馬鹿には見えないドレスと王妃

Vitch

文字の大きさ
3 / 4

馬鹿であれ、無知であれ

しおりを挟む
 アメリアがまだ皇太子妃候補の1人であった頃、当時の皇帝陛下オラシオの父からある言葉を授けられた。

 天才と呼ばれる人間は確かに存在する、アメリアもそのうち1人であった。
 学生時代、皇太子であるオラシオを差し置いて首位を独占していたほど。

 しかし皇帝の言葉によりアメリアは、自分が天才であるという奢りを捨てる事となる。

「如何なる天才も、総てを知ることは不可能。時と場所によっては賢者とて無知者となりえる。

 学院の首席卒業生である宰相とて、鍛冶においてはナイフ一本すら打てはしない。

 己を天才と自惚れるなかれ、馬鹿であれ、無知であれ」

 もとより知る・・事に貪欲であったアメリアは、学院の図書室の蔵書を全て一字一句暗唱出来る程に読み込み、最終学年に上がる頃には暇を持て余していた。
 この世界は狭すぎる、そうアメリアに諦観させていた。

 しかし皇帝の言葉により、自分は本当に理解出来ているのか、理解したつもりになったのではないか。そう認識すると、狭かった世界が果てしない世界と見えてきた。

 皇帝と王后と父侯爵、そしてオラシオ婚約者の許可を得て、卒業後に一年と期限を設け、フィリップス侯爵領を周る事にした。

 当初の目論見では、余った期間で隣の領地をも周る予定であったが、領地を三割周ったところで期間切れとなり、王都へ帰還した。

 侯爵家とはいえ生家の領地だけでもこう・・なのだ。ましてや帝国のある大陸全土のみならず、異大陸をも含めればどれだけの知らない知識がある事か。

 自分は未だ無知だ、そう皇帝の言葉を本当の意味で実感したアメリアは、余りある『知らない事』に歓喜した。


 斯様かよう事故ことゆえに、商人が「馬鹿には見えないドレス」を持ち込んだ時、アメリアは『見えなくて当然』と思っていた。
 見える者のいないドレスを買っても意味が無い、故にお帰り願おうとした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『伯爵令嬢 爆死する』

三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。 その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。 カクヨムでも公開しています。

私ではありませんから

三木谷夜宵
ファンタジー
とある王立学園の卒業パーティーで、カスティージョ公爵令嬢が第一王子から婚約破棄を言い渡される。理由は、王子が懇意にしている男爵令嬢への嫌がらせだった。カスティージョ公爵令嬢は冷静な態度で言った。「お話は判りました。婚約破棄の件、父と妹に報告させていただきます」「待て。父親は判るが、なぜ妹にも報告する必要があるのだ?」「だって、陛下の婚約者は私ではありませんから」 はじめて書いた婚約破棄もの。 カクヨムでも公開しています。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

ヒロインはあなたじゃない

三木谷夜宵
ファンタジー
公爵令嬢のリア・ハインツシュタインは、王立学園の卒業式を前に行われた舞踏会で婚約者であるエリアス殿下に、真実の愛で結ばれた男爵令嬢のルイーザを虐げたという理由で婚約破棄を言い渡される。 かつてこの学園では真実の愛で結ばれた身分違いのロマンスがあり、殿下と男爵令嬢は、自分たちもそのロマンスのように真実の愛で困難を乗り越えていけると夢を見ていた。 そんな二人の様子を見たリアは、ロマンスの真実を語るであった。 カクヨムにも公開しています。

私は逃げ出すことにした

頭フェアリータイプ
ファンタジー
天涯孤独の身の上の少女は嫌いな男から逃げ出した。

本当に、貴女は彼と王妃の座が欲しいのですか?

もにゃむ
ファンタジー
侯爵令嬢のオリビアは、生まれた瞬間から第一王子である王太子の婚約者だった。 政略ではあったが、二人の間には信頼と親愛があり、お互いを大切にしている、とオリビアは信じていた。 王子妃教育を終えたオリビアは、王城に移り住んで王妃教育を受け始めた。 王妃教育で用意された大量の教材の中のある一冊の教本を読んだオリビアは、婚約者である第一王子との関係に疑問を抱き始める。 オリビアの心が揺れ始めたとき、異世界から聖女が召喚された。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

ある、義妹にすべてを奪われて魔獣の生贄になった令嬢のその後

オレンジ方解石
ファンタジー
 異母妹セリアに虐げられた挙げ句、婚約者のルイ王太子まで奪われて世を儚み、魔獣の生贄となったはずの侯爵令嬢レナエル。  ある夜、王宮にレナエルと魔獣が現れて…………。  

処理中です...