キツネと龍と天神様

霧間愁

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寄り添ても気づかれない龍曰く

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 そう言えば、懐かしい匂いのする男がいたの。

 線路下の歩道用トンネルで、ふらふらしとった。
 朝ラッシュ時にも関わらず、じゃったからオモロそうと思っての。
 男は歩きながら考えでもしとったんじゃろ、ただいつからそういう状態なのか分からないかったわ。

 前から車が来とった。あ、これはアタルわー、事故になるわー、と確信しとった。

 その時だった。
 どっかで見たことあるな、思ってた男の面影に昔惚れた女の顔と匂い重なっての。

 りぃぃぃん

 男には鈴の音に聞こえただろう。トンネル内に鈴が響いた様に聞こえただろうな。
 流石に男は驚いて、周囲を見渡しとったわ。
 何処から鳴ったのかわからないのだろうよ。

 そうして前方からやってくる車に気がついて、男は難を逃れよった。
 なるほど、たまには音でも鳴らして人間を驚かせるのも悪くないかもしれん。
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