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小学生編
HAPPY SUMMER CAMP!⑯
「では今から座禅を始めましょう」
「翠さん、質問です! そもそも座禅って何のためにするんですか」
瑞樹くんの恋人の宗吾さんは、明るくハキハキしていて嫌味がない。
「座禅とは姿勢を正して座り、精神を統一させ、自分と向き合う仏教の修行方法のことですよ。自分自身の心を静かに見つめ直す良い機会になりますから、宗吾さんも是非どうぞ」
「なるほど。それで、どんな良いことが?」
「僕は座禅には三つの魅力があると思っています。まずは日頃つい緩んでしまう姿勢を調えられる良い機会になり、それから呼吸を整えることで心が落ち着きます。そして極めつけは……沸き起こる煩悩を押さえ、不安を解消する機会になるかと」
静かに説くと、宗吾さんはフンフンと感心し頷いてくれたので、座禅の基本的な作法、つまり座り方を教えてあげた。
「このように座って下さい」
勝手知ったる流と小森くんは、いち早く目を閉じて呼吸を整え始めた。
丈と洋くんは月影寺で何度かしたことがあるので、それに続く。
二人とも上手になったね。
「オレもやる!」
「薙も?」
薙は今まで座禅になんて興味がなかったのに、積極的に参加してくれるのが嬉しい。
「父さん、手はこうでいいの?」
「そうだよ。薙、上手だね。素質があるようだ」
「そ、そうかな」
薙の心が、最近ずっと僕の方を向いている。
それが嬉しくて、目を細めてしまうよ。
「イテテ……あわわっ!」
宗吾さん?
しっかり鍛えているようなのに、身体が随分固いようだ。足が組めずに後ろにひっくり返ってしまった。
「だ、大丈夫ですか。あまり無理せずに」
「いや、今日は煩悩を振り払わねば!」
「……努力あるのみです」
宗吾さんは足を組むのに一苦労。じっとしているのも一苦労。
見れば滝のような汗を流しながら、顔をしかめている。
まるで苦行のようだ。
うーん、よほど煩悩が強いのか。
「宗吾、唸るな」
「流、だが……これは辛い。じっとしていられん!」
あまりに五月蝿いので流に叱られる始末で、僧侶としてあるまじきことだが苦笑しそうになって困った。
テントを囲むように座禅を組む僕たちを、隣のログハウスの女性たちが窓からじっと見ているような気がした。興味があるのなら、是非とも挑戦して欲しい。
「どうぞ……座禅にご興味ある方ならどなたでも参加出来ますよ」
そう窓に向かって言葉を投げかけてみたが……気のせいだったのか、誰も出ては来なかった。
じりりと流れる汗。
五月蠅いほどの蝉の鳴き声。
降り注ぐ夏の太陽。
鍛錬し、心を鍛えていこう。
心は、ただ強く硬くすればいいのではない。
しなやかな心を作ることが大切だ。
「煩悩、雑念……消えろ、消えろ……消えろぉぉー!」
「おい、いい加減に静かにしろよ」
「だが、流……俺に宿る煩悩が、なかなか出て行ってくれないんだ」
「まったく、宗吾は……よし、俺が活をいれてやろう」
「た、頼む!」
「煩悩よ……退散せよ。ブツブツ、ブツブツ……」
宗吾さんの独り言が妙に切羽詰まっていて、最後には皆で笑ってしまった。
これもまた一興だ。
「翠は一人涼しい顔してんな」
「流……そんなことはないよ」(笑いを我慢しているんだよ)
「余裕がありそうだな。夜這いしていいのか」
「な、何を言って……」
座禅終了後、流に耳元で甘く囁かれて、修行が台無しだ。
一方、宗吾さんは座禅が効いたのか、煩悩が抜け落ちたようなスッキリとした顔をしていた。
「翠さん、ありがとうございます。これで今夜は平穏無事に過ごせそうですよ」
「そうですか。それは良かったです」
宗吾さんに向かって合掌していると、向こうから声がした。
「宗吾さん~」
「パパぁ~」
どうやらプールを終えた瑞樹くんたちが戻ってきたようだ。
「おぅ! もうプールはいいのか」
「はい! 堪能しました!」
ところが宗吾さんは、瑞樹くんを見るなり顔を真っ赤にした。
「み、瑞樹……その格好は!」
「え? あぁ……結局僕たちも水遊びをしちゃいました」
照れ臭そうに笑う瑞樹くんは、僕から見ても可憐だった。ただ……男同士なら気にすることもないのだが、瑞樹くんの白いTシャツが濡れて身体にぴったり張り付いているのが何とも言えなく艶っぽい。身体のシルエットが分かりすぎて、目のやり場に困るような。
「あああああ~‼︎ 瑞樹ぃ~」
ボンッ‼と宗吾さんの煩悩が復活する音がしたような……
宗吾さんは、急いで着ていた黒いTシャツを脱いで、瑞樹くんに被せた。
んん?
