幸せな存在 ~歩み寄る恋をしよう~

志生帆 海

文字の大きさ
1,360 / 1,865
小学生編

幸せが集う場所 34

しおりを挟む
「むにゃむにゃ……おにいちゃん……どこぉ?」
「……いっくん、ここだよ」
「めーくん、しゅき……むにゃむにゃ」

 いっくんってば、おててをバンザイして赤ちゃんみたい。

 そっとにぎってあげると、キュッとにぎり返してくれたよ。

 ボクもこんなにちいさかったのかな?

 いっくん、あのね、あのね、きいて!

 ボク、ずっとずっといっくんのお兄ちゃんでいていいんだって。

 よかったぁ。

 本当はね、ちょっとだけシンパイだったんだよ。

 いっくんがお兄ちゃんになるんだから、ボクはもういらなくなるのかなって。

 でもちがうんだね。

 いっくんとボクは、このままでいんだって!

 ほんとうによかった!

「芽生坊、いい顔になったな。よーし、そろそろ眠るか」
「うん! ほっとしたらねむくなったよ」
「分かるよ。心配ごとがあると眠れないもんだ」
「うん、そうなの」
「よしよし」

 ジュンくんが頭を撫でてくれたよ。

「……芽生坊だけじゃない。オレだって不安になることもあるよ」
「ジュンくんも?」
「大人も同じだよ。ちゃんといっくんのパパでいられるかなって不安になる。でも悲しい顔や困った顔をいっくんに見せるのではなく、こうしていたいよ」

 ジュンくんが両手の人差し指で、自分のほっぺたをツンと上におしあげたよ。

「?」
「こうやって口角を上げてニコニコしていようぜ。笑うのってすごいパワーがあって、それだけで前向きになれるし明るくなれるんだってさ……兄さんがこの前、教えてくれた」
「こう?」
「そうだ!」

 うん、そうだね。

 ボクもニコニコが大好きだよ!

「おやすみ、芽生坊」
「おやすみ、ジュンくん、いっくん」

 いっくんの横でねると、ごろんとねがえりを打って、くっついてきたよ。

 えへへ、あったかいなぁ。

 パパやお兄ちゃんとは、ちょっとちがう感じでくすぐったい。


「むにゃむにゃ……おにいちゃん……しゅき」
「はは、いっくんは眠っていても、やっぱり芽生坊が大好きなんだな。よっ、モテモテ兄ちゃん!」
「それは僕のお兄ちゃんのことだよ」
「瑞樹兄さんのことか、確かにな」
「えへへ、パパとジュンくんとボクって、お兄ちゃんのことが好き好き同盟だよね」
「ははっ、そうだな、よろしくな!」
「パパがタイチョウだよ」
「だろうな~ そこは譲らないだろう」


****

「くしゅん!」
「寒いのか」
「いえ、急にムズムズして」
「はは、誰かが噂しているのかもな。君は人気者だし」
「そんな……違いますよ。あの……やっぱり寒いです。温めて下さい」

 目立ったり褒められるのに恥ずかしさを感じる瑞樹は、そう言いながら俺の首元に手を回してきた。

 布団に招き入れた瑞樹は、いつになく積極的な様子だった。

 君が意識すれば、俺も意識するよ。

 唾を飲み込むと、ゴクリと大きな音が立ってしまった。

「そ、宗吾さんってば」
「瑞樹、今日は久しぶりに二人きりだな」
「……はい」

 瑞樹が目元を染めて、俺を見上げる。

 恥じらう君も大好物なので、俄然ヤル気に満ちてくる。

「なんだか照れますね。和室でなんて……珍しいですし」
「あぁ、それに作務衣姿の瑞樹も新鮮だ」
「宗吾さん……そんなに見ないで下さい」

 目元を泳がす君の襟元に手をかけ、一気に両肩を露わにしてやった。

「あっ」

 すこし性急過ぎたか。

 だが瑞樹も満更ではないようで、身体をすぐに赤くして応じてくれた。

「可愛いなぁ」

 まずはキスから。

 瑞樹も目を閉じて応じてくれる。

 手も繋ぎたくて、そっと耳元で両手を固定してやった。

「あっ……」

 体重を掛けすぎないように覆い被さり、キスの嵐。

 その度に過敏に跳ねる身体。

 甘い吐息。

 全部感じたくて。

 キスの合間に、瑞樹が何か言いたそうにしたので、促してやった。

「どうした? 何でも話してくれ」
「あの……もう身体は辛くないですか」
「ん? あぁ、日中は心配をかけたな」
「実は……宗吾さんが具合悪くなることはあまりなかったので、すごく、すごく心配しました……怖かったです」

