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小学生編
心をこめて 55
「芽生、そろそろ勉強するか」
「うん、する!」
学校から届いた宿題プリントをドサッと渡すと、芽生の目が点になった。
先程までの明るい表情が陰り明らかに狼狽えているのが、伝わってきた。
「えっ、こんなにプリントがあるの?」
「まぁ、2週間以上休んだからなぁ」
明日から学校に行くにあたり、休んでいた間の勉強を見てやろうと思ったら、これがまた結構な量で、芽生も俺もげっそりしてしまった。
「パパぁ、これ……本当に今日、全部やるの?」
「うーん、そうだろうなぁ」
「わーん!」
俺も一緒に泣きたい気分だ。
俺は人に教えるのが苦手だ。いや下手くそだ。
大人目線でしか見られないので、どうして理解出来ないのか寄り添えないのが原因だ。それで過去に何度も芽生を叱ってしまったという苦い経験がある。
芽生もそれが分かっているから、俺を見上げて泣きそうな顔をしている。
そこに花の手入れを終えた瑞樹がやってきた。
まさに救世主だ!
「ん? どうしました?」
「お兄ちゃん、たすけて!」
「瑞樹、ヘルプだー!」
事情を話すと瑞樹は、擽ったそうに微笑んでくれた。
「なんだ、そういうことですか。あの、僕が教えてあげても?」
「あぁ、ぜひ頼む!」
「お兄ちゃん教えて! お兄ちゃんの説明、とってもよくわかるもん」
「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいな」
瑞樹と芽生が子供部屋に籠もって勉強している間、俺は保険関係や学校に提出する書類を書くことにした。
ふむ、子供絡みの用事って、いろいろあるんだな。
「芽生くん、そうそう、うん。ちゃんと理解できたね。じゃあ問題だよ。1mは1cmが何個集まった数かな?」
「えっと、えっとね……うーん」
「……そうだ! 実際の定規とメジャーで確認してみようか」
「うん!」
「じゃあ、今から言う物の長さを測ってみようか」
「はーい!」
「じゃあ、お花の図鑑はどうかな?」
「えっと、えっとね……あっ、3cmかなぁ……」
ふむふむ、瑞樹先生に、芽生はべったり懐いているな。
こんな先生がいたら、俺だってべったりするぞ。
書類を書きながら、つい頬が緩んでしまう。
瑞樹の懇切丁寧な説明は分かりやすいだけでなく、居心地もいい。
答えを導くまでの方法が強引ではない。一緒に歩んで、そっと横道に逸れないようにサポートしてくれる。
優しい瑞樹、春風のような優しさで家族を包み込んでくれる君が、我が家にいてくれて良かった。
君がいるからワンクッション置ける。
俺も一呼吸して、優しくなれる。
我が家は役割分担が上手くいっていると改めて思う。
適材適所、得意なことを発揮できる場所がある。
それって自分の居場所がちゃんとあるってことだよな。
****
「芽生くんよく頑張ったね。プリント全部出来たね。もうちゃんと理解しているし、これなら明日から学校に行っても、授業についていけるよ」
「よかったぁ……でも……あのね」
あれ? 芽生くんの顔色がすっきり明るくならないのは何故だろう?