今度は宗吾さんが上半身裸体になり、瑞樹くんが真っ赤になった。
「そ、宗吾さん~ こここ、困ります……き、着替えてきます」
しどろもどろになって半泣きの瑞樹くんはテントに逃げ込んでしまい、一方宗吾さんは豪快に空に向かって笑っていた。
「ふぅ~生き返った!」
そこに、菫さんが着替えを持ってやってきてくれた。
「いっくんも芽生くん、向こうでお着替えしましょ!」
プールで遊んだ子供たちは、そろそろお昼寝タイムかな?
ふと薙が3歳の頃、区営プールに行ったのを思い出した。
あの頃の薙は幼児体型で、お腹がぽっこり丸くて可愛かったな。
今……隣に立つ薙ぎのすらりとした姿を見つめて、思わず目を細めてしまった。
「そう言えば……父さんと昔プールに行ったの思いだしたよ」
「僕も思い出した所だよ」
「オレさ……父さんと出掛けられるのが嬉しくて、はしゃいでいたよな」
「うん、帰りは眠ってしまって、僕がおんぶしたね」
「うん……それも思い出した。父さん、ありがとう」
すれ違ってばかりいた息子だが、ちゃんと……幸せの種を沢山蒔いてくれていたんだね。
こうやって優しい言葉を、今もらえるのだから。
「僕の方こそ、ありがとう」
「翠さん、質問です! そもそも座禅って何のためにするんですか」
瑞樹くんの恋人の宗吾さんは、明るくハキハキしていて嫌味がない。
「座禅とは姿勢を正して座り、精神を統一させ、自分と向き合う仏教の修行方法のことですよ。自分自身の心を静かに見つめ直す良い機会になりますから、宗吾さんも是非どうぞ」
「なるほど。それで、どんな良いことが?」
「僕は座禅には三つの魅力があると思っています。まずは日頃つい緩んでしまう姿勢を調えられる良い機会になり、それから呼吸を整えることで心が落ち着きます。そして極めつけは……沸き起こる煩悩を押さえ、不安を解消する機会になるかと」
静かに説くと、宗吾さんはフンフンと感心し頷いてくれたので、座禅の基本的な作法、つまり座り方を教えてあげた。
「このように座って下さい」
勝手知ったる流と小森くんは、いち早く目を閉じて呼吸を整え始めた。
丈と洋くんは月影寺で何度かしたことがあるので、それに続く。
二人とも上手になったね。
「オレもやる!」
「薙も?」
薙は今まで座禅になんて興味がなかったのに、積極的に参加してくれるのが嬉しい。
「父さん、手はこうでいいの?」
「そうだよ。薙、上手だね。素質があるようだ」
「そ、そうかな」
薙の心が、最近ずっと僕の方を向いている。
それが嬉しくて、目を細めてしまうよ。
「イテテ……あわわっ!」
宗吾さん?
