幸せな存在 ~歩み寄る恋をしよう~

志生帆 海

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小学生編

番外編・2024年HALLOWEENリレー『Magical🎃Halloween』③

 宗吾さんと憲吾さんを見送ると、蓮が甘く微笑みながら近づいてきた。

「兄さん、やはり俺はひつじでなく執事だと……」
「どうして、そう思うんだ? 」
「千世も「ひ」と「し」の区別がはっきりしない時があったからさ」
「なるほど。一応……執事服の採寸もさり気なくしておいたが、だが本当に羊だったらどうする?」
「そこは……ふっ、俺の兄さんの腕前なら、なんとかしてくれるだろう。それより俺には作ってくれないのか。俺が黒豹に変身する姿……見たくないのか」
「ふっ、もうとっくに出来ている。蓮……明日は俺たちもハロウィンパーティーをするぞ」

 蓮と熱い視線を絡み合わせていると、眠ったはずの千世が起きてきた。

 目を擦りながら、頬を膨らませている。

 愛らしいな。

 蓮も幼い頃、こんな表情をしたのだろうか。

「ちせも、へんしんしたいよぅ」
「ははっ、そうだな、千世も一緒に仮装をしよう。何になりたい?」
「えっとねぇ、おにいちゃんたちがくろひょうとタイガーなら、ちせは、かわいいひつじさんがいいなぁ」
「‼‼」

 こっちは本物の羊か。

 さて、どうするべきか。

 いや、迷っている暇はない。

 いつものように、信じた道を真っ直ぐに進むだけだ。



****

 翌朝、家中の誰よりも早く目が覚めた。

 間もなく『カッコいい羊さん』の衣装が届く。
 
 待ち遠しいな。

 玄関に向かうと、新聞を取りに来た母さんと鉢合わせをした。

「あらやだ、憲吾、こんな朝早くにどうしたの?」
「いや、その……」
「今日は、何かいいことがあるのね」
「え?」
「ふふ、顔に書いてあるわ。子供みたいにワクワクしている顔よ」
「わ……私は、はしゃぐような子供ではなかったはずですが」
「そんなことないわ。それは、あなたが覚えていないだけよ。あなたも3歳の頃は、今のあーちゃんと同じような顔をしていたわ」
「そうなんですね」

 記憶がないことを、自分の勝手な思い込みで勝手に埋めてしまっては勿体ないな。

 そうか、私もちゃんと子供らしかったのか。

 それが今はとても嬉しかった。

「賑やかな1日になりそうですよ」
「今日はハロウィンよね。あーちゃんは昨日からお姫様になれるって大騒ぎよ。美智さんもお友達に衣装を借りて、張り切っていたわ」

 そんな話をしていると、バイクの音が聞こえてきた。
 
 蓮さんは朝靄の中、颯爽と姿を現した。

「憲吾さん、Good luck」

 黒いライダースーツを着たしやなかな青年は、甘い笑みを浮かべて嵐のように去って行った。

 やはり黒豹のような男だ。

「美智、衣装が無事に届いたぞ」
「憲吾さん、本当にかっこいい羊さんになれるの?」
「あぁ、そのつもりだ。上で着替えてくるよ」

 
****

 きょうはハロウィン。

 パパとママと、かそうして、ようちえんにいくのたのしみ。

 パパ、かっこいいしつじさんになってくれるかな?

 あれからあーちゃん、おばあちゃまにたのんでもっとくわしくおしえてもらったのよ。

 しつじさんのこと。

 くろいおようふくで、かっこよかった。

「あーちゃん、そろそろ行くわよ」
「はーい、あーちゃんは、おひめさまよ。ママは?」
「ママは魔女よ」
 
 わぁ、くろいまじょさんだ。

 ママかわいい。

「あれあれ、パパはどこぉ?」
「ここだ」
「そんなところにいたら、みえないよ」
「いや、少し恥ずかしいんだ」

 パパ、しろいおようふくをきているみたい。

「大丈夫よ、かっこいいしつじさんでしょ?」
「えっ、執事……‼‼」
「憲吾さん、大丈夫よ。落ち着いて」
「あぁ……」

 あーちゃんがのぞきこむと、パパはまっしろなひつじさん。

 びっくりしちゃったぁ。

 でもあーちゃんのパパはどんなパパでもいちばんかっこいいから、だいじょうぶ。

「パパ、かっこいいよぅ」
「はは……実は、もっとかっこ良くなれるんだ」
「え?」
「魔女さん魔法をかけてくれ」
「え? 私?」
「そうだ、美智、頼む」
「わかったわ。羊さん……かっこいい執事になぁれ!」

 しろいけむりがもくもく。

 パパがあっというまに、くろいおようふくのしつじさんにへんしんしたの。

「わぁ……かっこいい。かっこいいしつじさん。ママ、しゅごい。まほうつかって、ひつじをしつじにするなんて」
「ハロウィンだから特別よ」
「パパぁ、おひめさまをぶどうかいにつれていってくだしゃい!」
「畏まりました。お姫様」

 あーちゃんのパパはせかいいち、かっこいいの。

 だいすき、パパがだいしゅきよ。

「パパ、あーちゃんのおねがいをきいてくれてありがとう」
「あーちゃんのためなら何でも出来るよ」
「パパだいしゅきよ」
「そ、そうか……嬉しいよ」

 みんなでようちえんのはろうぃんパーティーにいけるの、たのしいな。

 たのしいな!


 
                    
                                  了



余談――

 やれやれ、ドライアイスがあってよかったわ。

 魔法の演出は、バッチリだった?
 
 憲吾、あなたは本当に変わったわね。

 あーちゃんのために、一肌脱ぐどころじゃない騒ぎだわ。

 羊から執事服にワンタッチで変身できる服を誂えるなんて。

 あんなお洋服、存在するの?

 初めて見たわ。

 一体どういう作りなのか……

 現実にはあり得ないわ。

 でも今日はハロウィン

 魔法にかかった1日だから、ありなのね。

 おばあちゃまも楽しませてね。

 大人も子どもも楽しんでよいのでしょう?




蓮と大河の過去編は同人誌『星屑のミモザ』にて
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