「どうしたの?」
「うん……お勉強は大丈夫そうだけど……その……」
もじもじした様子で、また俯いてしまった。
まだ、何か不安なことがあるんだね。
僕はそっと芽生くんの心に寄り添ってみた。
もしかして……
僕も病気で学校を数日休んでしまった時は勉強面も心配だったけど……もっと心配だったことがあったよ。
それは……
「もしかして、お友達とのことが心配?」
「あ……うん、そうなの!あのね。実は遊ぶ約束していたの。月ようびはサッカーをして、火ようびは鉄ぼうを、水ようびはとしょかんに行って、木曜日はうさぎを見に行く約束していたの……いろんなお友達と」
芽生くん、学校でお友達と沢山の約束をしていたのか。それってクラスで友人関係がうまくいっている証拠だよね。
でもだからこそ心配なんだね。
「全部、約束やぶっちゃった……もう、きらわれちゃうかなぁ」
なんて健気なんだ。
「キライになんてならないよ。みんな分かってくれているよ」
「そうかなぁ……」
「そうだよ」
「だといいな」
不安で一杯の芽生くんの気持ちを、一気に向上させてくれることが、その日の午後あった。
芽生くんのクラスの担任の先生が、わざわざ放課後やって来てくれた。
芽生くんの担任の先生は、20代後半の若い男の先生だ。
「芽生くん! 退院おめでとう」
「先生!」
「すっかり元気そうで安心したよ。小さな子供と接する立場で、結局お見舞いに行けなくて悪かったね。宿題のプリントだけ預けてしまったが、あれは無理しなくていいんだよ」
「ううん、大丈夫。全部やったよ」
「え? わぁ、すごいな! 今日はこれを渡したくて寄ったんだ」
先生が渡してくれたのは、クラスメイトからのメッセージが綴じられた文集だった。
あぁ、いいね。これは嬉しいね。
「わ、わぁ! これ、ボクがもらってもいいの?」
「もちろんだよ。みんな芽生くんに会いたがっているよ」
「ほんと?」
「あぁ、読んでごらん。みんなの優しい気持ちいっぱい詰まっているよ」
「先生、ありがとう! ボクね……ちょっと心配だったの」
「大丈夫だよ。芽生くんの席はちゃんとあるよ。明日からまた一緒に学ぼう。皆、芽生くんの帰りを待っているよ」
このやりとりを聞いて、しみじみと思う。
言葉は魔法だ。
言葉は力になり、励みになる。
言葉は、とても優しいんだよ。
先生が帰ったあと、芽生くんは何度も何度も文集を読み返していた。
陰っていた顔には、日が差していた。
明日、元気に行く姿を見せて欲しい。
きっと見せてくれるね。
良かった。
本当に良かったね!
君の笑顔は宝物なんだよ。
****
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「うん、する!」
学校から届いた宿題プリントをドサッと渡すと、芽生の目が点になった。
先程までの明るい表情が陰り明らかに狼狽えているのが、伝わってきた。
「えっ、こんなにプリントがあるの?」
「まぁ、2週間以上休んだからなぁ」
明日から学校に行くにあたり、休んでいた間の勉強を見てやろうと思ったら、これがまた結構な量で、芽生も俺もげっそりしてしまった。
「パパぁ、これ……本当に今日、全部やるの?」
「うーん、そうだろうなぁ」
「わーん!」
俺も一緒に泣きたい気分だ。
俺は人に教えるのが苦手だ。いや下手くそだ。
大人目線でしか見られないので、どうして理解出来ないのか寄り添えないのが原因だ。それで過去に何度も芽生を叱ってしまったという苦い経験がある。
芽生もそれが分かっているから、俺を見上げて泣きそうな顔をしている。
そこに花の手入れを終えた瑞樹がやってきた。
まさに救世主だ!
