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第2章
赤い髪の女 10
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「王様、ヨウです。お加減はいかがですか」
人払いをさせ寝所へ入ると、王様は俺の手をギュッと握られた。
「ヨウ……怖かったよ。ひとりは怖いよ」
まだ幼い少年の王だ。醜い政権争いなどに巻き込まれないで、健やかにご成長していただきたい。俺のように道を踏み外すことのないように見守りたい。この先もずっと。王様の信頼しきった澄んだ眼を見ていると切に願う。
「少しお話相手になりましょうか」
「うん、じゃあ今日はヨウの子供の頃の話をしてよ」
「……面白くありませんよ」
キラキラの瞳で俺のことを見つめてくる王様が愛おしく、実の弟のように大切だ。純粋な王様と接していると、先ほどキチ一族から撫でまわすような執拗な視線を浴び、穢れた気分でいた俺の心も安らいでくる。
「そういえば医官のジョウはどこ? 最近見かけないけれども……」
「……内密に旅に出ています。」
「そうなの? 何処へ?」
王様にはまだ言えない。期待を持たせることになるから。ジョウが連れて来る異国の医官が王様の足を治療できるかどうかは分からない。
「それより王様、その後足の具合はいかがですか」
「うん。ヨウ……実はあまり良くないんだ。また痛みが増して、隠すのも一苦労だ」
「えっ……今一度お見せください」
王様の太腿に出来た腫瘍を確かめると、前よりも大きく赤くなっていた。もう時間がないのでは……ひやりとした冷たい気持ちが背筋を伝う。
「王様、決して周りのものに悟られませんように。内官にもお気を付けてください」
「うん。分かっているよ。でもこれって本当に虫の毒なの?薬を塗っても、ちっとも良くならなくて怖いよ」
「大丈夫ですよ。明日にはジョウは戻ると使いの者から手紙が届きました。また診てもらいましょう」
「うん。分かった。ヨウありがとう」
「さぁもうお休みになられないと」
にっこりと微笑む王さまの気持ちも落ち着いてきたようで、健やかな眠りに着くまで傍にいて差し上げる。
****
王様が眠られた後、近衛隊の兵舎のニ階にある窓のない俺の部屋に戻った。ふと胸元を見ると、ジョウと分けた月輪のネックレスが闇の中、冷たく光っていた。
「不思議だな」
手で触れると、ひんやりとしている。このネックレスをするようになってから、たまに感じることがある。
誰かの心と呼応していると──
ジョウではなく、もっと近しい人の心が痛いほど届く時がある。まるで俺の分身のような人の存在を感じるようになった。
今宵は月輪の放つ冷たい光から、悲しい気持ちが押し寄せてくる。何かに縋りたいような切ない気持ちも押し寄せてくる。
「どうしたんだ一体? 今日は一段と辛そうだ」
君は今……泣いているのか。独りで孤独に耐えながら……
俺にはジョウがいるのに、君にはそういう人が今いないのか。
周りに人がいないのを確認してから、目を閉じて丹田に気を込めていく。次第に指先がチカチカと光り出し、更にその光は躰に電流となって駆け巡り、力が満ちていく。
「はっ!」
完全に満ち足りたところで、一気に遠い彼方に向けてその力を雷光に変えて弾け飛ばす。
悲しい君へ
この光が届きますように。
この光が君を照らせばいいのに…
助けてあげたい。
君は俺のような人だから。
****
志生帆海です。こんにちは!
『悲しい月』と『重なる月』、二つのお話は今後リンクしていきます。
どこか違う世界で悲しみに打ちひしがれている洋を救えるのは、ヨウなのかもしれません。ちなみにヨウは、稲光(雷光)を自分で作れる技を密かに持っています。歴史ファンタージーということで、私の勝手な設定ですが……
人払いをさせ寝所へ入ると、王様は俺の手をギュッと握られた。
「ヨウ……怖かったよ。ひとりは怖いよ」
まだ幼い少年の王だ。醜い政権争いなどに巻き込まれないで、健やかにご成長していただきたい。俺のように道を踏み外すことのないように見守りたい。この先もずっと。王様の信頼しきった澄んだ眼を見ていると切に願う。
「少しお話相手になりましょうか」
「うん、じゃあ今日はヨウの子供の頃の話をしてよ」
「……面白くありませんよ」
キラキラの瞳で俺のことを見つめてくる王様が愛おしく、実の弟のように大切だ。純粋な王様と接していると、先ほどキチ一族から撫でまわすような執拗な視線を浴び、穢れた気分でいた俺の心も安らいでくる。
「そういえば医官のジョウはどこ? 最近見かけないけれども……」
「……内密に旅に出ています。」
「そうなの? 何処へ?」
王様にはまだ言えない。期待を持たせることになるから。ジョウが連れて来る異国の医官が王様の足を治療できるかどうかは分からない。
「それより王様、その後足の具合はいかがですか」
「うん。ヨウ……実はあまり良くないんだ。また痛みが増して、隠すのも一苦労だ」
「えっ……今一度お見せください」
王様の太腿に出来た腫瘍を確かめると、前よりも大きく赤くなっていた。もう時間がないのでは……ひやりとした冷たい気持ちが背筋を伝う。
「王様、決して周りのものに悟られませんように。内官にもお気を付けてください」
「うん。分かっているよ。でもこれって本当に虫の毒なの?薬を塗っても、ちっとも良くならなくて怖いよ」
「大丈夫ですよ。明日にはジョウは戻ると使いの者から手紙が届きました。また診てもらいましょう」
「うん。分かった。ヨウありがとう」
「さぁもうお休みになられないと」
にっこりと微笑む王さまの気持ちも落ち着いてきたようで、健やかな眠りに着くまで傍にいて差し上げる。
****
王様が眠られた後、近衛隊の兵舎のニ階にある窓のない俺の部屋に戻った。ふと胸元を見ると、ジョウと分けた月輪のネックレスが闇の中、冷たく光っていた。
「不思議だな」
手で触れると、ひんやりとしている。このネックレスをするようになってから、たまに感じることがある。
誰かの心と呼応していると──
ジョウではなく、もっと近しい人の心が痛いほど届く時がある。まるで俺の分身のような人の存在を感じるようになった。
今宵は月輪の放つ冷たい光から、悲しい気持ちが押し寄せてくる。何かに縋りたいような切ない気持ちも押し寄せてくる。
「どうしたんだ一体? 今日は一段と辛そうだ」
君は今……泣いているのか。独りで孤独に耐えながら……
俺にはジョウがいるのに、君にはそういう人が今いないのか。
周りに人がいないのを確認してから、目を閉じて丹田に気を込めていく。次第に指先がチカチカと光り出し、更にその光は躰に電流となって駆け巡り、力が満ちていく。
「はっ!」
完全に満ち足りたところで、一気に遠い彼方に向けてその力を雷光に変えて弾け飛ばす。
悲しい君へ
この光が届きますように。
この光が君を照らせばいいのに…
助けてあげたい。
君は俺のような人だから。
****
志生帆海です。こんにちは!
『悲しい月』と『重なる月』、二つのお話は今後リンクしていきます。
どこか違う世界で悲しみに打ちひしがれている洋を救えるのは、ヨウなのかもしれません。ちなみにヨウは、稲光(雷光)を自分で作れる技を密かに持っています。歴史ファンタージーということで、私の勝手な設定ですが……
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