悲しい月(改訂版)

志生帆 海

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第2章

赤い髪の女 6

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 薬を保管するための倉庫が医局の奥にある。
 そこは扉が二重になっているため、中の声が外に漏れにくい構造になっていた。

 小さな天窓から月明かりが静かに差し込むその薬品庫へ、ふたりでそっと潜りこむ。

「ヨウ……少しくつろげ、鎧も今は外せ」

 後ろを向かせヨウの重たい鎧を外してやる。そしていつも手に握っている剣も外してやる。

 1日中王を護り続ける、闘い続ける躰にも休息は必要だ。

「ジョウ……あまり時間がない。また宿直に戻らねば」

 焦るように言うヨウの首筋に顔を埋め、スンと息を深く吸い込むと彼の特有の香りがした。

 強い武将として周りから恐れられているヨウの躰の奥から、こんなにも香しい花の匂いがするなんて、誰も知らない。これは私だけが知っている秘密だ。

 この見かけからは予想できない香りを嗅ぐと、すぐに己のものが高揚してしまう。

「ヨウ……ここでいいか?狭いが」

 耳を赤く染めたコクリとヨウが頷く。

「……温めて欲しい」

 一気に押し寄せた不安を自分自身で処理できない時、ヨウの躰は以前のように氷みたいに冷たくなってしまう。そっと下衣の袷から手を忍ばせると、すでにそそり立っているヨウのものに触れることが出来た。

 私はそこを優しく握るように触れてやる。

「あうっ!」
「こんなになっているのに表面は冷たい」
「ジョウ……」
「ヨウ思いつめるな。何事にも必ず解決する方法があるはずだ。私はそう信じる。ヨウとならきっと解決できるはずだから」

 扱く手を速めていくと、次第に氷のような冷たさは失せ、温かみを増してくる。やっと血が通ってきたようだ。

「ヨウ……怯えるな」
「んっ……」

 薬品棚に手を突き、抜けそうな腰を一生懸命支えるヨウの後姿がいじらしい。

 強い武将の弱った背中……その姿に心を奪われてしまった。

 この姿を癒したくて抱いた。

 ヨウを温めてやりたい。その気持ちだけが、どんどん膨らんでくる。

「愛おしい……」

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