キツネと龍と天神様

霧間愁

文字の大きさ
上 下
139 / 366

待ち人のキツネ曰く

しおりを挟む
 “成り損ない”くんを図書館に連れて行き、ここで大人しくするんだよ、と言い含める。
 少年姿でコクリと僕、キツネに頷いた。

 あずかる際に爺に「この街で生まれた至上者の、成り損ない」と言われた。腕を組み「ナルホドわかった」と返事をすると爺にため息をつかれた。
 拗ねた顔したみたいで、爺に嗤いながら謝られる。

 爺に言われるままに図書館に置いてきたけれど、大丈夫かな。と公園で心配していたら、テンセー少女に見つかってしまう。
「久しぶりね」
 え、誰だっけ?
「×××××よ、名乗ったでしょう」
 あぁ、特殊部隊さん。
「……この世界に転生した意味を理解したの」
 そうなんだ、おめでとう。
「アレを倒すにはまず、力が必要だわ」
 少女は指を真上に差しながら、もう片方に力を込めている。
「力を奪うしかないの。だからアナタには恨みはなけれど、その覚悟のなさを……」
 手に込めた少女が僕に殴り掛かってくる。ぽふ、と可愛らしい音のするパンチ。
「そんな、全力よ。せめて痛みのない様に……、何故?」

 お腹空いたから、帰るね。お迎えもいかないといけないし。
 バイバイと手を振った。
しおりを挟む

処理中です...