しっかり鍛えているようなのに、身体が随分固いようだ。足が組めずに後ろにひっくり返ってしまった。
「だ、大丈夫ですか。あまり無理せずに」
「いや、今日は煩悩を振り払わねば!」
「……努力あるのみです」
宗吾さんは足を組むのに一苦労。じっとしているのも一苦労。
見れば滝のような汗を流しながら、顔をしかめている。
まるで苦行のようだ。
うーん、よほど煩悩が強いのか。
「宗吾、唸るな」
「流、だが……これは辛い。じっとしていられん!」
あまりに五月蝿いので流に叱られる始末で、僧侶としてあるまじきことだが苦笑しそうになって困った。
テントを囲むように座禅を組む僕たちを、隣のログハウスの女性たちが窓からじっと見ているような気がした。興味があるのなら、是非とも挑戦して欲しい。
「どうぞ……座禅にご興味ある方ならどなたでも参加出来ますよ」
そう窓に向かって言葉を投げかけてみたが……気のせいだったのか、誰も出ては来なかった。
じりりと流れる汗。
五月蠅いほどの蝉の鳴き声。
降り注ぐ夏の太陽。
鍛錬し、心を鍛えていこう。
心は、ただ強く硬くすればいいのではない。
しなやかな心を作ることが大切だ。
「煩悩、雑念……消えろ、消えろ……消えろぉぉー!」
「おい、いい加減に静かにしろよ」
「だが、流……俺に宿る煩悩が、なかなか出て行ってくれないんだ」
「まったく、宗吾は……よし、俺が活をいれてやろう」
「た、頼む!」
「煩悩よ……退散せよ。ブツブツ、ブツブツ……」
宗吾さんの独り言が妙に切羽詰まっていて、最後には皆で笑ってしまった。
これもまた一興だ。
「翠は一人涼しい顔してんな」
「流……そんなことはないよ」(笑いを我慢しているんだよ)
「余裕がありそうだな。夜這いしていいのか」
「な、何を言って……」
座禅終了後、流に耳元で甘く囁かれて、修行が台無しだ。
一方、宗吾さんは座禅が効いたのか、煩悩が抜け落ちたようなスッキリとした顔をしていた。
「翠さん、ありがとうございます。これで今夜は平穏無事に過ごせそうですよ」
「そうですか。それは良かったです」
宗吾さんに向かって合掌していると、向こうから声がした。
「宗吾さん~」
「パパぁ~」
どうやらプールを終えた瑞樹くんたちが戻ってきたようだ。
「おぅ! もうプールはいいのか」
「はい! 堪能しました!」
ところが宗吾さんは、瑞樹くんを見るなり顔を真っ赤にした。
「み、瑞樹……その格好は!」
「え? あぁ……結局僕たちも水遊びをしちゃいました」
照れ臭そうに笑う瑞樹くんは、僕から見ても可憐だった。ただ……男同士なら気にすることもないのだが、瑞樹くんの白いTシャツが濡れて身体にぴったり張り付いているのが何とも言えなく艶っぽい。身体のシルエットが分かりすぎて、目のやり場に困るような。
「あああああ~‼︎ 瑞樹ぃ~」
ボンッ‼と宗吾さんの煩悩が復活する音がしたような……
宗吾さんは、急いで着ていた黒いTシャツを脱いで、瑞樹くんに被せた。
んん?
今度は宗吾さんが上半身裸体になり、瑞樹くんが真っ赤になった。
「そ、宗吾さん~ こここ、困ります……き、着替えてきます」
しどろもどろになって半泣きの瑞樹くんはテントに逃げ込んでしまい、一方宗吾さんは豪快に空に向かって笑っていた。
「ふぅ~生き返った!」
そこに、菫さんが着替えを持ってやってきてくれた。
「いっくんも芽生くん、向こうでお着替えしましょ!」
プールで遊んだ子供たちは、そろそろお昼寝タイムかな?
ふと薙が3歳の頃、区営プールに行ったのを思い出した。
あの頃の薙は幼児体型で、お腹がぽっこり丸くて可愛かったな。
今……隣に立つ薙ぎのすらりとした姿を見つめて、思わず目を細めてしまった。
「そう言えば……父さんと昔プールに行ったの思いだしたよ」
「僕も思い出した所だよ」
「オレさ……父さんと出掛けられるのが嬉しくて、はしゃいでいたよな」
「うん、帰りは眠ってしまって、僕がおんぶしたね」
「うん……それも思い出した。父さん、ありがとう」
すれ違ってばかりいた息子だが、ちゃんと……幸せの種を沢山蒔いてくれていたんだね。
こうやって優しい言葉を、今もらえるのだから。
「僕の方こそ、ありがとう」
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