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小学生編
七夕特別番外編『七夕トレイン』
前置き。
1日遅れですが、七夕のスペシャルSSです。
潤&いっくんでどうぞ!
*****
今日は七夕だ。
いっくんは朝から、今日は七夕だから保育園で短冊に願い事を書くと張り切っていた。
そしてその笹飾りを家に持って帰ってくると言っていた。
小さないっくんが、どのようなあどけない願い事をしたのか気になる。
丁度昼の休憩でテレビを観ていたら、『各地の七夕』という特集で千葉県の保育園の女の子がインタビューを受けていた。
……
「お願い事はなんて書きましたか」
「アイドルになりたいでしゅ!」
……
くぅー 可愛いな。
いっくんならアイドルにもモデルにもなれるぞ!
ワクワクした気分で保育園に迎えに行くと、入り口で大泣きしている子がいた。
この声って、まさか!
慌てて駆け寄ると、やっぱりいっくんだった。
どうした? どうした?
「いっくん!」
オレの声に、いっくんが顔を上げる。
つぶらな瞳に涙いっぱい溜めて、飛びついてくる。
「パパぁ~」
「あぁ、良かったです。パパさん……今日、いつきくん……ちょっと……」
保育園の先生から事情を聞くと、いっくんが短冊に願い事を書く時になって突然俯いてしまい、その後「早く書きましょうね」と促したら困った顔になり、その後ワンワン泣いてしまったらしい。
先生がどんなに理由を聞いても、いっくんは泣くばかりで埒が明かなかったと。という理由で、いっくんが握りしめる笹には何も描いていない短冊が1枚ひらひらついていた。
「いっくん、どうした?」
「……パパぁ」
足元にしがみついてはなれないので、そのまま抱き上げてやった。周囲から見たら4歳にもなって甘やかしていると思われるかもしれないが、生まれながらにパパとお別れしたいっくんには、これでも足りないほどだ。
オレと巡りあえて、まだ1年足らず。
まだまだパパっこ1年生さ。
「そろそろ話せそうか」
「ううん。まだでしゅ」
「じゃあ……パパと寄り道しようか」
「うん、しゅる」
このまま連れて帰ると、すみれが心配しそうなので、少し遠回りをした。
この時期は、運が良ければ蛍が見える小川にやってきた。
この前ここを通ったとき蛍を見たから、連れてきてやりたかった。
「いっくんが泣くと心配だよ。パパに話してくれないかな?」
瑞樹兄さんを見習って、優しく優しくいっくんの負担にならないように問いかけた。
いっくんは首を横に振る。
駄目か、参ったな。
何か気分が変わることが、あればいいのに。
「あー パパ、あそこ……なにかひかってる!」
いっくんが突然立って、小川の辺りを指さした。
「あぁ、あれは蛍だよ。綺麗だろう」
「わぁぁ……しゅごいでしゅね」
「いっくんに見せてやりたかったんだ」
「いっくんに?」
「そうだよ。可愛い息子だからな」
「えへへ」
いっくんが可愛く微笑んでくれた。
よかった。やっと笑顔だな。
「パパぁ……あのね、いっくんのおねがいは、もうかなったの。だからね、あんまりしたらよくばりさんだから、かかなかったの。でも、みんないっぱいかいていて、いっくんもちゃんとかいてっていわれて……こまったの」
あー なるほど、そういうことか。
これは泣けてくる。
「いっくんのお願いって?」
「パパとあえますようにだよ! ずっとおいのりしていたの」
いっくんがオレにまたくっついてくる。
「パパぁ、だいしゅき」
「いっくん……もっといろんな夢を持っていいんだよ。パパはずっといっくんの傍にいるから」
「でも、いっくん……」
「サッカーが上手になりますようにとか、絵が上手になりますようにとかはどうだ?」
こんなこと親が助言しては駄目だろうなと思うが、ついつい。
「それはね、いっくんががんばってすることなんだ。いっくん、サッカーのれんしゅう、もっとしたい。おえかきも、いっぱいしてじょうずになるよ」
「そうか、いっくんが、がんばるのか」
「パパがいるからだよ。パパがみてくれるからがんばれるんだ」
ううう、やっぱり泣けてくる。
でもやっぱり白紙の短冊に何か書いて欲しいな。
「そうだ、いっくん、七夕の織り姫と彦星は一年に一度逢えたそうだよ。いっくんにもいつもは会えない人だけど会いたい人はいないかな?」
いっくんはつぶらな瞳を何度か瞬きして、答えてくれた。
「お空のパパにね、いっくん、ちあわせなこと、がんばってることつたえにいきたいなぁ」
それだ!
「それを、いっくんの七夕のお願いにしたらどうだ?」
「うん! してみたい」
「よーし、パパ、鉛筆持っているから書いてみよう」
……
おそらのぱぱにあいにいって、いっくんのことおしえてあげたいです。
……
つたなくあどけないが、愛情いっぱいの短冊が出来上がった。
帰宅後、すみれがそれを見てうっと涙ぐんだ。
「潤くんでしょ? 樹に……こんなこと、気付かせてくれたのは」
「亡くなったご主人だって、いっくんの成長を見たいだろう。一年一度くらい会って来ていいよ。いやちゃんと会って欲しい。元気にスクスク生きてるってこと、幸せなこと、知らせて安心して欲しい」
「あぁ……潤くん……あなたのそんなところが大好き! 寛容で謙虚で優しい潤くん」
それは……広樹兄や瑞樹兄を形容する言葉だった。
それをオレにくれるのか。
オレは幸せになった。
その晩、いっくんは『七夕トレイン』に乗って、お空のパパに報告に行った。
夢と希望をのせて――
1日遅れですが、七夕のスペシャルSSです。
潤&いっくんでどうぞ!
