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空を泳ぐ魚

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 ある日、きつねのコンすけくんが、息せき切ってかけてきて、たぬきのポンきちくんと、くまのまくちゃんと、うさぎのねねちゃんを集めて言いました。
「みんな知ってる? 空を泳ぐ魚を!」
 みんなは、
「えっ、空を泳ぐ魚?」
 口をぽかんとあけて聞き返しました。
 

 コンすけくんは、話をつづけます。

「この間、山のふもとの人間の里に化けて遊びに行ってきたんだよ。そしたら、人間の家のどこにでも、空を泳ぐ魚をかっているんだよ。たくさんいるところじゃぁ、5匹もかっていて、大きい魚や小さい魚が、ならんですいすい泳いでいるんだよ。ぼく、びっくりしちゃって、あやうくしっぽをはやしてしまうところだったんだよ」
 みんなは、
「本当に空を泳でいたの? 信じられない」
とわらっていましたが、まくちゃんは、どんな魚なのか興味津々でした。
 コンすけくんたちと別れたあとも、まくちゃんは、
(空を泳ぐ魚なんて、おいしそうだなぁ……)
と、いつまでもかんがえていました。


 次の日、まくちゃんは、こっそり山のふもとにおりてきて、木のかげから、そっと人間の里をながめてみました。
(ほんとうに、魚が空を泳いでる!)

 すいすいと魚が空を泳いでいます。
 まくちゃんは、目をこらして、魚をよくみました。
 魚は、どれも大きな口をあけて泳いでいます。
 だけど、おなかはからっぽではありませんか。

 まくちゃんは、がっかりしました。
(おなかがからっぽじゃぁ、ちっともおいしくなさそうだなぁ。空を泳ぐ魚は、まずいんだろうなぁ)
 そして、山にとぼとぼかえっていきました。

 5月のさわやかな風が、まくちゃんのほほをなでていきました。




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