幸せな存在 ~歩み寄る恋をしよう~

志生帆 海

文字の大きさ
1,307 / 1,871
小学生編

心をこめて 38

 翌日は土曜日。

 土日・祝日は11時から面会できるので、楽しみだ。

 宗吾さんと僕は喜び勇んで、芽生くんの待つ病院へと向かった。

 芽生くんの傍に、少しでも長くいたいから。

 昨夜もう一度想くんとゆっくり話した。

 彼からの入院アドバイスは、実に的を射るもので、僕は宗吾さんと相談して、早速実行に移した。芽生くんが少しでも前向きに明るくなれるためなら、何でもしてあげたい。




 病院に着くと紺色のダッフルコートにマフラーを巻いた想くんが立っていた。彼の柔らかな雰囲気は、穏やかな日溜まりのようで心が落ち着く。そして隣には爽やかな駿君が立っていた。濃紺のピーコートを颯爽と着こなして、彼は根っからのスポーツマンらしい雰囲気だ。

「瑞樹くん!」
「想くん! 駿くんもありがとう」
「少し寄るところがあって、一緒に来たんだ」
「大切な時間を割いてくれてありがとう」
「とんでもないよ。芽生くんは僕たちにとっても大切な子だよ。ね、駿」
「あぁ、そうだ。成長を見守りたいと、想とよく話しているんだ」
 
 想くんと駿くんが見つめ合って頷いている。
 
「嬉しい言葉です。ありがとう!」

 宗吾さんも嬉しそうだ。

 誰だって人から大切にされるのは、嬉しい。

 僕も芽生くんが人に愛され、人に慕われるのがとても嬉しい。

「早速だけど、芽生くんに会えるかな? 渡したいものがあって」
「もちろんです。芽生も喜ぶよ」

 宗吾さんの先導で、病室に向かった。

 芽生くんがワクワクした顔で待っていた。

「パパ、お兄ちゃん! 今日は早くあえてうれしいよ」
「おぉ、調子はどうだ?」
「うん、もうとってもいいのに、まだタイインできないんだって」
「……そうか、芽生、今日は駿くんと想くんがお見舞いに来てくれたぞ」
「え? わぁ、うれしい。ピクニックたのしかったよね」

 駿くんと想くんが顔を覗かせると、芽生くんはキラキラした表情を浮かべてくれた。いつもと違うメンバーの来訪は、刺激になるようだ。

「こんにちは!」
「芽生くん、元気になってきてよかったよ。退院したら約束した通り、サッカー教えてあげるよ」
「ほんと? シュンくんって、サッカーのせんしゅだったんでしょう?」
「まぁな」
「ボク、あこがれるよ」
「小さい時からコツコツ練習していくのが大事なんだよ」
「うん」
「これ、お見舞いだ」

 駿くんがくれたのは、サッカーの練習着だった。

「わぁぁ! すごい! ここの、しってる」
「ごめんな。俺が着たもので」
「ううん、ボク……おふるにあこがれていたんだ。シュンくんからのパワーいっぱいだもんね」

 その言葉にハッとした。

 そうか、僕も広樹兄さんから沢山のお古をもらってきた。
 
 パワーを譲り受けていたのか。
 
 芽生くん、物事を前向きに考えられて、すごい。

 幼い芽生くんから、僕は学ぶことだらけだよ。
 
 暫く歓談した後、自然の流れで、病室に想くんだけ残して外に出た。

「少し想と二人きりで話した方がいいと思うんです。俺たち喫茶室にでも行きましょうか」
「そうですね」

 なるほど、想くんと駿くんの関係っていいな。

 お互いのことを、心から分かり合っている。

 8歳からの幼馴染みで同級生。

 そんなありふれた関係から始まった恋だったと聞いている。

 いつか二人の恋の流れをゆっくり聞いてみたい。

 ここまで辿り着くのに超えてきたものが、沢山あるのだろう。


****

「芽生くん、僕はね小児喘息という病気で、幼い頃から入退院を繰り返してきたんだ」
「そうなの? そうくんも入院したことあるの?」

 お兄ちゃんがつれて来てくれた、そうくん。

 お兄ちゃんみたいにやさしいお兄さんも、入院したことがあるんだね。

「いっぱい入院したの? ボク……もう10日間もここからでられないんだよ」
「うん、発作が治まらなくて、10日以上入院したことが、何度もあるよ」
「え? 何度も? もしかしてテンテキもした?」
「うん、太い針がこわかったよ。何日も取れなくて、自由に手が動かせないし、トイレにいくのも大変で辛くて嫌だった」
「わかる! ボクも!」

 ボクだけじゃないんだ。

 そうくんもなんだね。

「点滴、痛かったし、怖かったよね」
「うん、針がふとくて……」
「大人になってからも嫌だよ。手を曲げたら針が折れちゃうかもって心配にならなかった?」
「なった!」

 ずっと病室には、ボクひとりだけだった。
 だれともこんな会話したことなかったから、すごくうれしい。

 あの痛みや苦しみを分かってくれるんだね、そうくんは。

「そうくん、ずーっと病室からでられなくて、くるしくなかった?」
「苦しかったよ。窓の外を見つめては、自由になりたいなって思っていたよ」
「いっしょなんだね。そうくんは、それをのりこえて大人になったんだね」
「母や友だちに支えられて、あとこれ……これがボクの支えになったよ」

 そうくんがボクの手ににぎって、にこっと微笑んでくれた。

「手を開いてごらん」
「え……わぁ、きれい!」
「元気になるお守りだよ」

 ボクの手には、きれいなお花が咲いていたよ。

 ピンク色がとてもきれい。

「桜のお守りなんだ。昔、母が買ってきてくれて……これを大事にしていたら、がんばれたから……芽生くんにもあげるね」
「いいの? 三つもあるよ」
「君からあげたい人がいると思って」
「いる! いるよ!」

 パパとお兄ちゃんとボク。

 3人で同じお守りを持てるんだね。

「そうくん、ありがとう」
「このお守りはね、『幸芽《こうめ》神社』という神社のお守りだよ。幸せの芽って、芽生くんにぴったりだと思って」
「幸せの芽……ボクそうなりたいよ。パパやお兄ちゃんにいつまでも笑ってもらいたいもん!」
「うん、芽生くんならなれるよ」

 想くんの優しいほほえみ。

「あのね、そうくんみたいに、やさしい人になりたいし、シュンくんみたいにかっこよくもなりたい」
「なれるよ。芽生くんなら絶対に! もう一つ元気になれることがあるんだ」
「なにかな?」
「ちょっと待っていてね。僕が入院中に嬉しかったことがもう一つあって」

 想くんが扉をあけて、だれかをよんだよ。

 カーテンから顔を出したのは……









「コータくん!」
「メイ! おみまいにきたぞ! やっとこられたよ」
「わぁ~ コータくん、あいたかったよ」

 想くんがニコニコして見守ってくれている。
 
 コータくんの後ろには、コータくんのお母さんも立っていたよ。

 小学校が違ってなかなか会えなくなった、ボクの大事なおともだち。

 コータくんが来てくれた!

「メイ! 遊べる?」
「うん、トランプする? ボードゲームもおもしろいよ」
「どっちもしたい!」

 そうくんがくれた、さくら色のお守りのおかげかな?

 さっそく、うれしいことがあったよ。


感想 88

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。