「ん? どうしました?」
「お兄ちゃん、たすけて!」
「瑞樹、ヘルプだー!」
事情を話すと瑞樹は、擽ったそうに微笑んでくれた。
「なんだ、そういうことですか。あの、僕が教えてあげても?」
「あぁ、ぜひ頼む!」
「お兄ちゃん教えて! お兄ちゃんの説明、とってもよくわかるもん」
「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいな」
瑞樹と芽生が子供部屋に籠もって勉強している間、俺は保険関係や学校に提出する書類を書くことにした。
ふむ、子供絡みの用事って、いろいろあるんだな。
「芽生くん、そうそう、うん。ちゃんと理解できたね。じゃあ問題だよ。1mは1cmが何個集まった数かな?」
「えっと、えっとね……うーん」
「……そうだ! 実際の定規とメジャーで確認してみようか」
「うん!」
「じゃあ、今から言う物の長さを測ってみようか」
「はーい!」
「じゃあ、お花の図鑑はどうかな?」
「えっと、えっとね……あっ、3cmかなぁ……」
ふむふむ、瑞樹先生に、芽生はべったり懐いているな。
こんな先生がいたら、俺だってべったりするぞ。
書類を書きながら、つい頬が緩んでしまう。
瑞樹の懇切丁寧な説明は分かりやすいだけでなく、居心地もいい。
答えを導くまでの方法が強引ではない。一緒に歩んで、そっと横道に逸れないようにサポートしてくれる。
優しい瑞樹、春風のような優しさで家族を包み込んでくれる君が、我が家にいてくれて良かった。
君がいるからワンクッション置ける。
俺も一呼吸して、優しくなれる。
我が家は役割分担が上手くいっていると改めて思う。
適材適所、得意なことを発揮できる場所がある。
それって自分の居場所がちゃんとあるってことだよな。
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「芽生くんよく頑張ったね。プリント全部出来たね。もうちゃんと理解しているし、これなら明日から学校に行っても、授業についていけるよ」
「よかったぁ……でも……あのね」
あれ? 芽生くんの顔色がすっきり明るくならないのは何故だろう?
「どうしたの?」
「うん……お勉強は大丈夫そうだけど……その……」
もじもじした様子で、また俯いてしまった。
まだ、何か不安なことがあるんだね。
僕はそっと芽生くんの心に寄り添ってみた。
もしかして……
僕も病気で学校を数日休んでしまった時は勉強面も心配だったけど……もっと心配だったことがあったよ。
それは……
「もしかして、お友達とのことが心配?」
「あ……うん、そうなの!あのね。実は遊ぶ約束していたの。月ようびはサッカーをして、火ようびは鉄ぼうを、水ようびはとしょかんに行って、木曜日はうさぎを見に行く約束していたの……いろんなお友達と」
芽生くん、学校でお友達と沢山の約束をしていたのか。それってクラスで友人関係がうまくいっている証拠だよね。
でもだからこそ心配なんだね。
「全部、約束やぶっちゃった……もう、きらわれちゃうかなぁ」
なんて健気なんだ。
「キライになんてならないよ。みんな分かってくれているよ」
「そうかなぁ……」
「そうだよ」
「だといいな」
不安で一杯の芽生くんの気持ちを、一気に向上させてくれることが、その日の午後あった。
芽生くんのクラスの担任の先生が、わざわざ放課後やって来てくれた。
芽生くんの担任の先生は、20代後半の若い男の先生だ。
「芽生くん! 退院おめでとう」
「先生!」
「すっかり元気そうで安心したよ。小さな子供と接する立場で、結局お見舞いに行けなくて悪かったね。宿題のプリントだけ預けてしまったが、あれは無理しなくていいんだよ」
「ううん、大丈夫。全部やったよ」
「え? わぁ、すごいな! 今日はこれを渡したくて寄ったんだ」
先生が渡してくれたのは、クラスメイトからのメッセージが綴じられた文集だった。
あぁ、いいね。これは嬉しいね。
「わ、わぁ! これ、ボクがもらってもいいの?」
「もちろんだよ。みんな芽生くんに会いたがっているよ」
「ほんと?」
「あぁ、読んでごらん。みんなの優しい気持ちいっぱい詰まっているよ」
「先生、ありがとう! ボクね……ちょっと心配だったの」
「大丈夫だよ。芽生くんの席はちゃんとあるよ。明日からまた一緒に学ぼう。皆、芽生くんの帰りを待っているよ」
このやりとりを聞いて、しみじみと思う。
言葉は魔法だ。
言葉は力になり、励みになる。
言葉は、とても優しいんだよ。
先生が帰ったあと、芽生くんは何度も何度も文集を読み返していた。
陰っていた顔には、日が差していた。
明日、元気に行く姿を見せて欲しい。
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