セミのみんみんくん

こぐまじゅんこ

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セミのみんみんくん

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ぼくは、犬山かんた。
小学2年生。
今は、夏休み。
毎日、庭でセミがみんみん、うるさくないている。
学校が休みなのはいいんだけど、水泳教室の特訓があるのがいやなんだ。
毎朝、10時から水泳教室に行かないといけない。
あんまり上手に泳げないから、ぼくは水泳教室に行きたくないんだよなぁ。
いつもおかあさんに怒られながら用意して行ってるんだ。

今朝も、朝からセミの鳴き声で目がさめた。
ミーン  ミンミン  ミーン
うるさいなぁ。
ぼくが、窓の外をみると、木の間から、ぼくをみているセミがいた。
まわりのセミは、みんないっしょうけんめいおなかをゆらして鳴いているのに、そのセミだけは、ぼーっとぼくをみている。
やがて、パタパタととびたっていった。
「あのセミ、ぼくをみてたよな」
ぼくは、ちょっと不思議な気がしたけど、ごはんを食べて、水泳教室にもがんばって行ってきた。
帰ってから、宿題とかゲームとかいろいろやって、1日がおわった。
「また、明日も水泳教室かぁ。いやだなぁ」
ふとんにもぐりこんだ。
ミンミン
窓の外で、セミの鳴き声がした。
「こんな夜遅くにセミ?」
ぼくは、外をみた。
「やぁ、かんたくん! ぼく、みんみん」
「えっ、セミがしゃべってる!」
ぼくは、びっくりして眠気もふっとんだ。
「朝、かんたくんのこと、みてたんだ!」
みんみんが言う。
「あっ、あのセミ?」
「そう。かんたくん、水泳教室さぼりたいって思ってたでしょ。ぼく、朝、ミンミン鳴く仕事さぼったの。いい気持ちだったよ。これから夜のお散歩して、明日の水泳教室さぼっちゃいなよ」
「えー、だけど……」
「夜の山に行って、虫の仲間に紹介したいんだ! かんたくんのこと」
「うーん。じゃ行ってみる!」
「きまり!」
「でも、歩いて行くの?」
ぼくが、聞いたら、みんみんは、ぼくの背中にとまって、ミンミンミーンって体をふるわせた。
「これで、大丈夫。平泳ぎの格好をしてみて」
「こう?」
ぼくは、すいーっと手をかいてみた。
ふわり
体がうかんで、空を泳いでいる。
「わぁー」
「むこうの山に行くよ」
みんみんとぼくは、夜空をとんでいった。

山についた。
「みんなぁ、かんたくんとあそぼう!」
みんみんが言うと、
「かんたくんだって?」
「どんな子だい?」
「何してあそぶ?」
カブトムシとクワガタ、コガネムシがやってきた。
「木登り競争しよう」
カブトムシが言った。
「よーい どん」
カブトムシは、するするのぼっていった。
ぼくは、足がすべってなかなかのぼれない。
カブトムシが1番だ。
クワガタ、みんみん、コガネムシ、ぼくは、最後。
「やったぁ」
カブトムシが大喜び。
「じゃあ、今度は、穴掘り競争しよう」
ぼくが言うと、みんなやる気まんまん。
ぼくは、木の枝を使って、穴をほっていった。
「やったぁ、ぼくが1番!」
ぼくが言うと、
「木の枝を使うなんて、ずるい!」
クワガタが言った。
楽しく遊んでいたら、いつのまにかあたりが明るくなってきた。
「大変だ! 朝がくるよ」
みんみんがあわてて言う。
「かんたくん、早く帰ろう」
「わかった。みんな、バイバイ」
みんみんとぼくは、大急ぎで空をとんで帰った。

おかあさんが起こしにきたときは、ぼくは、ふとんの中だった。
平泳ぎの格好をしてみたけど、もう飛べなかった。
でも、なんだか気分はすっきりしていた。
「水泳教室さぼるのは、やめた! がんばって行こう」
ぼくは、心に誓った。
ミーン ミンミン ミーン
窓の外でセミの鳴き声がした。
「ぼくも、やっぱりさぼらずに鳴く仕事をすることに決めたよ」
みんみんの声がした。
「おたがい がんばろうね」
ぼくは、みんみんと約束した。
朝ごはんを食べて、水泳教室に行った。
「今日は、平泳ぎの練習をします」
先生が、そう言うとプールに入った。
すーい すい  
先生がお手本をみせてくれる。
「犬山くん、やってみて」
ぼくは、みんみんといっしょに夜空を飛んだときのことを思い出した。
手をすーいすい、かいてみた。
すーっと体が前にすすむ。
「上手だね、その調子!」
先生に言われて、ぼくは、すーいすいおよぐ。
みんなが、
「すごい」
「平泳ぎ、できてる!」
と、わいわい言ってるのが聞こえてきた。
ぼくは、水泳教室にきてよかった、とおもった。


みんみんとの約束は、これからもずっと守るつもりだ。
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