでも言いたくなってしまった。

「へへっ、やっぱ、そうでした? 実は前の彼女にも怒られて、あー今度の彼女にも言われちゃうかな?」
「はぁ?」

 彼女がいるのに、僕の女装姿に女だったらとか……言うなよ。軽薄な奴だな。
 
 そう口に出したくもなったが、ぐっと我慢した。

 とにかく金森鉄平とは、残念ながら分かり合えない部分がある。こういう人間とは、やはり適度な距離を保つのが一番だ。

 僕は、また一つ学んだ。人間には相性というものが存在すると。

「ほらほら、金森はあっち行け! 葉山と俺は、楽しく食事中だ」
「オレも同席は駄目っすか」
「駄目にきまってる!!」

 菅野が金森を追い払ってくれ、僕を心配そうに見つめてきた。

「葉山、あいつ昨日大丈夫だったか」
「……大丈夫ではなかったけれども、大丈夫だったよ。菅野のお陰だよ。宗吾さんに部屋番号を教えてくれてありがとう。助かった」
「そうか。やっぱり役に立ったのか。だってさ、好きな人と同じ宿にいるのに、会わない方が不自然だろう」

 そうか……もう無理しなくていいんだな。

 僕は我慢したり無理するのが習慣になっていると、また反省してしまう。

「菅野はよく気が利くし、優しいし、どうしていい人と巡り会わないのか不思議だよ」
「ううう、みずきちゃんだけだよー! そんなこと言ってくれるのは」

 本音だよ。すごく支えられている。

 昨日だって、扉を開けたらすぐに宗吾さんがいてくれて……怯える僕を間髪入れずにフォローしてもらえたのは、やはり菅野のお陰だ。

「葉山……俺さ、実はお前達の恋愛に感動しているんだぜ」
「何に?」

 朝からこんな会話をして大丈夫かとも思ったが、幸い周りには社内の人はいない。

「そのさ、男女の恋愛だってままならないことが多いのに、葉山たちって、本当に毎日が楽しそうで……なんていうのかな、ピュアだよ! お互いの存在自体を喜びあえる関係って、なかなか、ないだろう。しかも一緒に時を過ごせば過ごすほど、深まっていくっていうの? すごいなって、いつも思っている」
「ありがとう。嬉しい言葉だよ」

 今朝……宗吾さんのお母さんからも、似た言葉を送ってもらったばかりだ。

 秋が深まっていくように、宗吾さんと僕の恋もまた一段と深みを増したのだろうか。周りから見ても、そんな風に見えているなんて、嬉しい。

 去年より今年、過去より現在、今日より明日、いつも前を見て歩んでいきたい。

 本音を言うと……心の奥底で、間もなくやってくる11月が怖かった。

 でも宗吾さんの深い愛に包まれていれば、大丈夫だ。

 きっとあっという間に、11月は過ぎていくだろう。

 もう二度とあんなことは起きないのだから。

 秋が満ちるように、僕たちの恋も満ちて行く──

                        『恋満ちる』 了





あとがき(不要な方はスルーです)

****

社員旅行を通して、菅野くん視点の交えて
宗吾さんと瑞樹の深まる恋を1か月かけて掘り下げてみました。
季節は12月ですね。(クリスマスのお話……ずれ込みそうです)

瑞樹にとっての悪夢の11月は簡潔に飛ばして、楽しい12月に入りたいです。
いつも読んで下さってありがとうございます。

季節がリアルと、ずれずれですが、楽しんでいただけたら嬉しいです!
しおりを挟む
感想 85

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

生まれ変わりは嫌われ者

青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。 「ケイラ…っ!!」 王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。 「グレン……。愛してる。」 「あぁ。俺も愛してるケイラ。」 壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。 ━━━━━━━━━━━━━━━ あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。 なのにー、 運命というのは時に残酷なものだ。 俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。 一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。 ★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

処理中です...