*****
今日は七夕だ。
いっくんは朝から、今日は七夕だから保育園で短冊に願い事を書くと張り切っていた。
そしてその笹飾りを家に持って帰ってくると言っていた。
小さないっくんが、どのようなあどけない願い事をしたのか気になる。
丁度昼の休憩でテレビを観ていたら、『各地の七夕』という特集で千葉県の保育園の女の子がインタビューを受けていた。
……
「お願い事はなんて書きましたか」
「アイドルになりたいでしゅ!」
……
くぅー 可愛いな。
いっくんならアイドルにもモデルにもなれるぞ!
ワクワクした気分で保育園に迎えに行くと、入り口で大泣きしている子がいた。
この声って、まさか!
慌てて駆け寄ると、やっぱりいっくんだった。
どうした? どうした?
「いっくん!」
オレの声に、いっくんが顔を上げる。
つぶらな瞳に涙いっぱい溜めて、飛びついてくる。
「パパぁ~」
「あぁ、良かったです。パパさん……今日、いつきくん……ちょっと……」
保育園の先生から事情を聞くと、いっくんが短冊に願い事を書く時になって突然俯いてしまい、その後「早く書きましょうね」と促したら困った顔になり、その後ワンワン泣いてしまったらしい。
先生がどんなに理由を聞いても、いっくんは泣くばかりで埒が明かなかったと。という理由で、いっくんが握りしめる笹には何も描いていない短冊が1枚ひらひらついていた。
「いっくん、どうした?」
「……パパぁ」
足元にしがみついてはなれないので、そのまま抱き上げてやった。周囲から見たら4歳にもなって甘やかしていると思われるかもしれないが、生まれながらにパパとお別れしたいっくんには、これでも足りないほどだ。
オレと巡りあえて、まだ1年足らず。
まだまだパパっこ1年生さ。
「そろそろ話せそうか」
「ううん。まだでしゅ」
「じゃあ……パパと寄り道しようか」
「うん、しゅる」
このまま連れて帰ると、すみれが心配しそうなので、少し遠回りをした。
この時期は、運が良ければ蛍が見える小川にやってきた。
この前ここを通ったとき蛍を見たから、連れてきてやりたかった。
「いっくんが泣くと心配だよ。パパに話してくれないかな?」
瑞樹兄さんを見習って、優しく優しくいっくんの負担にならないように問いかけた。
いっくんは首を横に振る。
駄目か、参ったな。
何か気分が変わることが、あればいいのに。
「あー パパ、あそこ……なにかひかってる!」
いっくんが突然立って、小川の辺りを指さした。
「あぁ、あれは蛍だよ。綺麗だろう」
「わぁぁ……しゅごいでしゅね」
「いっくんに見せてやりたかったんだ」
「いっくんに?」
「そうだよ。可愛い息子だからな」
「えへへ」
いっくんが可愛く微笑んでくれた。
よかった。やっと笑顔だな。
「パパぁ……あのね、いっくんのおねがいは、もうかなったの。だからね、あんまりしたらよくばりさんだから、かかなかったの。でも、みんないっぱいかいていて、いっくんもちゃんとかいてっていわれて……こまったの」
あー なるほど、そういうことか。
これは泣けてくる。
「いっくんのお願いって?」
「パパとあえますようにだよ! ずっとおいのりしていたの」
いっくんがオレにまたくっついてくる。
「パパぁ、だいしゅき」
「いっくん……もっといろんな夢を持っていいんだよ。パパはずっといっくんの傍にいるから」
「でも、いっくん……」
「サッカーが上手になりますようにとか、絵が上手になりますようにとかはどうだ?」
こんなこと親が助言しては駄目だろうなと思うが、ついつい。
「それはね、いっくんががんばってすることなんだ。いっくん、サッカーのれんしゅう、もっとしたい。おえかきも、いっぱいしてじょうずになるよ」
「そうか、いっくんが、がんばるのか」
「パパがいるからだよ。パパがみてくれるからがんばれるんだ」
ううう、やっぱり泣けてくる。
でもやっぱり白紙の短冊に何か書いて欲しいな。
「そうだ、いっくん、七夕の織り姫と彦星は一年に一度逢えたそうだよ。いっくんにもいつもは会えない人だけど会いたい人はいないかな?」
いっくんはつぶらな瞳を何度か瞬きして、答えてくれた。
「お空のパパにね、いっくん、ちあわせなこと、がんばってることつたえにいきたいなぁ」
それだ!
「それを、いっくんの七夕のお願いにしたらどうだ?」
「うん! してみたい」
「よーし、パパ、鉛筆持っているから書いてみよう」
……
おそらのぱぱにあいにいって、いっくんのことおしえてあげたいです。
……
つたなくあどけないが、愛情いっぱいの短冊が出来上がった。
帰宅後、すみれがそれを見てうっと涙ぐんだ。
「潤くんでしょ? 樹に……こんなこと、気付かせてくれたのは」
「亡くなったご主人だって、いっくんの成長を見たいだろう。一年一度くらい会って来ていいよ。いやちゃんと会って欲しい。元気にスクスク生きてるってこと、幸せなこと、知らせて安心して欲しい」
「あぁ……潤くん……あなたのそんなところが大好き! 寛容で謙虚で優しい潤くん」
それは……広樹兄や瑞樹兄を形容する言葉だった。
それをオレにくれるのか。
オレは幸せになった。
その晩、いっくんは『七夕トレイン』に乗って、お空のパパに報告に行った。
夢と希望をのせて――
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