 瑞樹が切なげに訴える。

 我慢せずに、心の内を素直に教えてくれる。

 その様子に、胸がギュッと切なくなる。

 耳元で固定してた手を離してやると、すぐに幼子のようにしがみついてきた。

「宗吾さんっ、良かったです」

 瑞樹は目尻に涙を浮かべていた。

「よしよし、心配かけてごめんな」
「どこにも……いかないで……下さいね」
「あぁ、大丈夫だ! 君のお陰で無理してぶっ倒れる前に休めたので、すぐに回復できたよ。俺、タフだろ?」

 おどけたように言うと、やっと笑ってくれた。

「くすっ、はい、いつもの宗吾さんです」

 瑞樹が大好きな家族を一度に失った過去は、永遠に消えない。どんなに幸せで覆い尽くしても、こんなタイミングで君を不安にさせてしまう。

 だから俺はその都度何度でも囁くよ。

 何度でも伝えるよ。

「というわけで、そろそろ通常運転してもいいか」

 浮かんでいた涙はチュッと吸い取ってやった。

 笑顔を見せて欲しくて。

「はい」

 雨後の虹のような瑞々しい笑顔を浮かべてくれたので、安堵した。

「やっぱり、瑞樹は笑顔が可愛いな」

 剥き出しになっていた瑞樹の胸元に手を這わせ、平らな胸を大きく揉んでやる。トクトクと高鳴っていく鼓動を感じ、その胸元にもキスをした。

 小さな尖りを指の腹で撫でたり摘まんだりしてやると、瑞樹は気持ち良さそうに「あっ……あっ」と小さな声を上げだした。そして慌てて自分の手で口を塞いだ。

「今日は……声を我慢しなくていい」
「ですが」
「ここは一番奥の部屋だ。潤たちの部屋とは離れている。洋くんが気を利かせてくれたのさ」
「……はい」

 マンションだと芽生がいるので、自然と声を抑えてしまう瑞樹。

 今日は沢山聞かせて欲しい。

 俺の愛撫に震える声を。

「だから、大いに愛し合おう!」
「……はい」

 一方的ではない営みがいい。

 君からも俺をしっかり求めてくれ。

 俺も君をたっぷり求めるから。

 求める場所が同じなら、深い深い場所までいける。

 今日は……そうしてもいいだろう?

 
しおりを挟む
感想 85

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻本作品(オリジナル)の結末をif(運命の番)ルートに入れ替えて、他サイトでの投稿を始めました。タイトルは「一度目の結婚で愛も希望も失くした僕が、移住先で運命と出逢い、二度目の結婚で愛されるまで」に変えてます。 オリジナルの本編結末は完全なハッピーエンドとはいえないかもしれませんが、「一度目の〜…」は琳が幸せな結婚をするハッピーエンド一択です。

契約満了につき

makase
BL
仮初めの恋人として契約を結んだ二人の、最後の夜。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

『定時後の偶然が多すぎる』

こさ
BL
定時後に残業をするたび、 なぜか必ず同じ上司が、同じフロアに残っている。 仕事ができて、無口で、社内でも一目置かれている存在。 必要以上に踏み込まず、距離を保つ人―― それが、彼の上司だった。 ただの偶然。 そう思っていたはずなのに、 声をかけられる回数が増え、 視線が重なる時間が長くなっていく。 「無理はするな」 それだけの言葉に、胸がざわつく理由を、 彼自身はまだ知らない。 これは、 気づかないふりをする上司と、 勘違いだと思い込もうとする部下が、 少しずつ“偶然”を積み重ねていく話。 静かで、逃げ場のない溺愛が、 定時後から始まる。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

処理中です...