悲しい月(改訂版)

志生帆 海

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第2章

短編&表紙のこと 『すれ違いざまに』

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 近衛隊長としての激務に躰が疲れていた。本当にままならぬ事が多く朝からずっと心が騒ついて苛ついていた。

 そんな俺の手を、ジョウがすれ違いざまに誰にも見られぬようにそっと握ってくれた。すると一気に心に涼しい風が吹き抜けた。

 やはりお前の手はいつも俺を清めてくれ、心を落ち着かせてくれる存在だ。

****

 こちらへ足早に歩いてくるヨウの気が大きく乱れているのが、私の心に響いてくる。

 抑えろ。
 気を静めろ。

 ヨウ……君はいつだって一人で何もかも背負い過ぎだ。お願いだから昂ぶる感情を少しでも私に委ねて欲しい。

 私は静なる気を込めて人に見られぬようにヨウの冷え切った手を、すれ違いざまに握りしめてやった。

 すると素知らぬ顔で通り過ぎていくヨウの顔は、少しだけ和らいだように見えた。

****

 ヨウ──
 君の元に早く帰りたい。

 今、私は君に触れることが出来ない遠い場所にいる。ここからは君の手をいつものように握ってやることが出来ないのが、悔しい。

 君は自らの手で震える躰を抱きしめ……人知れず泣いている。それが伝わって来るのに動けないなんて……こんなにもどかしいことがあっていいのか。

 だが必ず解決方法があるはずだ。

 君と離れたくない。
 君を手放したくない。
 だから必ず君の元へ戻るよ。

 どんなに時間がかかろうと、たとえ何度生まれ変わろうと。

 必ずその日はやってくる。
 私がそう信じてるから。

 また会える。
 必ず会える。

 だから……どうかもう泣くな。
 信じろ! 信じ続けてくれ!

 理不尽に蔑まれても希望を忘れず……どうか諦めないでくれ。

****

 『表紙絵のこと』

 志生帆海です♪ 今日は離れ離れになってしまったジョウの気持ちを綴った詩のような短編です。今まさに『重なる月』で洋が奮闘中ですので、再びジョウとヨウが出逢える時まで、もうひと頑張りです。

 そしてご報告があります。この『悲しい月』の表紙が新しくなりました!

 クールでカッコイイ絵を沢山描かれている絵師の鬼夜咲さまが描いてくださいました。@kiyosaku_ 

 創作歴史ファンタジーということで、物語のイメージが掴みにくかったと思うのですが、見事に私の脳内を再現してくださいました。ありがとうございます。

 それにしても、ヨウの凛々しいこと。悲しい涙すらも美しく際立っています。そしてジョウのビジュアル!凄く気に入っています。医官である丈は静かな気をまとっていると思っていたので、ぴったりで興奮しました。

 絵の質感がまた素晴らしく鎧の光沢やヨウが起こした雷光の光。ジョウが見つめる月輪のネックレス。二人を包むように降り注ぐ月明り。すべてがファンタジーの世界観を忠実に表現しています。奥行のある立体感のある色合いだから、余計にそう感じます。

 本当にありがとうございます。よかったら表紙を見てくださるとうれしいです。まさにあのお別れのシーンですね 物語は今後『重なる月』から戻ってきます。もう少々信じて……お待ちください。
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